いよいよ幕を開けた決勝トーナメント。準々決勝2試合目は優勝候補の一角が登場する。前評判以上の安定感を見せ、強豪ひしめくグループBを全勝で首位通過したドイツだ。対するは、前評判どころか、大会前は話題にも上らなかったギリシャ。しかし、ロシア戦で見せた粘り強い戦い方とワンチャンスを逃さないしたたかさは不気味だ。前々回のポルトガル大会では、同じような展開で一躍大会の主人公になってしまっただけに、歴史的なアップセットへ向けギリシャ国民の期待は高まっているだろう。
先ずはヨアヒム・レーヴ監督の記者会見でのコメントを引用してみよう。
「我々が本命だという意見は筋が通っているし、そう思われても構わない。しかし、我々はノックアウトラウンドが独特な物である事を熟知している。ひとたびゲームが始まってしまえば、多分勝つだろうと言う予想は全く意味をなさなくなる。ギリシャは簡単に打ち負かされるようなチームじゃない。いつだって彼らを軽んじてはいけないんだ」
この言葉が全てを物語っている。ドイツ有利は動かない。しかし、相手は、“あの”ギリシャ。これは侮りがたい。確かに、ロジカルに考えると、90分でドイツが勝利すると見るのが妥当だ。クオリティーの高いドイツの中盤はミッドフィールドを制圧するだろう。決定力が冴えまくってるマリオ・ゴメスが、この試合で何ゴールか決めると予想したとしても、それはあながち的外れではない。おまけにギリシャは、キャプテンのカラグーニスを欠いた状態で戦わなくてはならない。
このギリシャを取り巻く逆境が、かえって彼らのアップセットへの期待を煽るのである。やはり、人々には2004年の記憶が比較的フレッシュな物として脳裏に焼き付いているのである。ギリシャのフェルナンド・サントス監督が、「2004年のチームは我々のインスピレーションの源流になっている」と語った通り、ドイツもそうであるように、彼らにも王者の血が流れているのである。