ついに発表された第55回グラミー賞ノミネーション。グラミー賞にノミネートされた経験を持つJun Ishizeki氏に、主要4部門を中心に今回のグラミー賞ノミネートアーティストについて語ってもらった。
[ 2012.12.26 ] ノミネーションを見ての印象、変わりつつあるグラミー
■派手なダンスミュージックが減りバンド系が増えてトレンドが変わってきた
ついにグラミー賞のノミネーションが発表されたね。年間最優秀レコードは、派手なダンスミュージックが減ってバンド系が増えて、何かトレンドが変わってきた感じがする。ゴティエの曲は、少し前ならグラミー賞にノミネートされるなんて思わないインディーズっぽい音だし、ザ・ブラック・キーズもクラシックなソウルっぽい感じだよね。ちなみにザ・ブラック・キーズのエンジニアのケニー・タカハシは僕と同じ日系人で、グレンウッド・プレイス・スタジオに所属していてノラ・ジョーンズとかデンジャー・マウスとかも手がけているんだ。
ファン.もエモ/UKロックっぽいしね。ノミネートされた「We Are Young」って、今年のスーパーボウルのコマーシャルで使われていて、いいなと思っていたら、ラジオでもかかり出して、あっという間に人気になった。彼らのプロデューサーであるジェフ・バスカーとは一度一緒に仕事したことあるけど、すごく素朴な人柄なんだ。カニエ・ウェストとも、彼がサンプルを多用するヒップホップのプロデューサーから、生楽器を使ったりしてアーティスト的にアプローチを変えた時期から一緒にやったりしてる。
ジェフはアジア人が好きそうな80年代っぽい気持ちいいメロディーを書く人なんだよね。彼が書いたアリシア・キーズの曲(2009年リリースの「Try Sleeping with a Broken Heart」、「Wait Til You See My Smile」、「Love Is Blind」、「Like the Sea」)とかからは、彼らしいメロディーが聴けるよ。そういうノリが好きな人は、ぜひ聞いてみたらいいんじゃないかな。
テイラー・スウィフトの「WE ARE NEVER EVER GETTING BACK TOGETHER」はノミネート期間の終わりの8月にリリースされて滑り込んだね。エンジニアのサーヴァンは業界内で有名で、トップチャート入りする楽曲を数多く手がけてる。今回のテイラーとケリー・クラークソンで、ダブルノミネートだね。サーヴァンの得意とする今時っぽいダンス/ロックっぽい音は、他のエンジニアが真似したくても彼ほどできないものだと思うよ。
授賞するのはファン.かゴティエじゃないかなと思ってる。個人的にはファン.かな。
Jun Ishizeki
2004年、エンジニアとして参加したBlack Eyed PeasのElephunkでグラミー賞Best Engineered Albumにノミネート。Black Eyed Peas、アヴァーント、カニエ・ウェスト、ジャネット・ジャクソン、安室奈美恵、倖田來未、西野カナ、Crystal Kay他、日米のビックネームなどの作品制作に参加しているエンジニア。日系2世。
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