スタッフによるMOZUの制作裏話
このたび、制作日記の連載を始めることになりました。
WOWOWのプロデューサーの井上衛といいます。
どうぞよろしくお願いいたします。
署名入りの文章を公表するなんて、分不相応ですし、恐ろしいことでもあるので、かなり躊躇していたのですが、TBSの「MOZU」公式サイトでは渡辺プロデューサーが、丁寧かつ真摯な「日記」を書いてらっしゃいますし(TBSサイト プロデューサー日記)、また、公式TwitterやFacebookにお寄せ頂く皆様からの様々なご質問にいつもきちんとお答えしていない、ということが実はずっと気になっていましたので、それらのいくつかに対するご返事になるような内容にもできればと思い、始めてみることにしました。
でも、WOWOWの人間である自分が「日記」を書くからには、まずお答えしなければならないのが、「なぜ、Season2はWOWOWなのか」、ということでしょうね。そのことにご不満や疑問を持たれている方が多いことは重々承知しております。「制作日記」と名乗る以上、そのことを避けて通るわけには行きません。
このページを読んでくださっている方々の多くはきっとご存知かと思うのですが、2012年にTBSと初めて共同制作を行った「ダブルフェイス」というドラマがあります。香港映画「インファナル・アフェア」を二本のドラマとしてリメイク、うち「潜入捜査編」をまずTBSで、その約10日後に「偽装警察編」をWOWOWでオンエアするという企画。多くの方々に観て頂くことができ、いくつか賞を頂くなど、大変良い評価を頂いたこのドラマは、元々は、東京・赤坂のご近所さんどうしでもある両社の人事交流から生まれました。行き来が増え、人間関係が深くなっていくうちに、どうせなら一緒に何か番組を作ろう!、と、そんな割と単純なきっかけ、動機から始まったプロジェクトなのです。
綺麗ごと、と思われてしまうかもしれませんが、制作の現場としては、とにかく何か新しいことをしよう、せっかくなので面白いものを作ろう、結構、純粋にそう考えていました。地上波と仕事をするなんてプロデューサーとしての今後のキャリアを考えると何か美味しいんじゃないか、という色気は確かにありましたけれど。
おかげさまで「ダブルフェイス」が望外な評判を呼び、プロジェクト自体も新しい試みとしてお褒めの言葉を頂いた一方で、「なぜ、偽装警察編はWOWOWなのか」ということについて多くのご意見も頂きました。ある媒体では「ビジネス先行」、はたまた「WOWOWの邪悪な陰謀」とまで…。でも、制作担当の自分としては、実は、オンエアが終わってから、プラス、マイナス、両面の反響のあまりの大きさに驚き慌てた、というのが情けなくも本当のところなのです。
「MOZU」も、ビジネス要請というよりは、素晴らしい時間を共有できた「ダブルフェイス」チームでさらに凄い作品を作りたいという現場の素直な熱意から生まれたものだということに嘘偽りはありません。「なぜSeason2はWOWOWなのか」の答えの一つがここにあります。
では、「Season2」は、無料で観られるようにしたらいいじゃないか。多くの皆さんはそう思われるかもしれません。
でも、あくまで個人の見解になりますが、WOWOWをWOWOWたらしめているもの、この多様化するメディア環境の中での存在意義、突き詰めればそれは有料放送である、ということだと思っています。そのことが、スポンサーからの制約を受けない思い切った番組の制作を可能にしてくれています。オリジナルドラマでは、地上波では中々扱えないテーマや難しい表現に挑戦できますし、映画をCFなし、ノーカットでお届けすることもできるのです。
WOWOWでの放送である以上、番組を有料でご覧頂く、という姿勢を崩すことはできません。このことについては堂々とお伝えしていかなければならないと思っています。
もう一度、「なぜSeason2はWOWOWなのか」。
自分の立場で、今、さらに言えることは、ストレートな回答ではないのですが、もし、この機会にWOWOWに加入されたとしても、絶対に後悔はさせません、ということでしょうか。「Season2」がとにかく面白いものであることはもちろんですが、WOWOWにはドラマや映画、スポーツ、音楽、その他にも確実に料金にみあったラインナップが揃っています。もしこれが言い過ぎであるなら、そう思って頂けるようにみんな一生懸命良い番組作りに力を入れています、と。
初回のためか、肩に力が入り過ぎました。なんだかずいぶん偉そうなことを長々と書いてしまいました。
でもテレビ局として比べると地上波・TBSの力は色々な意味で圧倒的。
今も、共同制作の取り組みの中で、日々、新たな経験をさせてもらっています。
この日記では、いずれ、肌で感じたそんな両社の違いなども書いてみたいと思っています。
WOWOWプロデューサー・井上衛
「制作日記」Vol.1の内容につきましては、色々な形でご感想を頂きました。本当にどうもありがとうございます。ご意見をしっかりと受け止めつつ、今後も様々に努力して参ります。
