魅力的な舞台人 インタビュー / 舞台レポート
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2010/7/7(水)
『裏切りの街』 前編
しょうもない人間の生態を描く、三浦大輔の粘っこい視線
作・演出 三浦大輔
劇団ポツドールの主宰・作・演出として小劇場で活動し、残酷なまでに客観的な人間描写とスキャンダラスなモチーフで、作品を発表するたびに話題を集めてきた三浦大輔。今年公開された映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を監督して好評を得るなど、その動向が各方面から注目される三浦が、パルコ劇場プロデュース公演に初進出したのが『裏切りの街』だ。
独特の三浦節は、この作品でも健在。主人公の裕一(田中圭)は、GF(安藤サクラ)がくれる1日2000円のお小遣いと母親からのわずかな仕送りを当てにして、バイトにも行かず、無為な日々を過ごしている。物語は、いつものように電話したテレクラで引っかかった相手が、美しい年上の人妻・智子(秋山菜津子)だった。彼女には夫(松尾スズキ)への愛情はすでにない──。と来れば、道ならぬ恋に燃えるふたりが、不倫や年齢差や社会的地位という障害を超えて……というドラマを期待するのが普通だが、三浦は登場人物を徹底して「楽なほうに流れるダメな人」に設定。特に裕一と智子は、ヒマだし、他に楽しいこともないから、惰性で肉体関係を続ける、しょうもないふたり。そしてふたりに裏切られる智子の夫も、裕一のGFも、一概に被害者とは言えないしょうもなさ。当然、かっこ悪いが、彼らのかっこ悪い生態を三浦はじっくりと描く。その果てにふと現れる、人間の真の姿とは何か。この作品でさらに独自の地位を確固たるものにした三浦の視線を、オンエアで確かめてほしい。
文:徳永京子(演劇ジャーナリスト)
リアル×エロス「裏切りの街」
06年に岸田戯曲賞を受賞した三浦大輔。秋山菜津子、田中圭、松尾スズキら注目の俳優達による話題の舞台。テレクラで知り合った男女を軸に徹底したリアリズムで描く衝撃作。