魅力的な舞台人 インタビュー / 舞台レポート
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2010/9/10(金)
長塚圭史さんインタビュー
今年35歳だが、この世代の作・演出家としては、質量ともに飛び抜けた活躍を続けている。いくら書いてもネタ枯れや書き疲れを感じさせない劇作家としての足腰は、子供の頃の空想力のたまものだ。
「ぬいぐるみでも、使わなくなったライターでも、とにかく何でもいいんですけど、それに少しずつ個性を付けていって、延々と物語をつくって遊んでました。周りが声をかけられないくらい没頭してたらしいです。親も心配するし、人形を使うのはやめて、その代わり紙の上に人物の名前を書いて、物語を動かしていくようになりました」
本人の中では、映画が好きだったことと、父・長塚京三の仕事の影響もあり、最初は演技をすることに興味があったというが、上記のようなエピソードを聞けば劇作家としての素養は十二分に納得が行く。そして遅れてやってきた演出への興味は、今、強く長塚をとらえているらしい。
「昔は“演出、誰かやってくれないかな”と思ってました。書くことが楽しかったし、それをなるべく正確に俳優さんに伝えるためには必要だからやる、という感覚で。それが翻訳劇の『ピローマン』(04年)を演出して意識が変わりまりした。毎日、稽古で発見が尽きることがなかった。稽古って、演出って、豊かなプロセスを踏むことなんだとわかったんですね」
−現在、パルコ劇場で上演中の『ハーパーリーガン』も翻訳劇。
昨年のイギリス留学中に知り、自分からパルコ劇場に提案した戯曲だという
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「情報過多の現代で、いかにきちんと他人と、家族と、自分と向き合うか。とても困難なことだけど、難しさも含め、そのことを誠実に考えているチャーミングな戯曲です。主人公を演じる小林聡美さんも日増しにキャラクターに厚みを増してくれていて、楽しんでもらえる舞台になっていると思いますよ」