さて、Vol.2は、がらりと趣を変えて撮影現場の差し入れの話なんかをしてみたいと思います。
「MOZU」の現場はいつも差し入れでいっぱいです。おかげで現場のお茶場はこんなふうにお菓子屋さん状態。
差し入れが届くと、現場では受け取った制作部の若いスタッフが「○○さんから□□の差し入れを頂きました!」と大声でコール、持ってきた人がちょっと照れながら拍手を受ける、という微笑ましい光景が繰り広げられます。
差し入れはもちろん好意ですから、何か決まりがあるわけではありません。でも、じゃあなんでもいいか、というとこれが中々難しい。センスと度胸(?)が試されるのです。
よく言われるのが、「音が出るものはやめた方がいい」「生ものは避けよう」ということ。たしかに、撮影が始まっているのにどこからか固いおせんべいをバリバリ齧る音がしたらまずいでよね。また、日持ちするものが好まれることも間違いありません。食べた役者さんやスタッフがお腹を壊したら大変ですから。ただ、これはあくまでマナーの問題。持っていく方にも、食べる方にも配慮があればクリアできることですね。美味しい、嬉しいと思ってもらえることが一番です。
経験上、まず外さないのが、ラスク。どの現場でも、ウケがいい定番商品です(そういえば、食べる時に多少の音はしますが・・)。甘さと腹持ち感が、撮影の合間にさっと食べるのにちょうどいいんですね。
最近自分が見つけた必殺技は、今、話題のポップコーン。小分けされておらず、素手で掴む、もしくは紙コップで掬わなくてならないという欠点はありますが、大型の缶に入ったポップコーンはどの現場でもかなりの人気。残った缶は、現場で他に流用できる楽しいおまけになったりしますし。
意外に難しいのが持っていく日にちとの兼ね合い。
街頭ロケや現場移動が多い日は、中々、きちんと食べてもらうチャンスがありません。むしろ、迷惑をかけてしまうことも。ですので、同じ場所にずっといる時で、広いスペースがある日に、ということになるわけですが、考えることはみな同じ。終日、スタジオのセットで撮影をしている時なんかにはたくさんの差し入れが集中することになります。だから、たまに起こるんですね。そう、「バッティング」が。人気の和菓子や、撮影場所近くの名物なんかが複数並んでしまう、ということも。主役クラスの方と同じものを持っていくと気まずいことになったりしますので、そんな時は、スタッフに言って、後日に回してもらったりします。
「MOZU Season2」の撮影現場ではある日、西島秀俊さんからあっと驚く差し入れがありました。吹雪の中を颯爽と現れたのは一台のワゴン車。それはなんとそのままカフェカーでした。コーヒー、抹茶ラテ、ポタージュなどが飲み放題。さすが、スケールが違いますね。スタッフ全員、心遣いに本当に温まりました。
そして、真木よう子さんからは「ヘルシー弁当」も。いつも、カロリーが高そうなものばかり食べているスタッフへ、ということで、健康に配慮した自然食材のお弁当。お気遣いも含め、ありがたく頂いたのでした。
現場に差し入れが多いのは、キャスト、スタッフに一体感があって盛り上がっている証拠。「MOZU」のお茶場の賑わいは、このドラマにかけるみんなの思いの表れと言えるかもしれません。Season1はいよいよ、クライマックスへ。ぜひ、この熱気をみなさんとも共有していければと思っています。
WOWOWプロデューサー・井上衛
「MOZU」はWOWOWとTBSの共同制作。そして制作協力がROBOT。
衛星波のWOWOWと地上波のTBS。
同じテレビ局なのに、こんなにも? と思うぐらい、色々なことが違います。
もっとも大きな違いは、単純ですが、やはり会社の規模ですね。TBSの本社は広く知られているように、周囲にサカス、ACTシアターなどエンターテインメント施設が揃う、東京・赤坂のランドマークです。
WOWOWの本社は実はTBSと一本の道を隔てたお隣のビル。もちろんビル一棟ということはなく、その中の数フロアを使っています。TBSは人の出入りが多く受付ロビーはいつも大変な活気。中にスタジオもありますから、役者さん、タレントさんはもちろん、様々な関係者が絶え間なく出入りしています。フロア内も大声が飛び交う、まさに「テレビ局」、という感じ。一方でWOWOWは、比較的静かで落ち着いた雰囲気です。両社の関係者双方から怒られそうですが、ものすごく大まかに言うと、「体育会系と文化系」、でしょうか。
共同制作においては、TBSの、建物だけではなく、番組制作に対するエネルギーの大きさ、アイディア豊富で行動力に満ちた方々に、ある時は引っ張ってもらい、ある時は打ちのめされそうになりながらも、WOWOWの良さをいかに作品に反映させていくか、そのことをずっと考えてきました。WOWOWのオリジナルドラマシリーズ「ドラマW」「連続ドラマW」について、ぜひ、この機会により多くの方々に知ってもらいたいという思いもあります。
