伊藤淳史さん演じる鳴宮啓介が贈る
映像版「ドキュメント・チームMOZU」
W流※にて配信中!
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2013年9月にクランクインした「MOZU」。スタッフ&キャストの7ヶ月に及ぶ奮闘がここから始まった。
チームMOZUのキーマンが語るとっておきの舞台裏エピソードを毎週更新!
――'12年放送の『ダブルフェイス』に続き、西島秀俊さん主演でドラマを撮ることになったいきさつを教えて下さい。
「『ダブルフェイス』が好評だったのを受けて、もう一度TBS×WOWOWの共同制作ドラマをやりませんかという話をもらいました。僕としても、西島さんたちとまた組めるのはうれしかったですね。とにかく『ダブルフェイス』を好きになってくれた人を裏切らない作風のドラマにしようと、プロデューサーたちと話し合いました。それでノアールものの原作を探すうちに、『百舌の叫ぶ夜』と出会ったんです」
――原作は映像化不可能とも言われた逢坂剛氏の小説ですが、あえてそれに挑戦しようと思ったのはなぜなのでしょう?
「原作に最も惹かれたのは、ページをめくる指が止まらないほどのエンターテインメント性。これまで映像化の企画が頓挫してきたことは聞いていたんですが、面白い!という興奮が先立って、難しさは感じませんでした。でも、実際に台本を作り始めると『なるほど。これは難しい』と思い知りましたね(笑)。原作では語り手が入れ替わっていくし、小説ならではのどんでん返しもある。そんな原作のもつハードボイルドな世界観は崩さず、連続ドラマとして成立させるため、脚本は決定稿になるまで何度も何度も練り直しました」
――そんな苦労を経て撮影した「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜」では、どんな点が見どころになりますか?
「ストーリーラインでは、妻の死を追う公安部刑事・倉木(西島)と、彼に接近していく捜査一課の大杉(香川照之)の関係。そして、真木よう子さんが演じるヒロインの美希です。美希は倉木と同じ公安部の刑事で、一筋縄ではいかないかっこいい女性なので、キャスティングするとき真木さんしか頭に浮かびませんでした。真木さんはスタントなしでアクションをこなせるという点でも、西島さんや香川さんに負けていない。そんな最強の3人を中心に、本当に拳が当たっているようなリアルで重量感のあるアクションを見せられると思います」
――「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜」と「MOZU Season2〜幻の翼〜」を合わせて15話。その全話を演出しますが、かなりハードなスケジュールになっていますか?
「そうですね。現在、先に撮影したSeason1を編集して完成させながらSeason2の撮影も行なっているので、物理的な作業としては大変です。羽住組はふだん2、3ヶ月かけて映画を1本撮る。連続ドラマの撮影は初めてですから、大きなチャレンジになりますが、スタッフも僕もこれまでの限界をさらに超えてみたい。そして、『ダブルフェイス』よりもさらにかっこいい西島さんを見せたい。傍から見たら無謀に見えるかもしれませんが、今はスタッフ&キャストのみんなで馬鹿をやれるのを楽しんでいます」
羽住英一郎67年生まれ。映画「海猿 ウミザル」(04年)からシリーズ4作を監督し、記録的ヒットを呼ぶ。「ダブルフェイス」では東京ドラマアウォード2013 単発ドラマ部門でグランプリを獲得
――“操演”というお仕事は、撮影現場でどんな作業を担っているのですか?
「アクション場面で使う火薬類を扱ったり、役者さんをワイヤーで吊り上げて動かしたりします。世の中ではめったに起こらないことを映像化するとき、それをできるかぎりリアルに見せるのが操演の役目なんです。僕はこの仕事を長いことやっていますが、やはり自分が担当した効果がかっこよく映っている場面を見ると、『よし、やった!』という手応えを感じますね。また、リアルな映像を実現させるのと同時に、火薬やワイヤーのプロとしてキャストの安全も確保するのも大事な役割です」
――Season1第1話は、なんと言っても繁華街での爆破シーンが迫力満点です。あの場面ではどんな効果を担当したのでしょうか?
「車が燃えているように見せたり、美希が爆風で吹き飛ばされるところで真木よう子さんを引っ張ったりしました。あの場面は北九州ロケなんですが、実際の街中であんな大規模な爆発現場を撮ったのはドラマ史上初めてじゃないでしょうか。予告編で使われた倉木(西島秀俊)の背後で車がボン!と爆発する映像では、ガスボンベを使って火が吹き出したように見せました。街中なので火の燃え移りにはいつも以上に注意し、煙も現場の外に流れて行かないように細かく計算しながらの作業でしたね」
――羽住英一郎監督と組むのは何度目ですか? また、羽住組の仕事にはどんな楽しさがあるのでしょう?
