フランスサッカー協会事務局長アンリ・ドロネー氏の提唱により、17カ国が集まり始まった「ヨーロッパ・ネーションズ・カップ」。当時はまだ、大会価値を疑問視する西ドイツ、イタリアなどが不参加だった。社会主義を嫌悪するスペインが準決勝をボイコットする中、伝説のGKヤシン、MFネットを中心に堅い守備を持つソ連が決勝へ進出。2万人弱の観客の前で、シュクラッツ擁するユーゴスラビアを延長で2-1と振り切り、初代王者の座に輝いた。
期待された初参加のイングランドが、予選1回戦で敗退。地元スペインは、準決勝で衰退期の“マジック・マジャール”ことハンガリーを下して決勝へ進んだ。サンチャゴ・ベルナベウに12万人を集めて行われた決勝の相手は、前回不戦勝を与えたソ連。監督との確執により離脱していたスアレスが復帰したチームは、84分にマルセリーノがヘッドでGKヤシンから決勝点を奪い優勝。これが、2008年のユーロ優勝までスペインの獲得した唯一のタイトルだった。
リーグ方式の予選が採用され、呼称も現在の「欧州選手権」に改められた第3回大会。攻撃参加の概念を確立したSBファケッティ、GKゾフの活躍で地元イタリアが決勝へ進出。相手は、準決勝で1966年W杯覇者イングランドを下した、元日本代表監督オシムやジャイッチ率いるスター軍団ユーゴスラビアだった。イタリアは苦戦しながらも1-1で引き分け、再試合ではFWルイジ・リーバの得点などで2-0と勝利。攻守両面でバランスの良さを発揮した。
“皇帝”ベッケンバウアーに“爆撃機”ミュラー。守護神マイヤーにヘーネスと世界屈指のタレント力を誇る西ドイツは、準々決勝でボビー・ムーア率いるイングランド、準決勝でバンルームを欠いたベルギーを撃破。完成度の高さを見せ付け、決勝でもミュラーが2ゴールと、ソ連を3-0と圧倒し初優勝を飾った。この大会で異彩を放ち天才と恐れられたMFネッツァーは、この後国際舞台での活躍がなくなったため、彼の活躍はよく伝説として語られる。
1974年W杯で世界を席巻したオランダのクライフと、前回王者西ドイツのベッケンバウアー。2人の対決が注目を集めた第5回大会。だが、ニースケンスらのオランダを、チェコスロバキアが準決勝で撃破。西ドイツとの決勝では劣勢を強いられたが、2-2の同点で乗り切り、初のPK決着へ。チェコスロバキアのMFパネンカは決めれば優勝という場面で、真ん中にフワリとした、通称「パネンカ・キック」でゴール。伏兵が偉大な優勝を成し遂げた。
この大会から、本大会出場8チームを2組に分け上位同士が決勝を行う、現行方式の基礎が導入された。グループ1の首位は世代交代を終えた西ドイツ。ルンメニゲ、シュスターらの力で前回王者チェコスロバキアを倒し、3大会連続の決勝進出を決めた。一方からは、ヴァン・ムール、GKパフが好セーブを見せる“赤い悪魔”ベルギーが進出。2国による決勝は、西ドイツが長身FWルベッシュの2ゴールで勝利。大会初となる2度目の栄冠を手にした。
プラティニを筆頭に、ジレス、ティガナ、フェルナンデスを揃えた中盤「四銃士」のフランス。シャンパンの泡が弾けるような軽やかなパスサッカーは、この時、円熟期にあった。イタリアやオランダが予選敗退となる中、プラティニはGLで2試合連続ハットトリックを達成。決勝でも、難敵デンマークを下しあがってきたスペイン相手に直接FKを決め、2-0の快勝。全試合で得点、合計9ゴールのプラティニは、この年のバロンドールを受賞している。
ベッケンバウアー率いる西ドイツ、MFマンチーニにDFマルディーニなど若手が台頭するイタリア、世界NO.1GKダサエフのソ連。GLを勝ち抜いたどの強豪よりも、オランダは一際強く輝いていた。守備にクーマンとライカールト、攻撃にフリット、ファン・バステンという世界的な才能が集結。準決勝で宿敵西ドイツを倒し、決勝でもソ連を2-0で圧倒し初優勝。ファン・バステンが決勝で決めた美しいボレーは、伝説として今も語り草となっている。
ソ連解体、東西ドイツ統一。社会主義国が転換期を迎える中、予選を突破したユーゴスラビアが内戦のため出場停止に。代わって参加したデンマークが、準決勝でオランダを破る快進撃を見せる。決勝でも、クリンスマンやブッフバルトのドイツ相手に、GKシュマイケルの守りで勝利を奪取。アンデルセン童話のような成功を手にした代表を、人々は敬意を込めダニッシュダイナマイトと呼ぶ。
本大会出場枠が8から16カ国に増加。4チーム×4グループのリーグ戦後、上位が決勝トーナメントへ進出する、現行の大会方式が確立された。地元イングランドは、母国の意地とガスコインらを頼りに準決勝まで進出。しかしPK戦の末、ザマーのドイツに行く手を阻まれた。決勝の対戦相手は、ポボルスキーの活躍でポルトガルとフランスを撃破したチェコ。最後はビエルホフの延長戦ゴールデンゴールで、ドイツが史上最多3回目の王座を手にした。
初の2カ国共催で行われたこの大会。イングランドとドイツの強豪、地元ベルギーがGLで姿を消す中、優勝候補オランダはベルカンプなどのタレントを軸に勝ち進む。しかし、準決勝でイタリアGKトルドの前にPKの末敗退。ただ、大会の主役は1998年W杯を制したフランスだった。スペクタクルな好ゲームとなった決勝は、トレゼゲのゴールデンゴールで終幕。ジダンを中心にアンリやビエラなど、フランス絶頂期を強く印象付ける大会だった。
ルイ・コスタやフィーゴの“黄金世代”に、C・ロナウド、デコの新スターが融合。ポルトガルが地元の声援を受け、ベッカムのイングランド、オランダら強豪を撃破し決勝へ進出する。一方を勝ち進んだのは、ネドベドのチェコを下した、完全にノーマークのギリシャ。奇しくも開幕戦と同カードとなった決勝では、ギリシャがDFデラスを中心とした守備で1点を死守。決勝トーナメント3試合で3得点無失点という驚異の守備力で奇跡の優勝を遂げた。
フランスやイタリアといった強豪国が世代交代に苦戦する中、2006年W杯で3位入賞を果たしたドイツと、大舞台での結果を切望し続けるスペインが決勝戦へ進出を果たす。グループリーグを苦戦の末に勝ち上がったドイツに対し、シャビ、イニエスタ、ダビド・シルバ、セスクらを中心としたパスサッカーを武器に、無傷で駒を進めたスペイン。試合前半にフェルナンド・トーレスが決めた1点を守り切り、終始主導権を握ったスペインが、実に1964年大会以来、44年ぶり2回目の優勝を飾った。