いよいよUEFA EURO2012TM サッカー欧州選手権(以下ユーロ)も残り決勝を含む3試合となり、クライマックスへ向けてまっしぐらだ。準決勝の1試合目は前回大会王者でありW杯王者でもある優勝候補の大本命スペインと、“死のグループ”を勝ち抜いてきたポルトガルが対戦。イベリア・ダービーとなった大注目の一戦を前に、WOWOWのユーロ解説者である野口幸司氏にそのみどころを聞いた。
■ロナウドとアルベロアの左サイドに注目
野口「観たいのは3‐1くらいでスペインが勝つゲームだよね。組織としてはスペインのほうが上だから、ポルトガルはどうしても守備的にゲームに入るしかない。ただ、ポルトガルにはクリスティアーノ・ロナウドという強力な武器がある。彼は個人としては今大会では別格ともいっていい、もっともハイパフォーマンスを見せている選手だと断言していいと思う。
彼をどこで起用するか、あくまで例えばだけど、ワントップで使うというのもひとつの手だろう。それくらいの大胆なことをしないとスペインのリズムを崩せないかもしれない。いずれにしてもボールを奪った時にモウティーニョ、コエントラン、ラウール・メイレレスらオフェンスに参加する選手が押し上げる時間をチームとしていかに作るか、それが大きな課題となってくるだろう。
C・ロナウドがこれまでと同じように左サイド中心でプレーするなら、注目したいのはレアルでのチームメイトのアルベロアとのマッチアップだよね。アルベロアは派手さはないけれど、ものすごいベースのしっかりしたディフェンダーだし、C・ロナウドのことをよく知っている。どういうふうにストップするのか。逆にそれでもC・ロナウドが力の差を見せつけて突破するのか。どちらが左サイドを制圧するかもカギになってくる。
いずれにしてもまずはC・ロナウドが、カウンターでもロングシュートでもセットプレーでもなんでもいい。とにかく先制してスペインがギアを上げる。前半はそんな感じの展開であれば面白くなってくるんじゃないかな」
■リーガの面白さが凝縮されたゲーム
野口「ゼロトップを敷いてくるかはちょっと読めないけど、初戦から順を追って観ていくとチームとしての完成度は徐々に高くなっているのは確かなんだよね。ボールを失わずに回す技術は相変わらず世界最高峰という事実は間違いない。そこにイニエスタやシルバら高い位置取りをしている選手の、もっと裏に飛び出していくゴールに直結した動きがプラスされたら、どのチームも対応できないと思う。
また、ビセンテ・デル・ボスケ監督はこれだけの実績を残したスペインを率いているわけだから、以前のまま優勝するのではなく、自分の指揮した戦術でトーナメントを上がっていきたいという欲があるだろう。セスクとシャビ、セルヒオ・ブスケツ、シャビ・アロンソあたりでパスを重ねて、相手をある程度、中央に絞らせているうちに前述のようにサイドからイニエスタやシルバが裏に抜ける。それを完成型だと考えているんじゃないかな。
ただ、その狙いはリーガでプレーしていて、バルサ中心のスペインをよく知ったペペをはじめ、ポルトガルは十分に分かっている。彼らディフェンス陣がどこまで強固なブロックを作ってスペインの進入を阻めるのか、ある意味ではリーガの面白さが凝縮されたゲームともいえるだろうね」
写真:Maurizio Borsari/アフロ、MarcaMedia/アフロ