[ 2013.1.11 ]グラミーノミネーション後の舞台裏と日米の音楽制作スタイルの差
■日本とアメリカでの音楽制作スタイルの差
音楽制作の基本は、やっぱり演者の歌唱力や演奏力。一般的にアメリカのシンガーは、生でも本当に上手いんだよ。日本でも、倖田來未さんとかCrystal Keyさんとかはさすがうまいと思った。けど、個人的には山田優さんもいいと思ったな〜。彼女の気持ち良い人柄が、歌にも反映されている感じで。また是非一緒に仕事したいです!
でも、最近はアメリカのアーティストは、多少のズレは修正しなくていいって言うことも多い。個性とか自然さ重視って言えばいいかな。日本は歌詞が聞き取りやすいようにヴォーカルをキレイに強調したミックスが求められるけど、アメリカはノリ重視で、多少歌詞が聞こえなくても逆に興味を持って調べてくれるからいいかもっていう発言が出たりする。そんな、違いはあるね。
あと根本的に違うのは、制作スタイルかな。まず日米では予算がゼロ一桁違ってくるくらい、アメリカの方が大きい。そして、時間のかけ方も。日本とは逆で、アメリカでは極端なことをいうと、完成した時がリリースする時って感じなんだよ。
例えば女性歌手は、体調によって声が出にくい人が多いけど、日本のアーティストは時間がないから、そんな時でも構わず歌わせちゃうなんてことも?まあ日本での制作は悩みが多いだろうね。タイアップとかの都合もあるだろうし、アーティストサイドもコダワリを発揮しきれない部分もあるんだろうね。
ブラック・アイド・ピーズも納得いくまで作業してたし、今僕が一緒にやってるケナとかは、予算が無くなっても何とかまたお金を工面して、それこそ一曲に数ヶ月かけたりするんだ。実際、2012年内にリリースが決まっていたんだけど、また延期になった。
ちなみに僕は個人的にX JAPANに影響受けて音楽を志したので、なかなかリリースされないけど、早く新譜聞きたいです(笑)。
あと、アメリカではアーティストと関係スタッフはひとつのファミリー、チームって感じで立場に関係なくみんな本当に気がねなく仕事が出来る。個人的には、お互いわかりあっていた方がいいもの作れると思う。そういう意味でも、グラミー賞で評価されて、またチームとしての理解が高まるっていうのも、グラミーの持つ意義のひとつだと思うな。
Jun Ishizeki
2004年、エンジニアとして参加したBlack Eyed PeasのElephunkでグラミー賞Best Engineered Albumにノミネート。Black Eyed Peas、アヴァーント、カニエ・ウェスト、ジャネット・ジャクソン、安室奈美恵、倖田來未、西野カナ、Crystal Kay他、日米のビックネームなどの作品制作に参加しているエンジニア。日系2世。
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