魅力的な舞台人 インタビュー / 舞台レポート
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2010/8/4(水)
『おくりびと』前編
©宮川舞子
すでに映画やテレビや小説で大ヒットした作品を舞台化することは難しい。逆もまた然りなのだが、ジャンルの違う先行作品が放ったファースト・インプレッションの影響力は絶大で、それを越えるためには様々な工夫や勇気が必要になる。特に先行作品が、アメリカのアカデミー賞外国語映画賞を受賞(09年)するという快挙を成し遂げていたならば、舞台化の苦労は察して余りある。
しかし舞台版『おくりびと』は、大胆なアレンジに挑んだ。映画のストーリーをそのまま舞台に移すのではなく、映画のエンディングから7年が経ったところから、新たな物語を紡ぐことにしたのだ。しかも、映画版で初めて脚本を書いて数々の受賞に輝いた小山薫堂が、これまた初めて舞台の脚本を手がけて。小山は舞台版において「人が悲しみといかに上手く付き合っていくか」を考えたという。あってはならない悲劇が起きた時、人はそれを忘れようとする。「それは消えることはないけれど、いつかその形はきっと何かいいものへと変わっていく。それと付き合っていこうと思うことによって、悲しみは乗り越えられる」と。
“死”のエピソードで“生”の尊さを描く「おくりびと」。これ以上ない絶望から人はどう立ち直るのか。
また、映画で絶賛された久石譲の音楽を、上演中に生演奏(弦楽五重奏とクラリネット)するという贅沢な試みも。映画とつながっている、でも“舞台ならではの『おくりびと』”が、ここに誕生した。
文:徳永京子(演劇ジャーナリスト)
舞台「おくりびと」
〜あれから7年後の物語〜
日本映画念願の、第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画『おくりびと』が待望の舞台化! 映画版で初めて映画脚本を手掛けた小山薫堂が、映画では語りきれなかったその後のストーリーを描く注目作を独占放送。