ところで、この両社の物理的な距離の近さには本当に助けられています。ちょっと何か問題が起きると、「じゃあ、今から打ち合わせをしましょう!」と連絡を取り合って数分後には直接顔をあわせられる。自分だけではなく、編成、広報宣伝、事業、デジタル、契約関係など、作業が多岐に渡る共同制作において、各担当者がすぐに会うことができるというのは凄く大きいですね。そのことから生まれた信頼感によってどれほど多くの危機を乗り越えてこられたことか。メールやSNS全盛のこの時代にコミュニケーションのあり方を考えさせられる、とまで言うと平凡に過ぎるかもしれませんが。
そして、現場の制作を担っている会社がROBOT。「海猿」シリーズや、最近では「永遠の0」など、邦画のあり方そのものを大きく変えるようなメガヒット映画を制作してきているだけあって、発想が日本離れしているところがあります。制作体制はもちろんですが、何より飲み会のスケールが大きい。正直、そこが一番ついて行くのに苦労するところかも(笑)。
ROBOTの旗印の下に集う羽住英一郎監督をはじめとするスタッフの技術的、精神的な素晴らしさは、西島秀俊さん始め、キャストの皆さんが取材などでいつも語って下さっている通りですが、自分がまず感じるのは「気持ちの良い人が多い」ということ。現場に行くと必ず、皆、笑顔で挨拶をしてくれます。当たり前だろう、と思われるかもしれませんが、これは意外に少ないこと。「さっさとデスクワークを終えて、早く現場に行きたい!」とここまで思わせてくれるチームは初めてでした。そんなROBOTの森井プロデューサー他、スタッフのみなさんのうち何人かがこのサイト内の「ドキュメント・チームMOZU」に登場してくれています。ぜひ、覗いてみてください。
ネットや媒体で、たまに「『MOZU』はWOWOWが絡んでいるからクオリティが高いんだ」という趣旨のことを書いて下さる方がいて、「してやったり」と、ちょっとニンマリしているのですが、まあ、正直なところ、そう言い切ることはとてもできません。それぞれの特徴を持った3社が揃ったからこそのこのドラマだと思います。
TBS、ROBOT、そしてWOWOW。このように会社の垣根を越えて人と人の交流が活発になることが実は共同制作の最大の面白さかもしれません。WOWOWは小さな会社ではありますが、プレミアムペイチャンネルの誇りを決して忘れず、こういった経験を生かして、両社に負けないような優れたコンテンツをどんどん生み出していきたいと思っています。
WOWOWプロデューサー・井上衛
大抵のドラマや映画の撮影現場ではゆっくり食事をとる余裕はありません。食べる時間も日によってまちまち。
特に撮影も終盤になってくると、俗に「つなぎ」と言われる、作業をしながら齧るパンやおにぎりで済ませてしまうようなことも。
しかし、それは良くないですね。やはり、ちゃんとご飯を食べていないとギスギスした空気が流れ、それがさらに現場の進行を遅らせて行きます。
そんな時、プロデューサー陣、食事を担当する制作部スタッフが、まず、顔を思い浮かべる男がいます。「あいつだ、今こそあいつを呼ぶ時だ!」。それが、今回の主役、こみずとうたさん。
「トウタリング」(ケイタリングと「とうた」という名前がいつの間にか混ざってしまったらしい)という独自の仕出しを考案した撮影現場のスターです。4月に西島秀俊さん、香川照之さんが「MOZU」の番宣も兼ねて出演されたTBSの「ぴったんこカンカン」の中でお二人の話題にのぼっていたのを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。自分は「ダブルフェイス」の撮影の時にROBOTの森井プロデューサーから紹介されました。
映画やドラマの現場には常時、50〜100人ぐらいのキャスト、スタッフがいます。その全員に美味しいもの、力がつくようなものを作る、しかも、撮影次第でいつ始まるかわからない、さらには、食べる時間もそんなにとれない。そんな無茶な条件を強いられる中、とうたさんが、どかん!と持ち込むのは、二つ、三つの大きく深い鍋。メニューは豚汁やシチュー、タイ風グリーンカレーや、ポトフ、鶏飯など様々で、それを、丼型の器にどーん!と盛りつける。これが、まあ、美味しいこと。スタッフもキャストも一気に盛り上がります。
以前、ある現場に行ってみたら(「MOZU」ではありません!)、予算も少なく日程も限られていることもあって、休み無く働いているスタッフたちのご機嫌が…。かなり厳しい視線が自分に集まるのを感じました。そこで、「トウタメシ投入!」を決断。数日間連続で来てもらったのですが、それで本当に救われました。ある若い女優さんなんかはすっかり惚れ込んで、「私もケイタリングやりたい!」(そっちかよ)。
「MOZU Season2」に続いて同じ連続ドラマW枠でオンエアされる「東野圭吾 変身」の現場にも参戦(とうたさんは現場に来ることをこう呼ぶのです)してもらっています。永田琴監督とは久々の再会だったらしく、現場では昔話も色々と。とうたさんのおかげでみんなの士気が高まったこちらのドラマも面白くなりますよ!ありがとうございました!
