ヨーロッパNo.1を決める4年に1度のサッカーの祭典、UEFA EURO 2012TM サッカー欧州選手権(以下ユーロ)もいよいよ佳境。6月28日は準決勝の2戦目「ドイツ×イタリア」が行われる。「伏兵の存在や大きなサプライズもないユーロは久しぶり」とWOWOWのユーロ現地解説者である野口幸司さん。強豪同士の本気のぶつかり合いは「ただただ楽しみ」とも。ファイナルの地へ向かうのはドイツか、イタリアか。カギを握るのはあの問題児・・・?
■ベストコンディションのドイツのキーマンはゴメスか
野口「中5日で準備できて、準々決勝(vs.ギリシャ戦)ではクローゼやロイスらフレッシュな選手を起用して、結果が出た。好材料が多く、4チームの中でもっとも充実した準備ができているかもしれない。シュヴァインシュタイガーの状態だけが気がかりだけど、代役に関して「ポドルスキーなのか、ミュラーなのか」とドイツ人が楽しみにしているくらいだから、万が一の時も高いレベルでこなしてくれるだろう。大きな穴になるとは考えにくい。だからドイツは前半から、前がかって点を取りにいくだろうね。
最前線のスタートに関してはマリオ・ゴメスに戻すと思う。開幕以来、あの難しいBグループを制した貢献度を尊重しつつ、準々決勝のクローゼの先発とスコアで刺激も与えた。ヨアヒム・レーヴ監督はチームを活性化することに成功させている。ここでまたマリオ・ゴメスが得点でもしたら、ドイツはこの試合だけではなく頂点も一気に見えてくる。
ただ、それにはマリオ・ゴメスは中盤のエジルやミュラーなどにボールが入った時、あるいは入る前から自分から駆け引きの主導権を握れるような動きを始めるなど、ちょっとした上積みが必要かもしれない。その感覚さえ身につけ相手にとってより危険な存在になれば、チームとしての怖さも倍増するだろうね」
■問題児がイタリアを頂点へ導く!?
野口「まずイタリアの懸念材料はスケジュールとコンディションだよね。
グループリーグをポーランド側で戦い、キエフに移動して24日の準々決勝(vs.イングランド)は延長PKまでもつれた。それからまたポーランド(ワルシャワ)まで移動する。移動を含めた中3日でほぼ万全のドイツに挑むわけだから、そこはドイツに大きなアドバンテージがあると思う。
コンディションの問題さえなければ、イタリアのチェーザレ・プランデッリ監督が目指す攻撃的なサッカーとドイツの本気のぶつかり合いを楽しめるはずだ。ただ、チームの現状から考えると、イタリアはおそらく受けに入った前半を過ごさないといけないだろうね。
もうひとつは最終ライン、3バックでくるのか4枚並べるのか。個人的にはデ・ロッシはやはり最終ラインにおいて、そこから配球をするほうがベターだと思う。そうすればピルロがある程度、自由にボールを持つ機会が増える。ピルロのところで早く攻めるか、タメを作るか、選択肢が増え、モントリーヴォ、マルキジオが2トップに絡んでプレーできるのは大きなメリットだ。
それは同時に、ドイツはここまでほとんど主導権を握ったゲームを重ねてきたから、そういう時に冷静に対応できるのか、多少のほころびが出てくるのか試されることになるだろう。ギャップが見えたらイタリアはすかさずそこを突く巧さがあるから、勝機は十分にある。逆にいうとピルロにどれだけ自由にボールを持たせずにいなすか、エジルのディフェンスもひとつのポイントだろう。
あとなんといっても推したいのはバロテッリだ。初めて直に観たけど、あそこまで潜在能力の高い選手だとは思っていなかった。まあ、性格的な問題はアレだけど。
決して自分の型があるわけではないんだけど、逆に言うと何でもできる選手なんだよね。引いて受けてから前向いて撃てるし、サイドからの折り返しにもしっかり反応している。セットプレーからもスコアした。すべてを持っていて、羨ましくすらある。
意外なのはもっと本能的なストライカーというイメージだったんだけど、ボールを受ける前にしっかり努力をしているんだよね。予備動作を入れたり、ディフェンスの背中に一度、入ってみたりと、かなり考えて動いている印象を受けた。
問題は精神面だから、いい形で点を獲ってのってくれば、イタリアに歓喜をもたらす存在になる可能性はかなり高い。報道だけではなくプレーも注目してあげてほしい」
写真:アフロ