6月8日に開幕し、連日熱戦が繰り広げられているサッカー欧州選手権(以下ユーロ)も6月21日からいよいよ決勝トーナメントが始まる。グループA首位のチェコと、“死の組”グループB2位のポルトガルが対戦する準々決勝第1試合を前に、WOWOWのユーロ現地解説を務める奥寺康彦氏にそのみどころを聞いた。
■チャンスメーカーとしてのクリスティアーノ・ロナウド
奥寺「やはり鍵を握るのはクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)だろう。グループリーグ序盤、決定機をありえない形で外したデンマーク戦までは完全に沈黙していて状態は良くなかったが、2ゴールを挙げたオランダ戦はキレていたね。あのコンディションであればなかなかストップするのは難しいだろう。メンタル的にも欲しかったゴールを記録して力むことなくトーナメントに挑む。悪くない入り方ができると思う。
彼は素晴らしいプレーヤーで、オランダ戦のようにボールを運んでチャンスを作ってフィニッシュを成功させる、といった具合にすべてを自分で打開できる強さがある。ただ、代表ではチャンスメーカーとしての役割をもっと自分に課すべきだろう。
なんたってリーガ・エスパニョーラで46点のスコアラーなんだから、フィニッシャーとしたほうがベターなのは分かっている。でもポルトガルはレアル・マドリードとは違う。いい形でC・ロナウドに預けてくれるエジルやケディラやシャビ・アロンソ、あるいは前回大会までいたデコの後方支援がそこまでは望めない。
チャンスメーカーとしてフィニッシュを他の選手に任せる。それをしているうちに彼への警戒が緩んで、その時に自分で決めにいく。それが理想の展開なんじゃないかな」
■チェコが新時代を築くのか!?
奥寺「ベスト8の勢力図を考えてみて、エポックメイキングを起こすとしたらチェコだろう。大敗(ロシア戦1-4)から始まったのに決勝トーナメントに参加できるのはすごいこと。チームがあらゆる点で締まっている印象を受ける。一度死んでから生き返ったチームというのは、短期決戦では異常な力を発揮することがあるからね。
ポルトガル有利と予想する人も多いけど、実は5分5分あるいは6対4くらいでチェコに分があるんじゃないかと僕は思っている。
とにかくチェコはC・ロナウドに前を向いてボールを持たせないこと。そうするとDFを2〜3枚、割かないといけないから、ポスティガ、あるいはオリヴェイラ、ナニへの対応が甘くなる。逆にいうとC・ロナウドがチャンスメーカーに徹することができれば、ポルトガルが有利になってくるだろう。やはりC・ロナウド次第だ」
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