とうたさんは中々の‘イケメン’で、過去には色々な人生経験があるようです。でも、正直、彼と個人的な話をしたことはほとんどありません。現場で会った時に少し言葉を交わすぐらい。けれども、この人は信頼できるな、と思ったことがあります。
あるドラマのクランクアップの夜。
食事も終わり、キャストも引き上げたあと、深夜までスタッフだけが残って最後の作業をしているのを彼は、何時間もずっとセットの片隅で見つめていました。
自分の仕事はとうに終わっているので、帰っても誰も咎めないのに。
「帰らないんですか?」と訊いたら「撮影の最後の瞬間まで一緒にいられるのって本当にありがたいことなんですよね」とひとこと。あ、この人は、現場との一体感をこんなにも大事にしているから美味しいものを作れるんだ、そんな当たり前のことに本当に今更ながら気づかされて、つまらない質問をした自分の不明を恥じました。
彼はまさに「参戦」しているのです。
色々な人の支えで「MOZU」は生まれている、そんなエピソードの一つです。
WOWOWプロデューサー・井上衛
TBS系列で放送中の「MOZU Season1 〜百舌の叫ぶ夜〜」。
明日、夜9時、いよいよ最終回ですね。
空港を舞台にしたテレビドラマ史上過去に例をみないぐらいの大スペクタクル。極論を言えば、前後関係を知らずにこの話から見始めても面白いです。編集室での試写が終わったあと、圧倒されて声が出ませんでした。このドラマに関われたことの幸せを改めて感じました。
みなさんも、ぜひ、リアルタイムで興奮を共有しましょう!
自分も羽住監督、TBS渡辺さん(TBS「プロデューサー日記」)、ロボット森井さんたちとどこかで一緒に見て盛り上がるつもりです!
そして、その後、いよいよ舞台はSeason2へ。
WOWOWでは関連番組が続々スタートします。
しかも、これらは無料放送。今、WOWOWに加入されていなくても、BS放送がご視聴になられる方は、全国どこでも放送時間にBS9chにチャンネルをあわせるとご覧頂けます。
まずは明日6/12(木)。
Season1最終回を受けついで、よる11:50〜「MOZU Season1ダイジェスト」。
「Season1」で何が起きたのか、あの謎はどうなったのか。この番組の内容を番宣制作スタッフと検証しながら、自分でもおさらいができました。
※他の時間にも放送がございます。詳しくはこちらへ!
さらには、6/15(日)よる7:20〜ドラマ「ダブルフェイス」をオンエア。
WOWOWとTBSが共同制作した、西島秀俊さん、香川照之さん主演の「MOZU」の原点とも言うべき作品。今回は「潜入捜査編」「偽装警察編」を一挙放送。もちろん有料放送のWOWOWですからCMは入りません! ご家庭で映画感覚で見られる息つく間もないエンターテインメント作品です。
そして、番組間には「西島×香川×真木『MOZU』スペシャル対談Ver1,2」もあります。「MOZU」の撮影秘話や、お互いの演技の評価など、なかなか見られない楽しく貴重な対談になりました。Season2から出演する蒼井優さんのインタビューやSeason2の映像もたくさん盛り込まれています。
では、対談の中のコメントを少しだけ。
西島さん「Season2の方が危険なアクションが多かった」
香川さん「WOWOWはもっと攻めていこうという台本だった」
真木さん「轢かれます・・」
ぜひお楽しみに!
