既にベスト4の座の半分が埋まり、残り5試合となったサッカー欧州選手権は、準々決勝3試合目にスペイン対フランスと言う珠玉のカードを迎える。前人未到の主要大会3連覇を狙うスペイン代表にとって、このフランス戦は第一関門と言えよう。何しろ、欧州王者、そして世界王者でもあるスペイン代表は、有史以来フランス代表に主要大会では勝利した事がないのである。主要大会に於ける最後の顔合わせが2006年のワールドカップだった、つまりはスペインの輝かしい日々の前夜だったとしても、これは現スペイン代表にとって芳しくない事実である。
実際、スペイン代表のビセンテ・デル・ボスケ監督も、「誰もが、4年前のユーロ、そして2年前のワールドカップを制した我々が今大会の本命だと思っている。しかし、一方で、主要大会ではフランスの方がいつも我々を上回っていると言う事実があるので、我々としてもここで歴史を変える必要があるのだよ。我々はしっかりと地に足がついていながら、同時に楽観的でもあるんだ」と、半ば自分たちに言い聞かせるような、微妙に相手を意識したコメントを残している。しかし、こういった歴史があながち侮れないとはいえ、皆が賞賛するエレガンスとスタイルでトロフィーを勝ち取ってきた今のスペイン代表を前にすると、このような変えるべき歴史は瑣末なバックログに過ぎないのかもしれない。この辺の苦手意識が現存するか否かの確認は、蓋が開くのを待つとしよう。
フランスのゲームプランははっきりしている。「我々は相手に合わせたサッカーはしないが、スペインが相手となると話は別だ」とローラン・ブラン監督が語っている通り、中盤での真っ向勝負は避け、スペースを消しながらある程度リトリートしてくるだろう。そうなると、明暗を分けるのはカウンターの精度と言う事になる。とりわけ、ベンゼマとカシージャスの同クラブ対決は勝負の行方を大きく左右しそうである。