[ 2013.2.6 ] グラミー映画音楽ノミネート作品は近年のフィルムスコアの多様化の縮図
■ノミネート作品はオーセンティックから新スタイルまで
先日発表された今年のグラミー賞の映画音楽部門(Grammy Award for Best Score Soundtrack for Visual Media)のノミネートは、オーセンティックなものから新しいスタイルまでが入り乱れる、近年のフィルムスコアの多様化が垣間見える結果となった。ノミネートされたそれぞれの作品について、その特徴を分析する。
■The Adventures Of Tintin - The Secret Of The Unicorn
(邦題:タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密)
グラミー賞受賞21回のマエストロ、ジョン・ウィリアムズのスコアである。近年の一般的なアクション・キューのトレンドとしてあまり用いない木管楽器を多用し、Jazz的なハーモニーやメロディーを取り入れ、彼のトレードマークであるカラッと明るいハリウッドシネマサウンド、まさに“2012年番インディジョーンズ”ともいうべき、素晴らしいアクション・キューとなっている。
ちなみに昨年80歳を迎えたジョンであるが、未だその作曲キャリアのピークを保ち続けているのが脅威的であるし、毎年夏にロサンゼルスのハリウッド・ボウルで行われる野外コンサートでも指揮者として元気にタクトを振る姿を見せている。筆者も2011年、2012年と連続で会場に足を運んだが、スクリーンに映し出されるスター・ウォーズやE.T.の映像に、ジョンが指揮するロサンゼルス・フィルハーモニーの演奏が完全にシンクロする様は圧巻であった。その芸術性の高さに、小さい頃その映画を見て胸が湧き躍った感覚が蘇り、思わず涙してしまったが、自分の周囲にも子供連れの父親が目を拭っていたのを鮮烈に覚えている。
■Hugo(邦題:ヒューゴの不思議な発明)
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで過去にグラミー賞を受賞しているハワード・ショアによるHugoのスコアも、オーケストラを中心としたオーセンティックなファンタジースコアを基軸としている。さらにアコーディオンとワルツのリズムを用いて、映画の設定である1930年代のフランス・パリの雰囲気をうまく加えることに成功している。
■The Artist(邦題:アーティスト)
アカデミー賞映画音楽部門を受賞した同作品がグラミー賞にもノミネートしている。この映画は基本的に無声映画のスタイルをとっており、セリフがない代わりに音楽で感情やコミュニケーションを表現しているユニークな作品である。
ちなみに現代の映画は音声と効果音があるため、例えばセリフのある場面では音がぶつからないように特定の音域を空けたり、または効果音とうまくシンクロするように注意を払いながら作曲され、必要であれば音楽は他を邪魔しない裏方となる。一方でThe Artistのスコアは音楽が唯一の音要素であるため音域をのびのびと使い、 状況や感情を表現すべく、多くのメロディーを用いるなどして非常に情報量の多い楽曲になっている。
第85回アカデミー賞授賞式
2月25日(月)午前9:00より
WOWOWプライムで生中継!
今年のノミネート作品
『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』
ジョン・ウィリアムズ
『アーティスト』
ルドヴィック・ブールス
『ドラゴン・タトゥーの女』
トレント・レズナー&アッティカス・ロス
『ヒューゴの不思議な発明』
ハワード・ショア
『ダークナイト ライジング』
ハンス・ジマー
『風ノ旅ビト』
オースティン・ウィントリー
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