魅力的な舞台人 インタビュー / 舞台レポート
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2010年 6月
中村勘三郎さんインタビュー
多くの話題と新しい観客を生みながら16年目を迎えたコクーン歌舞伎。
「十八代目中村勘三郎の原点と言えます。これが歌舞伎だと思うことを作った…。『熊谷陣屋』の熊谷直実が言うせりふに“16年はひと昔、ああ、夢だ”というのがあるんですけど、まさにそんな感じですね。よくあの時に串田(和美)さんと始めたな、と思いますし、生まれた時代がよかった、とも思います。僕の先輩達の時代では、きっと(現代演劇の演出家に依頼することは)できなかったでしょう」
コクーン歌舞伎の顔である中村勘三郎さんは、改めてそう振り返る。今年の演目『佐倉義民傳』は、圧政に苦しむ地域の人々のために命を投げ出した実在の人物を描く農民劇。中村勘三郎さんは、名主(町内会長のような存在)の主人公・木内宗吾を演じる。
「偉い人です。下と一緒になって一揆を起こすこともせず、上に付いて“もっと税金取りましょう”ともしなかった。権力に立ち向かったんではなく、正したんですから」
コクーン歌舞伎ならではの大胆なチャレンジは、今回はラップ。歌舞伎に付きものの義太夫(三味線に乗せて歌うナレーション)をなくし、代わりにラップを導入しているのだ。作詞を手がけたのは、いとうせいこう氏。
「稽古でいとうさんがラッパーの人に“ここはこういう心情だから音を高く”と注文している姿を見て、歌舞伎はこうやって生まれてきたんだ、と思いましたね。歌舞伎の型は昔からあると誤解している人が多いんですけど、江戸時代にこうして作者や下座音楽が考えて型が生まれたんですよ」
斬新に見えて正統な古典。コクーン歌舞伎の真髄を、舞台の上から勘三郎さんは伝える。
出演舞台:渋谷・コクーン歌舞伎 第十一弾「佐倉義民傳」
演出・美術:串田和美
出演:中村勘三郎 /中村扇雀 / 中村橋之助 / 坂東彌十郎 /中村七之助
/片岡亀蔵 / 笹野高史
期間:2010年6月3日(木)〜6月27日(日)
会場:シアターコクーン
松本公演
期間:2010年7月2日(金)〜7月8日(木)
会場:まつもと市民芸術館・主ホール
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