WOWOWプロデューサー・井上衛
初めまして。MOZUのプロモーションを取りまとめております、WOWOW宣伝部の磯﨑と申します。
この「制作日記」の執筆はこれまでWOWOW井上衛プロデューサーがメインでしたが、今回は作品全体を統括する井上Pの目線から少しシフトし、MOZUのプロモーション担当者として見つめてきた『MOZUプロジェクト』について拙文を寄せようと思います。
素のままでは恥ずかしいので、菅野祐悟さんの『MOZU ORIGINAL SOUNDTRACK』を聴きながらしたためます。お時間があるようでしたらお付き合いください。
MOZU の台本決定稿が届いたのは昨年秋でした。できたてほやほやの台本を読んだ時の衝撃。「これは今まで見たこともない、とんでもないドラマになる!」。心でそう叫びつつ、体の芯から震えがきたことを今でもはっきりと覚えています。これまで数えきれないくらい様々なドラマ台本を読んできましたが、これほどの衝撃は未経験のものでした。「この衝撃を一人でも多くの人と分かち合いたい」。テレビ局の宣伝担当社員としてではなく、たまたま入った映画館で物凄い感動作を観てしまい、早く友人や家族にその感動を伝えたくなった学生時代の時のような感覚でした。
私事で大変恐縮ですが、実は私は昨年春にTBS宣伝部からWOWOW宣伝部に出向してきた人間です。語弊を恐れずに言えば、この出向は、微力ながらもMOZUプロジェクトにおけるWOWOWとTBSの架け橋の役割を担うためのものだったのだと勝手に合点しています(笑)。
TBSのプロモーションセクションの面々は全員気心の知れた元部下や元同僚たち。WOWOW・TBS両局をまたぐ連続ドラマ。この前代未聞のプロジェクトにおけるWOWOW×TBS合同プロモーションチームは何の問題もなく極めてスムースに結成されました。言わずもがなですが、チーム全員が皆さんと同じくMOZUに心底ほれ込みとことん愛してしまっている、いわばMOZUマニアたちです。
詳しい宣伝プランについては割愛させていただきますが、すでに多くの方の目に触れているMOZUの広告ビジュアル(Season1は13人、Season2は10人のキャストが爆心地と思しき場所にたたずんでいるもの)について少しだけ。「今までのテレビドラマ広告とは一線を画す、圧倒的なスケール感」「ハリウッドのディザスター(災害・大惨事)ムービーのような衝撃性」そして「ザワザワするようなただならぬ雰囲気」という全会一致の指針のもと、すぐに決定しました。
因みに、このビジュアルの背景には羽ばたく「百舌」が小さく描かれています。それもSeason1バージョンとSeason2バージョンでは微妙に飛び方や位置が違います。お気づきでしたでしょうか。
このような広告ビジュアルとその掲出形態は宣伝の成否を決める大きな要素です。しかし、それはあくまで我々送り手側が一方的に不特定多数の方に番組の存在を知っていただくためのもの。一方で、その作品に触れた方々が集う“コミュニティ”から発信される情報は、広告と同等かそれ以上に重要な存在です。
今回我々は通常の広告以外に、そのコミュニティの形成に注力しました。放送一か月前に立ち上げた公式動画サイト『MOZU.TV』では、当初、ドラマ本編から切り出した一見意味が解らないのに何かザワザワする雰囲気の映像を<MOZUの欠片>と題して立て続けにアップしていきました。同時に、MOZUの世界観を想像しながら語り合っていただくために、先行して制作状況などをお届けしていた『公式Twitter』に加えて、『公式Facebook』も開設して視聴者の皆様との接点を増やしていきました。
その後、予告編映像、キャストのメッセージ等々おびただしい数の動画をアップし、放送開始前から現在に至るまで、これらサイトは大変な活況を見せています。そこに視聴者の方々から寄せられるリアルでタイムリーなご意見は我々の業務におけるとても貴重な情報であり、単に広告を出稿するだけではなかなか得ることのできない、宝物のような存在です。本当に、本当に有り難うございます!
