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宮本恒靖の焦点/Focus of the Tsuneyasu MIYAMOTO

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元日本代表キャプテン宮元恒靖が世界最高峰のサッカーを分析!

2度のワールドカップを経験し、海外でもプレーした宮元恒靖が、世界トップレベルでの経験を元に独自の視点からリーガ・エスパニョーラを掘り下げる。

第5回 前へ進み続けるヨーロッパのサッカー。ユーロ開幕戦に表れた世界基準のスタイル

全国民の期待を一身に背負った開催国ポーランド代表が、2004年大会王者ギリシャ代表との一戦に臨み、ユーロの戦いが幕を開けた。国を懸けたプライドのぶつかりあいに、プレーの質の高さと、ヨーロッパ独特のスタイルを宮本恒靖は見た。成長著しい日本代表と、ユーロ出場国の比較を交えながら、両者への期待と展望が明かされる。

試合を決定づけるプレーと戦術

開幕ゴールを飾ったポーランド、レヴァンドフスキー

―― 開幕戦のポーランド対ギリシャを振り返っていただけますか?

前半はポーランドのカウンターがハマったと思います。ただ、後半にギリシャが1点取って、1‐1でもOKという試合運びをしました。相手に引かれてしまうとポーランドは攻め手が無くなって、レヴァンドフスキーも何もできなくなりました。ある程度引いて守ったギリシャに関しては、スコアに応じた戦術などメンバーの意思統一がしっかりしていると思いました。

――勝負の分かれ目はどこにあったと思いますか?

ポーランドは前半終盤に訪れた2点目のチャンスを決められなかったですよね。一方のギリシャは、後半に入ってから裏にボールが出るようになった。ギリシャの得点シーンを振り返ると、右サイドでボールを取られそうになりながらマニアティスがスルーパスを出して、そこからのクロスをサルピンギディスが押し込んで追い付きました。取られそうになりながら通したあのパスが、勝負のポイントだったと見ています。
パスコースが切られていたので難しかったと思いますし、ポーランドとしては止められる範囲のプレーでしたが、あのパスが通った時点で勝負あったと思います。結局ギリシャは追加点を取れませんでしたが、裏を狙う攻撃が機能したので、退場者を出しながらも勢いが付きましたよね。
オフサイドになりましたけど、サマラスがそらして、センタリングからサルピンギディスがゴール前に抜け出たシーンもディフェンスの裏でした。あのプレーも、前半には見られなかったプレーだと思います。

―― こういった大会において開催国のポーランドは、やはり有利なものでしょうか?

ギリシャからも大勢のサポーターが来ていたみたいですが、ポーランドはホームの大声援の後押しがあったと思います。入場行進してくるまで堅さがありましたけど、試合が進むに連れて、それも見えなくなりました。そしてカウンターが決まり、盛り上がっていく中で、後押しされているなと感じました。ただ、先に1点取って盛り上がって、後半はもっと前に出て行くかなと思ったのですが、そこから尻すぼみになったのは少し残念でしたね。

―― 2002年の日韓W杯をプレーヤーとして経験されましたが、開催国の代表として臨む大会と普段の大会とでは違いますか?

全然違いますね。サポーターの応援もそうですし、ピッチ上でも違いがあります。勝手を知っているスタジアムや、芝の質、気候、そういったものが2006年のドイツ大会とは全然違いました。
ホームのサポーターの後押しを受けて、戦い易さも感じました。もちろん結果を出さないといけない開催国のプレッシャーもありましたが、試合が盛り上がったり結果が出た時に勢いづくことは沢山ありました。

世界へと舞台を移す、日本人選手たちに込める期待

宮本恒靖

―― 先日の日本対ヨルダンの代表戦を見た感想はどうですか?また、今の日本のレベルをヨーロッパの国々と比べるといかがでしょう?

前回の試合より出来は良かったですし、選手たちのコンディションも良さそうでレベルアップしている様子がうかがえます。代表の練習を見ていると、押し込んだ中でのシュートシーンを意識しているみたいで、ヨルダン戦で香川選手が決めた4点目も、4、5人が絡んでいました。選手間の連携も良かったですし、アイデアも豊富にあって、プレーの質は3次予選と比べて高くなっていると思います。
そういった攻撃はヨーロッパの国と対戦しても通じるところが沢山あると思います。試合を見ていて、良い力があると思いましたね。

―― 香川選手のマンチェスター・ユナイテッド移籍が決定的となりましたが、香川選手への評価や期待感はいかがですか?

プレミアリーグがブンデスリーガよりも展開の速いリーグとは言え、細かい動きやステップは間違いなく通用しますし、狭いスペースでの突破では十分に力を発揮できると思います。
ダイナミックに長い距離を走ってカウンターというタイプではないので、フィニッシュの一つ手前となる局面のプレーに多く絡んでもらいたいですね。守備も力を入れないといけないので大変ですが、ポジションはトップ下よりもワイドが良いと思います。いずれにしても、獲得に10数億円をかけた選手ですし、まだまだ若いので、監督も彼を起用すると思います。

―― 今の日本代表がユーロのグループAの国と戦うとして、得意な国と苦手な国、また、その理由を教えてください

カウンターが速いロシアは苦手なチームだと思います。そういった理由では、ポーランドも苦手かもしれません。逆にギリシャは速攻もあまりないので戦えますし、チェコにも十分勝てると思います。グループAの中でどのレベルに位置するかはわかりませんが、ロシアの次くらいに入る力はあると思います。

ユーロ開幕戦に表れたヨーロッパサッカーの質

カウンターを仕掛けるロシア代表アルシャヴィン

―― 開幕の2試合の中で、日本人選手のお手本となるようなプレーはありましたか?

カウンターに入った時の正確性と、走り込むダイナミックさ、そしてスピードに関しては、試合を見ていてまだまだ日本に改善の余地があると思いました。
ロシアもポーランドもカウンターを仕掛ける時、質の高いパスを出すことによって、味方のスピードを落とすことがなかった。空いているスペースに味方が走り込み、そこにパスを出す、でもそのパスがちょっと後ろに逸れてスローダウンというシーンは、あのレベルでは無いと思います。
日本でも、代表レベルの選手になればできている部分もありますが、そういったプレーの精度はレベルアップできる点だと思います。また、そこでの状況判断も含め、まだまだJリーグとは違いがあると感じました。

―― 開幕戦を見て、改めて大会への期待感を聞かせてください

まだ始まったばかりですが、オーバーラップのスピード感など、ヨーロッパ独特のスタイルを感じる大会です。例えば南米だと、少しスローダウンして狭いスペースでプレーしようとするチームもありますが、ポーランドだけを見ても実直に前に出て来ましたよね。
前にボールを出して走って、出して走って、単純にそうするだけでも、ついていけないチームがあると思います。そういったヨーロッパの国同士の試合は見ていて純粋に楽しめますし、スペインなどにはサッカーの違いも表れるので、先の試合が楽しみになりました。

宮元恒靖プロフィール

1977年2月7日生まれ 大阪府出身 同志社大学経済学部卒ガンバ大阪ユースから1995年にトップデビュー。
2000年に日本代表初選出を果たすと、2002年FIFAワールドカップではbest16進出、2006年FIFAワールドカップではキャプテンを務めた。2007年にはオーストリアのザルツブルクへ移籍。UEFAチャンピオンズリーグ予備予選にも3試合出場している。2011年12月、惜しまれつつ34歳でピッチを後にした。

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