HipHop、R&B系のウェブサイト『bmr』で編集長を務め、映画、宗教、アステカ、模型、料理、メタル、中国史、格闘技、SF/ファンタジー、戦闘機、コスプレと多ジャンルに精通する丸屋九兵衛が、今年度のグラミー注目ポイントを語る。
[ 2013.1.29 ] 最近のグラミー賞について思うこと feat.フランク・オーシャン
■様変わりしたグラミーとR&B部門の細分化
かつて、グラミー賞とは敷居の高いものだった。
考えてみれば、それも道理だろう。米エンタテインメント業界に身を置く「おえらさん」がたの投票で決まるのがグラミーなのだから。SF界に喩えて言うなら、アメリカSFファンタジー作家協会に属する作家たちが選ぶ「ネビュラ賞」のようなものである。SF界では、別に「ヒューゴー賞」もあり、こちらは世界のどこかで毎年一回開催される「世界SF大会」の一般参加者による投票で決まるという仕組み。強いて言えば、ヒューゴー賞のほうはアメリカン・ミュージック・アワードに似ている、か?
ところが。
最近のグラミー賞は様変わりした。由緒正しき芸術家肌のアーティスト(重複表現)たちだけではなく、DJやらスケーター上がりのヤツやら、よりストリートな「我々のヒーロー」がレッドカーペットを闊歩している!という現象が、まま起きるのだ。「ダウン・トゥ・アース化」と言えばいいだろうか。
ウチのジャンル(この場合はR&B)は、近年になって受賞部門がちょいと細分化された。つまり、パフォーマンス系が「R&B」と「トラディショナルR&B」に、アルバムが「R&B」と「アーバン・コンテンポラリー」に分割されたのだ。この部門増加のおかげで、ダウン・トゥ・アース化が促進されている気もする。
内訳を書いておくと、まずは最優秀新人部門。そして、年間最優秀レコード部門に“Thinkin Bout You”、年間最優秀アルバム部門に『channel ORANGE』、最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門で同じく『channel ORANGE』。さらには、ゲスト参加したジェイ・Z&カニエ・ウェスト名義の“No Church In The Wild”が最優秀ラップ/歌唱コラボレーションと最優秀ショート・フォーム・ビデオの2部門にノミネートされておる。ワオ!
さて、このフランク・オーシャンに注目しているのにはワケがある。
彼は、世にもまれなゲイR&Bシンガーなのだ。カミングアウト済みの。
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