ここで、大好評をいただいているMOZUグッズのエピソードをいくつか。
ご存知のようにMOZUでは様々なオフィシャルグッズを作りました。現在WOWOWにMOZUでご加入いただいた皆様にももれなく差し上げている<MOZUパーカー>。実は当初のアイデアはパーカーではなく“MOZUバーガー”、つまりハンバーガーでした。しかし、さすがにMOZUのあの世界観の食品への転用は難しいものがあり、早々と断念しました(笑)。そんな<MOZUパーカー>、新谷(宏美)役の池松壮亮さんが劇中で着用したパーカー同様フード部分のヒモもしっかり抜いてあります。
次に<MOZUサブレ>。これは全国的に有名な某サブレに着想(?)、全会一致で即決しました。購入された方は気付かれたと思いますが、この<MOZUサブレ>と<MOZUクリアファイル>には、皆さんの夢に登場しているかもしれないあのダルマをこっそり忍ばせてあります。
ところで、本格的なプロモーションが始まる前、都内の飲食店でのみ展開した<ダルマコースター>というサンプリング(無料配布)アイテムがあったのをご存知でしょうか。飲み物と一緒に出されるコースター表面に特殊な仕掛けがしてあり、グラスの水滴やおしぼりなどで濡らすとダルマが浮かび上がり、裏面には【MOZU.TV TBS/WOWOW】の表示だけ。この頃はダルマの存在は一切世に出ていない時期で、一見しただけでは意味の解らない“不気味な”代物でした。上でお話しした『MOZU.TV』へのアクセスは、当時はこの<ダルマコースター>が唯一の“手がかり”でした。不親切ですよね(笑)。
でも、このコースターを手にした多くの方々が立ち上がったばかりの『MOZU.TV』をのぞいていただいたようです。
駄文にお付き合いいただき有難うございます。最後にWOWOWの宣伝をさせてください。ただし、本心からの宣伝です。
私は出向を機にWOWOWに加入したのですが、オリジナルドラマはもちろん、音楽番組やドキュメンタリー、海外ドラマにスポーツ中継など、地上波ではまずお目にかかれないクオリティの高さと多様な番組編成にものすごい「カルチャーショック」を受けました。おそらくこの「カルチャーショック」は、初めてWOWOWに加入される視聴者の方々が受けるであろうそれと非常に近いものであると思います。『MOZU Season2〜幻の翼〜』をきっかけに、WOWOWワールドを是非覗いてみてください。
MOZUマニアの皆さんが一人でも多くWOWOWマニアになっていただければ、宣伝担当者としても最高に嬉しいことです。
WOWOWマーケティング局宣伝部・磯﨑裕啓
今度の日曜日から、Season2がいよいよスタートします。
WOWOWでもたくさんの予告映像をオンエアしています。
映画館で予告編を観て今まで知らなかった作品の存在を知り、素晴らしい映像体験への道が開かれることになった。誰もがそんな経験、ありますよね。
もちろん、映画を観に行ったら一番面白かったのが本番前の別作品の予告編だった、また、ドラマの番宣映像はすごく面白かったのに実際に観てみたらそうでもなかった、なんてこともよくあるわけですが。
まだ知識の無い方々に、あるドラマや映画の面白さをどのように伝えるか。番宣映像や予告編はプロモーション展開上、非常に大きな役割を果たしています。制作には本編の演出チームが関わることもありますが、多くの映画やWOWOWのドラマでは撮影隊とは異なる専門的なスタッフが携わっています。
今回、ご紹介するのは、「ダブルフェイス」、「MOZU」(※本編最後に直結している予告以外)において、ほぼすべての番宣映像の制作を担って下さった坂井智美さん。本編の羽住英一郎監督をも唸らせた、才能溢れる女性ディレクターです。
番宣映像は、ただ派手なシーンを繋げていけばいいというものではありません。まずは短い時間の中で、内容や見所をきちんと伝えることが基本。そこから先が個々のディレクターの腕の見せどころ。時にストーリーから離れて印象的なシーンを唐突に挿入したり、台詞を本来の場所とは違う映像にあてはめてインパクトを強めたりすることも。そして、音楽や効果音、ナレーションを加えて全体を仕上げて行きます。
難しいのは、単にその映像が面白いだけではダメだということ。「予告」はあくまで「予告」であって、その中に完全なカタルシスをもたらしてしまってはいけない、本編への期待感、飢餓感を煽るものでなくてはならない、ということですね。
坂井さんは「ダブルフェイス」の時から予告編制作に参加。香川照之さん演じる高山亮介が車から降りてくるシーンに人物紹介テロップを載せた映像(こちらをチェック >>)を観た羽住監督が、「このセンスは凄い!次もぜひこの人で!」となり、「MOZU」Season1,Season2でもほとんどすべての番宣制作を担当して下さることになりました。
ただ坂井さんがそれを喜んでいるのかどうか、実はよくわかりません(笑)。
なぜなら、その作業量の多さときたら・・
一口に予告編といっても数多くの種類が存在します…5秒、10秒、15秒、30秒、60秒、120秒・・様々な長さ。そして、オンエア一週間前、オンエア前日、オンエア当日などの複数パターン。
えっと、第一話終了後はどこまで映像使っていいんだっけ?次の見どころは?ところでそれネタバレしてない?色調整がまだできていないからそのシーンはNGだって・・しかも今回は二社共同制作、かつ、2シーズンに渡る連ドラ。TBSの表記は?WOWOWでは今どこまで情報を出せる?決まりのロゴ入れなきゃ!放送日時は間違ってない?それぞれの納品形態は??
そして(多分)鬱陶しいことに、プロデューサー陣からは、やれ「あそこの画が欲しい」「これは使わないで」「あの字はもっと大きく」「急だけどこのバージョンも作って」・・
坂井さんは、アシスタントの清家元太さんとともに、それらの要望というか無茶な注文をすべて受け止めながら、そしてここが一番凄いのですが、毎回必ず自分のオリジナリティを盛り込んだ新鮮で素敵な予告編を制作してくれています。
とにかく嫌がる顔を見せない人。タフです。こんな表現をするとご本人は不本意かもしれませんが、飄々としていてなんだかすべてを軽々こなしているようにすら思える。だから気楽に色々頼んでしまうわけですが・・すみません!
