6月8日に開幕し、連日熱戦が繰り広げられているサッカー欧州選手権(以下ユーロ)。6月24日の準々決勝最終戦は、世界屈指のリーグを誇るサッカー大国同士の対戦だ。WOWOWのユーロ現地解説者である奥寺康彦氏は「イタリアに分があるだろう」と分析。カギを握るのはピルロか、ルーニーか。ベスト4最後の椅子に座り、ドイツに挑むのはカルチョかフットボールか、激闘を見逃すな!
■ピルロの大仕事から目を離すな!
奥寺「ドイツ、スペインの2強を追うのはイタリアだろう。特にピルロは個人的にグループリーグのMVPだと思っている。いい選手という印象はあったが、33歳になってなお、あそこまで走ってチームに貢献できる選手だとは思ってなかった。
初戦(vs.スペイン)のアシストも、ディフェンスに時間を費やしながらも速攻と遅効を意図して効果的にチョイスしていたね。ボールを持つと大きな仕事をすることも証明した。
2戦目(vs.クロアチア)なんて本当にノーミスで、フリーキックまで決めた。完璧な内容だったと思う。
ピルロやデ・ロッシらを中心に、イタリアはズルズルと最終ラインを下げずに高く保って、とにかく中盤からボールに対して早く寄せる。それに尽きる。ハードワークではあるけれど、それを90分間継続できる強さと頭の良さが備わったチームだよね。ここまで完成度が高いとは、正直思ってなかった。
そういう意味ではクロアチアも彼らに近く、スペインに対してすべきことをかなり高い水準で遂行していた。あんなに苦しんでいるスペインの姿は久しぶりに見たからね。他のチームも参考になったんじゃないかな」
■無敗通過も内容は乏しく、大幅な入れ替えも!?
奥寺「イングランドは予選の結果だけを見ると問題は見当たらない。ルーニーも帰ってきたのは確かに好材料ではある。復帰していきなりスコアするなど、彼にはやはり特別な存在感があるからね。
しかし、実際にゲームを分析してみると、彼らの強さがいちばん発揮できるゲーム構築ができているかといったらノー。
本来はジェラードがゲームを作るはずなのだろうけれど、ディフェンスに時間をとられたり、ボールキープに腐心せざるをえなかったりと、ゲームメメイクまでに手が回らない状況だ。
ルーニーが点を取ること、ジェラードが指揮を執ることにそれぞれ集中することができれば、タレントは豊富なのだから、トーナメントを昇っていける可能性は小さくない。ただ、グループリーグ3試合を観た限りは正直、苦しいと思う。ロイ・ホジソン監督が大きなテコ入れをしてくるのか、スターティングチョイスや戦術にも注目したい」
写真:Action Images/アフロ