WBA、WBC世界ライト・フライ級タイトルマッチ 寺地拳四朗対アンソニー・オラスクアガ

  • 2023/06/23

WBO王者が急病のため対戦不可に
試合2週間前に相手変更

 昨年11月、「年間最高試合」の声が出るほどの激闘のすえ京口紘人(ワタナベ)を7回TKOで下して2団体王座を統一した寺地拳四朗(31=BMB)が、24歳の若武者、アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)を迎えて防衛戦に臨む。これが13度目の世界戦となる寺地に対し、オラスクアガはこれがプロ6戦目。経験値には大きな差があるが、怖いもの知らずの勢いには注意が必要だ。

王座奪回を機にひと皮むけた寺地

 寺地は2017年5月から4年4ヵ月の間にWBC世界ライト・フライ級王座を8度防衛した。2021年9月、矢吹正道(緑)に10回TKOで敗れて王座を失ったが、このときは直前に新型コロナウィルスに感染し、わずか2週間の延期でリングで上がったという酌むべき事情があった。再戦では積極的に攻め込んで3回KO勝ち、半年でベルトを取り戻した。8ヵ月後、WBAスーパー王者の京口と互いの王座をかけて拳を交え、7回TKOで斬って落とした。自身もダウン寸前の窮地に陥るなど危ない場面もあったが、それを凌いでの勝利だった。
 2試合とも鬼気迫るものが感じられる戦いだった。矢吹に敗れたことでレコードには黒星が記されたが、その挫折が寺地を覚醒させたといえるかもしれない。
 今回、もともと寺地はWBO王者のジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)と3団体王座統一戦を行うことになっていたが、試合の2週間前になってゴンサレスがマイコプラズマ肺炎に罹患。そのため急遽、対戦相手がオラスクアガに変更された経緯がある。サウスポーの技巧派(ゴンサレス)から右のファイター(オラスクアガ)へと180度異なるタイプと対戦することになったわけだ。経験値が高く充実期に入った寺地だが、数少ない不安があるとすればこのあたりだろう。

怖いもの知らずの24歳 オラスクアガ

 オラスクアガはアマチュア時代に東京オリンピックの出場権を得たが、それを辞退してプロに転向した。アマチュア戦績は23戦22勝1敗と伝えられる。
 プロ2戦目でサウル・フアレス(メキシコ)を6回、3戦目でヒルベルト・ペドロサ(パナマ)を8回、いずれも判定で下して世界15傑入りを果たした。ふたりとも寺地の持つ世界王座に挑んで敗れており、このあたりに因縁めいたものが感じられる。その後の2勝を加え、戦績を5戦全勝(3KO)に伸ばしている。
 今回、オラスクアガは韓国で試合が決まっていたため早めに来日し、世界挑戦経験者の岩田翔吉(帝拳)らとスパーリングを重ねていたため調整は問題ないという。むしろモチベーションという点では寺地を上回るものがあると推察される。降って湧いたチャンスだけに失うものは何もない。本番のリングで思い切り戦うだけだ。

<ライト・フライ級トップ戦線の現状>

WBA
:寺地拳四朗(BMB)
WBC
:寺地拳四朗(BMB)
IBF
:シベナティ・ノンティンガ(南アフリカ共和国)
WBO
:ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)

 2団体王者の寺地拳四朗(31=BMB)が頭ひとつ抜けだしている印象だ。約2年前に矢吹正道(30=緑)に10回TKO負けを喫して一度はWBC王座を手放したが、半年後の再戦では3回KO勝ちで雪辱を果たしベルトも奪還。次戦ではWBAスーパー王者の京口紘人(29=ワタナベ)を激闘のすえ7回TKOで下して王座を統一と、ここ2戦で一段上のステージに行った感じだ。
 寺地との3団体王座統一戦に臨むはずだったWBO王者のジョナサン・ゴンサレス(32=プエルトリコ)はサウスポーの技巧派で、相手にとっては噛み合わせが甘くなる傾向があり、戦いにくいタイプといえるかもしれない。
 IBF王者のシベナティ・ノンティンガ(24=南アフリカ共和国)はデビューから9連続KO勝ち後、IBF挑戦者決定戦、IBF王座決定戦をともに12回判定で制して戴冠を果たした。通算戦績は11戦全勝(9KO)。極端に両ガードを高くあげた構えから左右のパンチを強振してくる強打者だが、まだ評価を定めるのは早そうだ。
 近い将来、寺地の元王座に挑んでくるものと思われる元2階級制覇王者のヘッキー・ブドラー(35=南アフリカ共和国)、さらに元王者のカルロス・カニサレス(30=ベネズエラ)は経験値を含め総合力は高い。同じく王者経験者の矢吹正道も返り咲きを狙っている。
 昨年11月、ゴンサレスの持つWBO王座に挑んで敗れた岩田翔吉(27=帝拳)も2度目の挑戦を視野に入れている。




スーパー・バンタム級6回戦 那須川天心対与那覇勇気

「神童」のボクシング転向初戦
相手は日本2位の強打者

 キックボクサー時代に42戦全勝(28KO)の戦績を残し「神童」と呼ばれた那須川天心(24=帝拳)がプロボクシングに転向し、デビュー戦に臨む。
 サウスポーの那須川はキックボクシングでもスピーディーでタイミングのいい左ストレートや右フックをヒットしてダウンを奪うことがあり、打撃でも光るものを見せていた。今年2月にプロテスト合格を果たすとアメリカに集中トレーニングに出かけ、元世界王者のアンジェロ・レオ(アメリカ)らとスパーリングを重ねてきた。「思っていた以上にやれて自信になった。間合いをつかめるようになったのが大きい」と十分な手応えを得た様子だ。
 与那覇はアマチュア時代に全国高校選抜大会バンタム級で優勝するなど63戦(50勝13敗)を経験後、2013年5月にプロデビュー。
 途中で3年以上のブランクがあるためキャリアの割に試合数は17と少ないが、12勝(8KO)4敗1分という戦績を残している。直近の試合(日本バンタム級挑戦者決定戦)でサウスポーの南出仁(セレス)に8回判定負けを喫している点は気になるが、思い切りのいい攻撃が持ち味の強打者だ。現在は日本2位にランクされている。
 注目度の高い那須川だが、いきなり日本上位ランカーとの対戦ということで自身が負うリスクも高いものがある。

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