1851年に開通して以来、農産物や鉱物資源の輸送で活躍したペルー鉄道。道路事情があまり良くなかった近年まで、庶民の足としても重要な役割を担っていた。WOWOW開局一周年記念と銘打ち南米を取材した15年前の映像には、クスコからプーノへ向かう列車で、地元の人々と乗り合わせる和やかな光景が残っている。
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時は移り、この路線を観光列車アンデアン・エクスプローラーが走っている。実質的に運行しているのはイギリス資本オリエント・エクスプレス社傘下のペルーレイル。さすが世界に誇る観光列車、サービスの良さとすばらしい風景はトップレベルだ。インカ帝国の名残を辿る旅は世界中の憧れであり、実は取材当日も、お忍びでイギリス王室の方が乗車されていた。民族音楽も多く演奏されるのだが、その1つ『サクサイワマン』はクスコを見下ろす遺跡の名をとり、女性のつれなさを歌っている。「一人で寝るのは淋しい、二人で寝るのは素晴らしい、三人で寝たら大混乱、四人で寝たら村が出来てしまう…」とユーモアあふれる愛らしい歌詞が続く。 |
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列車が走っている様子を映す「客観撮影」の際も、カメラマンは撮影ポイントで列車がいつ来るのか冷や冷やしながら待つものなのだが、ペルーは違う。事前に可愛らしい1両だけの車両が走ってくるからだ。通称「チスモシータ(スペイン語でおしゃべりな人)」という調査車両が、旅客列車が通る前に路線の安全を確認し、線路上を歩く人や家畜に可愛らしい警笛で注意を促す。プップッーと警笛を鳴らしながら走る姿が「おしゃべりやうわさ好きな女性」をイメージさせるのだという。標高4000mを行くアンデスの鉄道。(※高度図)険しい大地を進む列車は、我々を常にニンマリさせてしまう愛らしい鉄道でもあった。 |