坂井さんが担当した番宣映像は、WOWOWオンエア上はもちろん、このサイト、MOZU.TVにもたくさんアップされています。「Season1ダイジェスト」「西島×香川×真木『MOZU』スペシャル対談」、「MOZUの欠片」も坂井さんの演出。どれも楽しく斬新な番組、映像になりました。
みなさんも、これだけの量のこんな格好のいい映像を一人の人が色々工夫(苦悩?)しながら作っているんだ、という普段とは別の視点からも、ぜひ、観てみてください。
撮影現場に来ることはほとんどなくても、チーム「MOZU」を語る上で欠かせない大事な方々がたくさんいます。
今回は、その中の一人をご紹介してみました。
WOWOWプロデューサー・井上衛
「MOZU Season2 〜幻の翼〜」第一話をご覧頂いた皆様、どうもありがとうございました。
もし、まだ見てない!という方がいらっしゃいましたら、下記の日程で第一話再放送がございますので、ぜひ。まだ、来週日曜(6/29)よる10:00〜の第二話に間に合いますよ!
<第一話再放送 WOWOWプライム>
6/26(木)よる9:30〜
6/29(日)午後0:00〜
もちろん、これら再放送も無料放送(BS放送をご覧になられる方はどなたでもその時間にBS9にチャンネルをあわせるとご視聴頂けます)です。
どちらも冒頭25分には羽住監督編集によるSeason1ダイジェストがついています。
録画視聴も含めてまだこれから、という方もいらっしゃると思いますので、今はまだ内容にはあまり触れませんが…Season1とはまた違った雰囲気を感じた方も多いのではないでしょうか。あの壮絶な空港の事件から半年たって、倉木(西島秀俊)、大杉(香川照之)、美希(真木よう子)、それぞれ、少しずつ内面に変化があったようです。そのあたりもSeason2の魅力ですね。
そして、Season1から引き続き登場する東(長谷川博己)、鳴宮(伊藤淳史)。また新谷らしき男(池松壮亮)。新たに登場した名波汐里(蒼井優)、池沢清春(佐野史郎)。今後、物語は個性豊かなキャラクターたちが縦横無尽に躍動することで国際的な広がりを見せていきます。
そして、倉木が追う「空白の72時間」、失踪している美希の父の謎・・
驚くべきアクションの数々に加え、登場人物たちの熱い人間ドラマにも、ぜひ、ご期待ください。
WOWOWプロデューサー・井上衛
初めまして、アシスタントプロデューサーの國枝です。
「MOZU Season2 〜幻の翼〜」第3話までご覧いただいた皆様、どうもありがとうございます!もし、見逃してしまった、という方には再放送もございますのでご安心ください!
<第3話再放送 WOWOWプライム>
7/10(木)よる10:00〜
7/13(日)午後0:00〜
さて、今回はAPである私の視点から「羽住組」について書かせていただこうと思います。
私は「MOZU」で羽住組初参戦。8か月間、この組の現場を見ていて、他のチームとは一味ちがった面をいくつかご紹介したいと思います。
まず一つは「ニックネーム」。この組にはニックネームがついているスタッフが非常に多い!とくに若手はほぼ全員ニックネームで呼ばれています。
一例をあげると「ドリル」「さかなくん」「チョイさん」「ピーター」「アクセル」「ばりちょう」…。中には紹介するのがはばかられるニックネームが付いているスタッフも(笑)。羽住監督直々に名付け親になることもあるようですが、どんな由来で誰が名付けたかがわからないものがほとんどです。
それにしても、ニックネームを付けられる、ということは愛情のある証。キャストの皆さんも親しみを込めてスタッフをニックネームで呼びます。ニックネームだと、ついつい呼びたくなっちゃうし、初対面でもニックネームの由来なんかを聞いているうちに打ち解けちゃうという寸法です。本名で呼ぶよりも、はるかに短い期間で信頼関係を築けるわけです。これも羽住組の結束力を高める要因の一つかもしれません。ただ、難点は本名がわからないこと。いまだに実名がわからない方多数です(すいません)…。
そして「全力投球」。撮影が始まった当初、駐車場から車が出ていく、というシーンの撮影現場で、開いた口がふさがりませんでした。台本には3行しか描かれていないシーンであるのにも関わらず、カーアクションばりの迫力で何台もの車がぎゅるるるっと猛烈な勢いで発進していくではないですか…!
