#9 眠れぬ森の男たち Pins and Needles
エヴァンは対立候補エドウィナ・ボウマンとの討論会の準備に入る。そのさなか討論会の主催者アリーを見かけ、彼女が頭痛に悩まされているのを知る。
アリーは、彼のすすめでディヴィヤの診察を受けるが大きな問題は見つからない。だがディヴィヤは、討論会が近づくにつれアリーのツイートが意味不明な内容になっていると気づく。当初、彼女のツイートはタイプミスが目立った。しかし討論会当日には、もはや解読不能な状態となっている。このことからハンクとディヴィヤはアリーの脳卒中の可能性を見抜き、彼女をハンプトンズ記念病院へ搬送する。このため討論会は中止となり、議論を有利に進めていたエヴァンは落胆する。またペイジは屋敷の片付けで会場に着くのが遅れ、エヴァンの応援に間に合わない。
同じ頃、ハンクとジェレマイアはハンプトンズ記念病院に出入りする生花店のフェリックスを治療する。彼は配達中、誤ってサボテンを掴んでしまい、その拍子に転んでしまったのだ。また彼には子供の頃から緊張すると笑いが出る癖があった。さらに彼は思春期が早く、ほとんど眠らず、悪夢を見るなど変わった一面があった。
不眠の理由を探るべくハンクたちは睡眠検査を行う。この結果、フェリックスには徐波睡眠がないことを知る。結果を知らせるべく生花店に向かった二人は、フェリックスが店の前の道路でふらついているのを見つける。彼は無意識に花を摘む作業を繰り返していた。
実はフェリックスは「笑い発作」というけいれんの一種を起こしていた。これは生まれつきの症状であり、不眠や悪夢、思春期の早かったことなどは全てけいれん発作に起因していた。フェリックスは自分が変人なのではなく病気だったと知り、人と交流できるかどうかは自分次第なのだと自覚する。そうして彼は、意中の看護師デイジーに得意な花言語学でアプローチする。
一方、ボリスはハンクと一緒に刑務所内の病院で療養中のミロシュを訪ねるが、彼は正気を失っている。そんなミロシュに対し、ボリスはサン・ジェルマン伯爵の話を聞かせる。
またジェレマイアは、ハンクの鎮痛剤使用量が多いことに気づく。そうして摂取量をコントロールしようと提案し、ハンクは不安を覚えながらも受け入れる。
●今回のゲスト
政治ブロガーのアリー役はケイトリン・ダブルデイ。主な出演作は最新作“Mixology”のほか、「イーストエンドの魔女たち」「私はラブ・リーガル」 “Childrens Hospital”など。
生花店のフェリックス役はパッチ・ダラー。TVシリーズ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」「グッド・ワイフ」“Wallflowers”ほかに出演。
彼が恋をする看護師デイジー役はグレタ・リー。TVシリーズ「ナース・ジャッキー」“Inside Amy Schumer” “Bad Management”ほかに出演しています。
●意味不明な打ち間違い
冒頭、エヴァンは注目の政治ブロガー、アリーについて「彼女のツイートには意味不明な打ち間違いがある」と告げます。
「意味不明なツイート」に当たる原文は“pocket tweets”。
俗語辞典によると「携帯電話をロックせずにポケットに入れた結果、誤って送られてしまったツイート」という状況からこの単語が生まれたのだとか。面白いですね!
●レッド・ハット・ソサエティ
エヴァンが潜り込んだレッド・ハット・ソサエティは実在する組織です。
公式サイトによると、組織は人生を楽しむことを目的に、中高年の女性が創設したと言います。
また、赤い帽子がトレードマークとなった背景は次の通り。
ある日、創設メンバーの一人が偶然、手頃な価格の赤い帽子を購入しました。それから約1年後、彼女はひとつの詩に出会います。そこには赤い帽子を被った女性について記されていました。その詩に触発された彼女は、友人の女性に赤い帽子と詩をプレゼント。その習慣が徐々に広まり、組織が創設されたそうです。
●今回の映画ネタ
後半、討論会に臨むエヴァンは、負け犬キャラが人々の心を掴むと気づきます。興奮状態の彼は、さまざまな映画を引き合いに出します。その時の一覧がこちらです。
【ミラクル・オン・アイス】(“Miracle on Ice”)
1980年2月22日に行われた、アメリカ対旧ソ連のホッケーの試合。学生中心のアメリカ・チームに対し、旧ソ連はスター選手をそろえた最強チーム。しかし結果はアメリカチームの勝利。旧ソ連の猛攻をしのいだ様子は「氷上の奇跡」と称えられました。
その後、この奇跡を題材に「ミラクル・オン・アイス(“Miracle on Ice”/1981年・TV映画)」、「ミラクル(“Miracle”/2004年・劇場映画)などの映画が製作されました。
【シービスケット】(“Seabiscuit”)
大恐慌時代のアメリカを舞台に、競走馬「シービスケット」の活躍を描いた感動巨編。2003年の作品です。
主演は、スパイダーマン役で世界的なブレイクを果たしたトビー・マグワイア。第76回アカデミー賞では作品賞ほか、計7部門にノミネートされ、大きな話題となりました。
【鉄ワン・アンダードッグ】(“Underdog”)
こちらは未公開作品です。ビーグル犬のシューシャインは警察犬です。しかし警察犬とは思えないほど、毎日ヘマばかりしています。そんなある日、シューシャインは極秘に作られた薬を浴びてしまい……。家族で楽しめるコメディです。
●印象的な音楽
中盤、レッド・ハット・ソサエティで流れる曲はPaul Lenart & Bill Novickの“Drop me off at 42nd St.B”。
アリーが、レッド・ハット・ソサエティで処置を受ける場面で流れるのはPaul Louis Reevesの“St.Jame's Stomp”。
討論会が中断したことを知らず、ペイジが会場を訪ねるシーンで流れるのはThe Stavesの“Dead & Born & Grown”。
最後、ハンクがジェレマイアから薬を受け取るシーンで流れるのはCity and Colourの“Ladies and Gentlemen”です。