グループ B : オーストリア、ポーランド、ドイツ、クロアチア
ドイツ、クロアチアが順当も、初戦の結果が鍵
ドイツ、クロアチアの勝ち抜けが予想されるが、初戦の結果次第で混戦もあり得る。
ドイツにとって2006年ドイツワールドカップで大苦戦を強いられたポーランドは侮れない相手。実力的には格上のクロアチアも、最高のモチベーションで挑んでくるだろう、開催国オーストリアは不気味な存在だ。
両者が初戦で勝点を取りこぼした場合、続く直接対決で潰し合いを演じる可能性がある。逆にお互い白星発進できれば、すんなり1・2フィニッシュを決められるだろう。
オーストリア
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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84位 |
過去のEURO出場回数 |
初出場 |
EUROでの最高成績 |
なし |
大会結果 | |
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1960年 | 予選敗退 |
1964年 | 予選敗退 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 予選敗退 |
1976年 | 予選敗退 |
1980年 | 予選敗退 |
1984年 | 予選敗退 |
1988年 | 予選敗退 |
1992年 | 予選敗退 |
1996年 | 予選敗退 |
2000年 | 予選敗退 |
2004年 | 予選敗退 |
ユニフォーム | |
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急激な世代交代が吉と出るか、凶と出るか
2006 年に就任して以来、ヨーゼフ・ヒッケルスベルガー監督は急激な世代交代を進めてきた。攻撃の核は、パスセンスと得点能力を兼ね備えた24歳のMFイヴァンシッツ。19歳から主将を任命されている彼に続けとばかりに、昨夏U-20W杯で準決勝進出を果たしたFWハルニク、DFプレドゥルらが、次々とフル代表に昇格している。
GKマニンガー、MFアウフハウザーらベテランもいるにはいるが、現状チームの経験不足は明らか。実際、2006年11月のトリニダード・トバゴ戦以降は9試合連続で未勝利となるなど、結果もついて来ていない。とはいえ、楽観視できる要素もある。監督や協会との対立から代表を離れていたDFポガテッツ、FWリンツが2月のドイツ戦から、また大会直前には元名古屋グランパスのベテランMFヴァスティッチが復帰。彼らの国際経験がチームに与える影響は少なくないはずだ。
大会前には丸1ヶ月の準備期間もある。若い選手達がその期間に急成長してくれれば、本大会で全く別のチームに生まれ変わる可能性もあるだろう。
オーストリアの命運を握る新星
若手が多いチームの中でも、FWハルニクは特に注目したい選手だ。フル代表デビューを果たした昨年のチェコ戦では、途中出場の6分後に初ゴール。
また今季のブンデスリーガデビュー戦でも出場の8分後に初得点を決めるという、常人にはない強運の持ち主である。母親がドイツ人で、生まれも育ちもハンブルク。ドイツ代表入りの打診も受け、迷った末にオーストリアを選択した。その選択が、この国のサッカーを変えるかもしれない。
ポーランド
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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20位 |
過去のEURO出場回数 |
初出場 |
EUROでの最高成績 |
なし |
大会結果 | |
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1960年 | 予選敗退 |
1964年 | 予選敗退 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 予選敗退 |
1976年 | 予選敗退 |
1980年 | 予選敗退 |
1984年 | 予選敗退 |
1988年 | 予選敗退 |
1992年 | 予選敗退 |
1996年 | 予選敗退 |
2000年 | 予選敗退 |
2004年 | 予選敗退 |
ユニフォーム | |
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好守のバランスと熟成度が高いダークホース
1972年ミュンヘン五輪で優勝、過去7回出場したW杯では2度の3位入賞を果たしながら不思議とEUROだけは縁が無く、今回が初出場となる。伝統的に堅守をベースとし、1970〜80年代に「赤い疾風」と呼ばれたカウンタースタイルは今も変わっていない。
知名度の高い選手はほとんどおらず、ドゥデクがR・マドリード、ファビアニスキがアーセナル、クシュチャクがマンチェスター・Uと、なぜかGKばかりがビッグクラブに所属している。だが、セルティックのボルツ以外は、あまり出場機会に恵まれていないのが現状だ。
そんなチームを引っ張るのは、スピードとテクニックに優れたFWスモラレク、そして強烈なシュート力が武器のMFクシヌベク。今回の予選で計13ゴールを挙げた両者は、攻撃力不足の烙印を押された2006年ドイツワールドカップの汚名を返上した。攻守のバランスが良く、チームの熟成度は大会トップクラス。前回王者のギリシャのごとく、本大会で台風の目となり得るチームである。
欧州屈指のGKドゥデクの苦悩
2006年ドイツワールドカップの出場メンバー落選をもって、代表での挑戦は終わった。そう考えたGKドゥデクは今季、控えに回るのを承知でR・マドリードへと移籍した。
