グループ A : トルコ、チェコ、ポルトガル、スイス
開催国と戦力充実のポルトガルが有利か、チェコは陰り
グループCが死の組として話題に上がっているが、このグループAも粒ぞろいの好チームが揃い、厳しいグループ。ある意味、最もEUROらしい組とも言えるだろう。
その中、実力的に安全とは言えないが、開催国の地の利を生かして、潜在能力の高いスイスが手堅く突破してくる可能性が高い。
一番厳しいのは、メンバーも連携も確立されていないトルコ。もう1つの枠を実力国のチェコとポルトガルが争う形になりそうだが、チェコはチーム力がやや下降線。一方、ポルトガルはスイスと最後まで当たらない組み合わせや、エース、クリスティアーノ・ロナウドの好調を考えても若干有利と言えそうだ。
トルコ
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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18位 |
過去のEURO出場回数 |
2回 |
EUROでの最高成績 |
ベスト8 |
大会結果 | |
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1960年 | 予選敗退 |
1964年 | 予選敗退 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 予選敗退 |
1976年 | 予選敗退 |
1980年 | 予選敗退 |
1984年 | 予選敗退 |
1988年 | 予選敗退 |
1992年 | 予選敗退 |
1996年 | グループリーグ敗退 |
2000年 | ベスト8 |
2004年 | 予選敗退 |
ユニフォーム | |
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高い個人技に裏打ちされたスピード感溢れるサッカー
2002年日韓ワールドカップで3位と好成績を残したトルコの持ち味は、足技を活かしたパスサッカーにある。
4- 4-2をベースとする攻めの中心は、卓越した技術を持つエムレ・ベロズオール。左サイドからはガラタサライでコンビを組む、21歳MFアルダとSBハカン・バルタが攻撃参加。右のMFハミト・アルトゥントップは運動量も豊富で、DF面の功績も大きいタレントだ。これにセミフ、ニハトのFW陣が絡みスピード感のある攻撃を展開する。
ファティ・テリム監督のチーム作りが遅れ予選終盤で苦しんだが、親善試合でブラジルやイタリアと引き分けた実力は油断ならない。小柄な前線とは対照的に、DFの中央を固めるのは191cmのセルヴェトとエムレ・アシュク。その前にボランチのメフメット・アウレリオが陣取り、相手の攻撃を防ぐ。
リュシュトゥからポジションを奪ったGKヴォルカンも、国民からの信頼は厚い。だが、2002年当時ほどの戦力はないため、上位に進むには連携の向上が不可欠だ。
豊富すぎて決め手を欠く候補選手
ファティ・テリム監督が予選で42人もの選手を招集したため、現チームにはスタメン候補が溢れている。代表歴代最多得点者ハカン・シュキュルも、予選序盤は活躍したが大会直前でメンバー落ち。トゥンジャイも決定力に疑問が残るため、使うなら左サイドだろう。
他、中盤ではバシュトゥルクにユスフ、FWにはハミトの双子の兄弟ハリル・アルトゥントップも控えている。層は厚いが、逆決め手を欠くのも事実。負傷から復帰したニハトの相棒が誰になるか興味深い。
チェコ
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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6位 |
過去のEURO出場回数 |
(チェコスロバキア)3回 (チェコ)3回 |
EUROでの最高成績 |
(チェコスロバキア)優勝、(チェコ)準優勝 |
大会結果 (1992年大会まではチェコスロバキアとして参戦) |
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1960年 | 3位 |
1964年 | 予選敗退 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 予選敗退 |
1976年 | 優勝 |
1980年 | 3位 |
1984年 | 予選敗退 |
1988年 | 予選敗退 |
1992年 | 予選敗退 |
1996年 | 準優勝 |
2000年 | グループリーグ敗退 |
2004年 | ベスト4 |
ユニフォーム | |
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正確無比なショートパスを武器とする欧州の強豪
チェコ代表として初めて参加したEURO96では、ポボルスキーがセンセーショナルな活躍を見せて準優勝。そして、2002年に就任したカレル・ブリュックネル監督の戦術レベルの高さが世界的に知れ渡り、今では強豪国のひとつとして認められるようになった。
EURO2004でも準決勝へ進出するなど、国際大会での活躍は目覚ましい。機能的な4-1-3-2の布陣は、すでにおなじみだ。守備はCBグリゲラ、右SBウイファルシを中心にまとまっており、予選では12試合5失点と、参加国中最小失点タイの安定感を披露。
奪ったボールを、ボランチのガラーセクが細かいパスでゲームメイクしていく。ゴールを狙うのは、予選で5得点を挙げたチーム内得点王の長身FWコレルと、スピードのあるバロシュの2トップだ。SBヤンクロフスキ、MFプラシルが組む左サイドも、絶妙なタイミングで攻撃に絡んでくる。この緻密な連携は、大会のハイライトのひとつとも言える。
繊細なチームは怪我や不調が心配
