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写真:ロイター/アフロ
■女王セレナ、連覇は容易ではない
今大会の女子の勢力図を描くのは難しい。いつもグランドスラムの優勝争いを繰り広げるメンバーが不安定だからだ。
その中核をなしてきた女王セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は、マイアミ優勝までは良かったが、クレー第1戦のチャールストンは初戦となる2回戦で敗退。その後1ケ月ぶりに出場したマドリードは準々決勝を左太もものケガで棄権した。セレナにとって全仏はグランドスラムで唯一優勝が1回しかない大会だったが、昨年11年ぶりに優勝を果たした。17回ものグランドスラム・タイトルを持ち、クリス・エバートとマルチナ・ナブラチロワの記録(18回)は目前。しかし、32歳の史上最年長女王にとって、連覇は容易ではなさそうだ。
そんな中、3月のインディアンウェルズに出場して以来、欠場を続けていたビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は、大会を前に出場を辞退した。
シャラポワ 写真:AP/アフロ
リー・ナ 写真:Getty Images
一昨年の覇者マリア・シャラポワ(ロシア)は、肩の故障で昨年の後半を棒に振り、今季なかなか調子が上がらなかったが、シュツットガルト、マドリードとクレーで2大会続けて優勝。マドリードでは、2011年の全仏チャンピオンで世界ランク2位のリー・ナ(中国)を接戦の末に逆転で破り、準決勝では同3位のアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)を退けた。「体の調子も良く、ハードからクレーへうまく切り替えられている」と、2年前に生涯グランドスラムを達成した全仏オープンへの自信を高めた。
しかし、マドリードでシャラポワに敗れたとはいえリー・ナは今季もっとも安定している。全豪優勝、マイアミは準優勝。有力な優勝候補であることは間違いないだろう。
上位4人の中で唯一グランドスラム優勝経験がないラドバンスカは、全仏の最高成績は昨年のベスト8。カウンターパンチャーにとってクレーは得意とはいえず、厳しい戦いが予想される。
上位陣で本命を絞れない状況もあり、今回は新鋭の活躍に注目だ。中でも勢いがあるのはマドリードで決勝に進出したシモナ・ハレプ(ルーマニア)。全仏は2回戦を突破したことがないが、これまで獲得した7つのシングルスタイトルのうち2つはクレーである。正確なショットを左右に打ち分けるグラウンドストローカーで、クレーは相性がいいはず。また、ジュニア時代は16歳で全仏ジュニアを制している。昨年の全米が4回戦、全豪がベスト8、と徐々に成績を上げてきた22歳が、世界ランキング5位の実力を見せられるだろうか。
また、実力プラス美貌という武器を手に人気を集めるフランス系カナダ人の20歳、ユージェニー・ブシャールも期待される。昨年のローランギャロスでグランドスラム・デビューし、わずか4大会目にして今年の全豪でベスト4へ進出、最高ランキングも18位まで浮上した。77位で出場した1年前は2回戦でシャラポワに敗れたが、「第2の故郷」と呼ぶパリで成長ぶりを披露してくれるだろう。
奈良くるみ 写真:Getty Images
クルム伊達公子 写真:AP/アフロ
日本勢も急成長の22歳、奈良くるみがどこまで進むか楽しみだ。全仏は4年ぶり2度目の出場で、前回勝ち星は得られなかったが、昨年の全米と今年の全豪はともに3回戦に進出し、2月にはクレーコートのリオデジャネイロでツアー初優勝を果たしている。
一方でツアー最年長の43歳クルム伊達公子はこれが通算11回目の全仏出場となるが、期待度は体調次第だろう。ふくらはぎのケガや胃腸不良で4月は2大会連続の途中棄権。約1ケ月ぶりの実戦が全仏オープン本番となり、クレーは大の苦手ということを考えると状況は厳しい。4年ぶりの1回戦突破を目指したい。
心身ともに万全でなければ勝ち進めないと言われるローランギャロス。過去の女王たちが貫禄と意地を見せるのか、それとも世代交代の波が押し寄せるのだろうか。