だが、母国のEURO初出場で状況は急変する。現在34歳の彼にとって、今大会は最初で最後の国際舞台。レオ・ベーンハッカー監督から「所属クラブで試合に出れば呼ぶ」と言われた彼は、クラブに1月の移籍を懇願するも、クラブが放出を拒否。結局1試合のみの出場にとどまり、代表招集も叶わなかった。
ドイツ
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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5位 |
過去のEURO出場回数 |
(西ドイツ)5回 (ドイツ)4回 |
EUROでの最高成績 |
(西ドイツ)優勝 (ドイツ)優勝 |
大会結果 (1988年大会まではドイツとして参戦) |
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1960年 | 不参加 |
1964年 | 不参加 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 優勝 |
1976年 | 準優勝 |
1980年 | 優勝 |
1984年 | グループリーグ敗退 |
1988年 | ベスト4 |
1992年 | 準優勝 |
1996年 | 優勝 |
2000年 | グループリーグ敗退 |
2004年 | グループリーグ敗退 |
ユニフォーム | |
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伝統の勝負強さに若いタレントが加わった好チーム
地元開催の2006年ドイツW杯を3位で終え、クリンスマン前監督が勇退。その後ヨアヒム・レーヴ新監督のもと新たなスタートを切ったが、チームのベースは同大会から変わっていない。
メッツェルダー、メルテザッカーの長身コンビが形成するDFラインは、若いながらも経験豊富。中盤ではチェルシーで完全復活を果たしたバラックを中心に、強烈なミドルを持つフリングス、突貫小僧シュヴァインシュタイガーらが脇を固める。そして前線には、打点の高いヘッドが武器のクローゼ、強烈な左足のシュートを持つポドルスキー。加えて、シャルケ04のエースであるクーラニーに、シュツットガルトの新星マリオ・ゴメスと、若くバラエティーに富んだタレントが揃った。
過去2大会ではグループリーグ敗退の屈辱を味わったものの、出場9大会で果たした5度の決勝進出は史上最多を誇る。伝統的な勝負強さを持つドイツには、下馬評の低さは当てにならない。
GK名産国に浮上した予想外の問題
優れたGKを数多く輩出してきたドイツが、GK不足に悩んでいる。2006年ドイツワールドカップで熾烈なレギュラー争いを繰り広げたカーンが代表を引退し、今大会の正GKはレーマンですんなり落ち着くと思われた。しかし、今季彼がアーセナルでポジションを失ったことでGK論争が再発。
バレンシアで定位置を掴んでいたヒルデブラントがまさかの落選。代わって招集されたエンケ、アドラーはいずれも経験不足で決定打に欠ける。結局現状では、試合勘のないレーマンを頼るしかない状況が続いている。
クロアチア
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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12位 |
過去のEURO出場回数 |
2回 |
EUROでの最高成績 |
ベスト8 |
大会結果 | |
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1960年 | 不参加 |
1964年 | 不参加 |
1968年 | 不参加 |
1972年 | 不参加 |
1976年 | 不参加 |
1980年 | 不参加 |
1984年 | 不参加 |
1988年 | 不参加 |
1992年 | 不参加 |
1996年 | ベスト8 |
2000年 | 予選敗退 |
2004年 | グループリーグ敗退 |
ユニフォーム | |
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速ダブル司令塔で生まれ変わった新生クロアチア
伝統の3-5-2から4-4-2へとシステムを変更したスラヴェン・ビリッチ監督は、さらにMFモドリッチをボランチへコンバート。これによって、共存は不可能と言われていたMFクラニチャールとのダブル司令塔が実現した。2人の華麗なテクニックとパスワークにより、守りは堅いが攻め手もないというチームのイメージも、一新されている。
今回の予選では、格下相手に大量得点を挙げたかと思えば、イングランドやロシアら強豪相手に従来の堅守を発揮。手堅く勝点を積み重ね、グループ首位で3度目の本大会出場を決めた。
残念なのは、15歳よりクロアチアに移り住んだブラジル人FWエドゥアルドの欠場だ。シュケルの後継者とまで呼ばれた彼の代役としては、腎臓移植手術から復活したクラスニッチ、シーズン終盤に好調さを取り戻したブダンら復帰組のストライカーに期待がかかる。
DFシミッチ、コヴァチ兄弟らベテランが受け継ぐ伝統の堅守に、新たなエッセンスが加わった新生クロアチアは、今までにない期待を受けて本大会に挑む。
お金には代えられない祖国への思い
38歳の若き指揮官スラヴェン・ビリッチ監督の就任後、アリョシャ・アサノヴィッチ、ニコラ・ユルチェヴィッチ、ムルミッチら、共にクロアチアの黄金期を支えた名選手達が代表スタッフとして終結した。テクニカル・スタッフとして加入したロベルト・プロシネチキに至っては、何と無給で働いているという。
またスラヴェン・ビリッチ監督は、現在の50倍となる年俸額を提示してきたフルハムのオファーなどを拒否し、先日クロアチアサッカー協会と2年の契約延長を結んでいる。分離独立の時代を生きてきた彼らの代表への思いはどこまでも熱い。