2004年大会で絶賛されたチェコであるが、ダイナモのネドベドが代表から引退。決して、ひとりに依存するチームではないが、彼の穴は大きい。さらにバロシュは不調をひきずり、最大のタレントMFロシツキーも怪我が治らず大会不参加が決まった。全体からは繊細な印象が漂ってくる。
また、コレルがいると前線のポストプレーに固執してしまうため、柔軟な戦い方が必要とされる。FWフェニンやDFカドレツ、MFプディルなど、若手が新たな風を吹き込むことに期待したい。
ポルトガル
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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8位 |
過去のEURO出場回数 |
4回 |
EUROでの最高成績 |
準優勝 |
大会結果 | |
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1960年 | 予選敗退 |
1964年 | 予選敗退 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 予選敗退 |
1976年 | 予選敗退 |
1980年 | 予選敗退 |
1984年 | ベスト4 |
1988年 | 予選敗退 |
1992年 | 予選敗退 |
1996年 | ベスト8 |
2000年 | ベスト4 |
2004年 | 準優勝 |
ユニフォーム | |
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世界を誘惑する軽快なドリブルと鮮やかなパス回し
地元開催だった前回大会は、フィーゴ、ルイ・コスタらを擁し決勝まで進みながらも準優勝。2006年ドイツワールドカップも準決勝で敗れ、結果は4位。常に今一歩のところで、ポルトガルは栄光を手にできずにいる。
しかし、規律を重んじるルイス・フェリペ・スコラーリ監督の下、欧州列強としての地位を固めたのは確かだ。何より、守備が組織的になった。今回の予選ではレギュラーを固定できず苦しんだが、CBはリカルド・カルヴァーリョを中心に、ブルーノ・アルヴェスにペペ。SBも右ならミゲルにボジングワと、実力者がつきない。
連携の構築は必要だが、この豊富な戦力がチーム力UPにつながっている。もちろん、最大の特徴である鮮やかなパス回しも健在だ。中盤のバランサーであるデコのパスを、“またぎフェイントの名手”クリスティアーノ・ロナウド、シモン、クアレスマといった世界的なドリブラーが運んでいく。FWの決定力不足は心配だが、今回も見て最も楽しめるチームなのは間違いない。
予選データに現れる決定力不足
予選でのデータは、まさに決定力不足を証明するものだ。14試合で枠外シュート112本(1試合平均8本)はダントツの1位で、枠内77本(平均5.5本)も2位。しかし1試合平均1.71得点(合計24ゴール)は出場国中、下から3番目である。
クリスティアーノ・ロナウドは8点を決めているが、クアレスマ(枠外15本、1得点)、ヌーノ・ゴメス(14本、3得点)など周りの選手がチャンスを活かしきれていない。タイトル獲得に向けての最重要課題だ。
スイス
FIFAランキング(2008年2月時点) |
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41位 |
過去のEURO出場回数 |
2回 |
EUROでの最高成績 |
グループリーグ敗退 |
大会結果 | |
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1960年 | 予選敗退 |
1964年 | 予選敗退 |
1968年 | 予選敗退 |
1972年 | 予選敗退 |
1976年 | 予選敗退 |
1980年 | 予選敗退 |
1984年 | 予選敗退 |
1988年 | 予選敗退 |
1992年 | 予選敗退 |
1996年 | グループリーグ敗退 |
2000年 | 予選敗退 |
2004年 | グループリーグ敗退 |
ユニフォーム | |
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速いサイド攻撃と堅実な守備で上位を目指す開催国
2006年ドイツワールドカップでは、フランスと同組になりながらもグループを1位通過。これが、選手と国民の自信につながった。今回はホスト国として予選免除での参加となるが、親善試合でオランダを撃破。EUROでの実績はないに等しいが、過小評価はできない。
右MF フォンランテンに左バルネッタの、4-5-1を基本とする速いサイド攻撃がスイスの特徴だ。司令塔マルゲラズが負傷で離脱となったため、ボランチMFインレルが前線にパスを供給。ワントップにはフライ以外にも、シュトレラーやヌクフォなど実績十分なFWが控えている。だが、攻撃だけでなく、タレントはむしろDFに多い。
軸となるCBセンデロスの他、ミュラーにジュルー。そしてSBベーラミなど、ほとんどの主力が国外の一流クラブに在籍。ヤーコプ・クーン監督が選手の才能を引き出せれば、恐い存在となる。
ただ、2008年に入って以降、チームは勝ち星に恵まれておらず、強豪に比べて安定感で劣るのは事実。好成績を残すには、地元大観衆の応援が不可欠だ。
次々に生まれてくる若い才能
前回大会、ルーニーが大会史上最年少ゴールを挙げた僅か4日後に、フォンランテンがその記録を塗り替えたことは記憶に新しい。その後も、スイスには次々と若い才能が生まれている。
運動量豊富な23歳のMFインレルを筆頭に、フェルナンデスなど主力の多くは20代前半。2月のイングランドとの親善試合では、19歳のFWデルディヨクが代表初招集でゴールと鮮烈なデビューを飾った。彼ら若手が国際舞台で注目を浴びる日も近い。