しかし、驚いているのは私だけ。スタッフにとってはいつもの撮影風景なのです。アクションシーンはもちろんですが、雨のシーンで降らす雨も、雪のシーンで飛ばす吹雪も、やんわり、ということはありません。いつもすごい!常に全力投球!毎回私は驚き、興奮するのですが、いい意味でみんな麻痺している(笑)。スタッフはみな、冷静に仕事をこなすのでした。
連続ドラマとしては異例の長い撮影期間中、スタッフは全員、相当な苦労があったと思います。それでも現場では、ニックネームで呼び合い冗談を飛ばし、現場を盛り上げ、いい雰囲気のなかで撮影を続ける。中々簡単にできることではありません。これが出来る羽住組だからこそ、一人一人が全力で作品作りに夢中になれるのだと感じました。
偉大なる撮影バカ集団、羽住組。参加させていただいて本当に感謝です。
ですが!一つだけ心残りが。ニックネームを付けてもらえなかったのです!もう若手ではないからでしょうか…。いや、きっと人間としてそのレベルに到達してなかったのでしょう…。また羽住組に参加させていただき、素敵なニックネームを授けてもらえることを夢見て、精進します!
WOWOWアシスタントプロデューサー・國枝
「MOZU Season2」、ついに、残すは最終話のみとなりました。
ということは、「Season1」から続いてきた全15話の壮大なストーリーがついにフィナーレを迎えるわけですね。
そうなのか、と改めてしみじみ…
あの謎はどうなるのか、あの人はどこに行くのか、そして、そもそもこの「MOZU」とは一体何だったのか。皆様、色々とどうか楽しみにお待ちください。
そして、手厚いフォローこそがWOWOWの真骨頂。
最終話がオンエアされる7/20(日)午前9:00から、Season2の第1話〜第4話の一挙放送があります。(詳しい放送時間はこちら >>)
まだ未見の方は、ぜひこれから「MOZU」ワールドへ。
これまでご覧下さった皆様も20日は朝から「MOZU Season2」一色の一日に!
あれやこれやをもう一度観てから、よる10:00スタートの最終話に臨んで頂ければ!!
Season1の放送が始まったのが4月。
撮影は昨年9月から。
企画が動き始めたのはそのもっともっと前で…
と遡って考えていくと、長かった、というよりは、ほっとした、よくぞここまでたどり着いたな、という思いです。
ここまで応援して下さった皆様、本当に本当にどうもありがとうございます。
最終話オンエアを前に、正直一抹の寂しさもありますが、「MOZU」というブランドは、これからも大切にして行こうと思っています。
とりあえずこの「制作日記」はまだ続きます。来週あたりも更新予定。
新たな情報発信にもどうぞご期待ください。
WOWOWプロデューサー・井上衛
「MOZU Season2」最終話の初回オンエアが終了いたしました。
ご覧頂いた皆様、本当にどうもありがとうございました。
未見の方もいらっしゃると思いますので詳しくは書きませんが、最後の倉木の表情、素敵でした。あのシーンの撮影が行われたのは実は西島秀俊さんクランクアップの日。昨年9月から今年の5月まで続いた長い長い撮影の本当に最後の日だったのです。
あの夜。
今、ここにいるのは西島秀俊なのか、それとも倉木尚武なのか。
そして、自分たちがいるのは撮影現場なのか、ダルマか何かに幻惑されて引きずり込まれた異世界なのか。
自分も含めスタッフ、キャスト全員がその瞬間、「MOZU」の世界に完全に溶け込んでいたと思います。不思議で高貴な空気が生み出したまさしく最高の「ラストシーン」でした。
さて、最終話終了後に情報公開いたしましたが、WOWOWでは、TBS系列で4月からオンエアされた「MOZU Season1 〜百舌の叫ぶ夜〜」全10話を8月に一挙放送いたします。(詳しくはこちら >>)
<「MOZU Season1 〜百舌の叫ぶ夜〜」一挙放送>
8/16(土)午後3時30分〜 第1話〜第3話
8/23(土)午後3時30分〜 第4話〜第6話
8/30(土)午後3時30分〜 第7話〜第10話
Season2には登場しなかった、室井(生瀬勝久)、中神(吉田鋼太郎)、葵美(有村架純)たちに、WOWOWでも会えるわけですね。
しかも、WOWOWならではの「CMなし」の放送です。息つく間もない時間をぜひご堪能ください。
また、9/6(土)にはSeason2も改めて全話一挙に放送。
「MOZU」の興奮、まだまだ羽ばたいていきますよ。
また、同じ日曜10時の連続ドラマW枠では来週(7/27)から「東野圭吾 変身」がスタートします。またがらりと雰囲気の変わった神木隆之介、二階堂ふみという若い二人が出演する切ない医療サスペンスにもぜひご期待ください。
WOWOWプロデューサー・井上衛