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錦織圭 写真:AP/アフロ
■錦織圭は優勝候補に挙げられても不思議ではない
2014年のクレーシーズン、間違いなくメインキャストの一人を演じているのが自己最高ランキングを9位にしトップ10入りを果たした日本の錦織圭だ。バルセロナの〈500〉で優勝、マドリードの〈マスターズ1000〉で準優勝とくれば、全仏オープンの優勝候補に挙げられて何の不思議もない。しかも、クレーの王様ラファエル・ナダル(スペイン)をラリー戦で圧倒し、あと一歩まで追い詰めていたのだ。
だが心配なのはケガ。マドリードでは腰痛を抱えながらも、昨年の全仏ファイナリストで「壁」と称される粘りのテニスが特徴のダビド・フェレール(スペイン)をフルセットで退けたが、ナダルとの決勝の最中に容態は極度に悪化。途中棄権を余儀なくされ、続くローマ〈マスターズ1000〉の欠場が決まった。3 月のマイアミ〈マスターズ1000〉で脚の付け根を痛めたあとは3週間で復帰する回復力を見せたが、全仏開幕まで2週間しかない。最近の錦織は体調さえ良ければ勝てない相手はいないだけに状況が悩ましい。
ナダル 写真:アフロ
ジョコビッチ 写真:PanoramiC/アフロ
冷や汗をかいたナダルにとっては、マドリード〈マスターズ1000〉が今季の欧州クレーで初のタイトルとなった。例年に比べれば低調気味だが、クレーキングに対する評価が大きく揺らぐことはない。昨年達成した全仏オープン8度の優勝は同一グランドスラムでの優勝回数としては史上最多。前人未到の記録更新なるか、今大会最大の見どころだ。
近年、そのナダルの牙城を脅かす最大のライバルはノバク・ジョコビッチ(セルビア)だった。全仏では2年連続、ナダルに敗れているが一昨年は決勝を戦い、昨年は準決勝で、最終セット7-9という死闘。ジョコビッチにとって生涯グランドスラムまで残すはこの全仏だけだが、今年は痛めている右手首が少し気がかりだ。4月のモンテカルロ〈マスターズ1000〉のあとローマ〈マスターズ1000〉までの1ケ月間を治療とリハビリにあてたが、どこまで回復するか。クレーの5セットマッチではわずかなごまかしもきかない。
フェデラー 写真:アフロ
マレー 写真:アフロ
それにしても、マドリード、ローマとマスターズシリーズが2週続き、1週空けて全仏オープンというクレーシーズン後半のスケジュールは過密すぎる。どこにも痛みがなく全仏を迎えられる選手などいるのだろうかと首を傾げたくもなる。
その点では、産休≠ナマドリード大会をスキップしたロジャー・フェデラー(スイス)は、例年に比べ心身共にリフレッシュができているかもしれない。ナダルが唯一優勝できなかった09年大会を制し、鬼門突破で生涯グランドスラムを達成したフェデラー。昨年はベスト8だったが、元王者ステファン・エドバーグをコーチにつけた今季は好調なだけに楽しみだ。一時は8位まで落とした世界ランキングも4位に戻しており、クレーのモンテカルロでは準優勝している。
そのフェデラーをモンテカルロの決勝で下したのが、同国の弟分スタン・バブリンカだった。全豪オープン優勝で世界を驚かせ、その後つかんだ世界ランキング3位の座は今も守っている。全仏の最高成績は昨年のベスト8で、準々決勝ではナダルに完敗したが、これまで獲得した7つのタイトルのうち4つがクレーというクレー巧者だ。自信のレベルも高い今シーズン、優勝候補の一角に挙げていいだろう。
一方、ケガの影響から完全に復調できないのが昨年のウィンブルドン・チャンピオン、アンディ・マレー(イギリス)。〈500シリーズ〉や〈250シリーズ〉の大会でも30位以下の格下などに敗れており、世界ランキングは8位まで落ちた。2年間コーチだった元王者イワン・レンドルと別れ、環境が落ち着かないことも、なかなか完全復活できない要因か。
ところで、マレーのウィンブルドン制覇は77年ぶりのイギリス人の優勝という快挙をもたらしたが、フランスにマレー≠ヘいるだろうか。フランス人の男子シングルス優勝は83年のヤニック・ノアまで遡らなければならず、準優勝も88年のアンリ・ルコントが最後。〈新四銃士〉と呼ばれてきたリシャール・ガスケ、ジョーウィルフライ・ツォンガ、ガエル・モンフィス、ジル・シモンは今も全員トップ30にはいるが、全仏ではツォンガとモンフィスのベスト4が最高だ。ガスケ、モンフィスは最近故障がちで、やはりもっとも期待されるのはツォンガだろう。一昨年は準々決勝で当時最強だったジョコビッチをマッチポイントまで追い詰め、昨年は初のベスト4に駒を進めた。今季はツアーの決勝進出がマルセイユ〈250シリーズ〉での一度だけと、今ひとつ元気がないが、地元ファンには長く夢を見させてほしいものだ。
クレーコートの最高峰。開幕は5月25日。長く厳しく、ドラマティックな闘いが幕を開ける。