「羽住監督の作品では『海猿』シリーズ、『ワイルド7』、そして『ダブルフェイス』に参加してきました。監督は常に前作以上を目指す人だから、今回は『ダブルフェイス』を超えなければいけないと思いましたね。求められたのは、これまでのドラマで見たことのないような迫力のある映像。それを達成するのは大変ではあるんですが、操演としても思う存分、腕を活かせるチャンスですし、なぜか羽住監督には『やってあげたい』という気持ちが沸くんですよ。羽住組は本当にチームワークが良くて、撮影がどんなにきつくてもその中にいると楽しいからかな(笑)。いつも最後には、大変さより楽しさの方が大きくなる。そんな現場なんです」
宇田川幸夫スプリーム・エフェクト所属。東映撮影所で操演の仕事を学ぶ。『RED SHADOW 赤影』(01年)、『ローレライ』(05年)、『BALLAD 名もなき恋のうた』(09年)、『永遠の0』(13年)など多くの映画に参加
――映像化不可能といわれた逢坂剛の小説を脚色する上で苦労した点を教えて下さい。
「原作小説を読んで、伏線、登場人物たちの行動する動機、そしてどんでん返しが素晴らしいと思いました。出てくるキャラクター全てが個性的で魅力的なので、どんどん読み進めました。映像化のプレッシャーは感じませんでしたが、単なる犯罪小説ではなかったので、脚本作りにはかなり苦労しました。でも、その苦労すらもとても楽しかったです。最も試行錯誤したのは、謎解きにつながる情報をどの場面でどう出すか、そのカードの切り方です。あとはTVドラマとしてどのぐらいハードボイルド色を出していいのか、そのバランスを考えるのが大変でした」
――羽住英一郎監督と何度も台本を練り直したそうですが、どんなアドバイスを受けたのでしょうか?
「羽住監督からはたくさんのアイデアを頂きました。その中で最も印象的だったのが飛ばし≠フ技術です。情報を説明するためのセリフや段取りのためのシーンをあえて省き、映像など他の方法でさりげなく視聴者に伝えるという、海外ドラマではよく使われている方法ですね。また、この『MOZU』はお客さんに対して丁寧になりすぎないように作りました。観客が100人いれば、普段は100人から70人に伝わるように書きますが、『今回は30人が楽しんでくれる作品でありながら、エンターテインメント性がすごく高いものを作ろう』と、監督と打ち合わせしていましたので、自分としてはかなりの挑戦をしたドラマになりました」
――第2話では倉木と大杉、そして美希の抱える問題が少し明らかになりましたが、キャラクターづくりはどうやっていったのでしょう?また、お気に入りの登場人物を教えてください。
「原作の設定を活かしながら、映像化に適したキャラクター作りをしていきました。特にそれぞれの人物が抱えている問題、トラウマ、一番恐れていること、求めていること、そして目的と行動動機を重視して台本にしていきました。倉木、大杉、美希、百舌…。誰かひとりなんて選べません。すべてお気に入りのキャラクターなんです」
仁志光佑脚本家。「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜」、「MOZU Season2〜幻の翼」のほか、「鍵のかかった部屋」(12年フジテレビ)、「ガリレオ2」(13年フジテレビ)などに参加。
――羽住組の作品には「ダブルフェイス」に続いての参加ですね。今回、「MOZU」の物語を音楽でどのように表現しようと考えましたか?
「このドラマでは、妻の死の真相を追う倉木(西島秀俊)を始め、それぞれの登場人物が強いモチベーションを持って目的に向かっていく。その感情がねじれて、ほとんど狂気のようなものも見えてきますよね。そんな恐ろしい状態にそのまま恐い音楽をつけるというよりは、映像と音楽が合わさったときに物語のテーマがうまくあぶりだされたらいいと思いました。だから、恐ろしい場面で、あえて美しい音楽がかかっても良い。美しく狂うということもあるんじゃないでしょうか。そんなふうに、キャラクターひとりずつ、場面ひとつごとの音楽というよりは、『MOZU』全体の空気感を表現したいと思いました」
――メインテーマは重層感と疾走感があってとても印象的です。このテーマ曲はどのように音を作っていったのでしょうか?
「冒頭のゴーンという音は、お寺の鐘です。お寺の住職さんに頼み込み、実際に鐘を10回ぐらい突いて、録音したものをアレンジしました。鐘の響きには祈りや鎮魂の意味もあるし、人間の欲や業を振り払う意味もある。そこが『MOZU』のサウンドとしてハマったのでよかったと思います。他にもトイピアノのおもちゃっぽい音を入れたり、ピアノも鍵盤ではなく本体を叩いたり中の弦だけを弾いてみたりと、普段はやったことがないアプローチをしながら音のひとつひとつを重ねていきました」
――菅野さんは多くの映像作品を手がけていますが、『MOZU』で新たに挑戦したポイントがありましたら教えて下さい。
「作曲を始める前に撮り終えた映像を見せてもらえたんですが、想像を数段超える素晴らしい仕上がりだったので、音楽でもこれまでにない挑戦をしてみました。"メロディ押し"の菅野としてはかなり振り切ったものになっていると思います。ほとんど音響効果に近いような楽曲で、メロディもメインテーマ以外の曲ではほとんど聴こえてこない。実は、いったん納品した後、振り切りが足りないと思って、もう一度アレンジしなおしたんです。ドラムの音が違うな、とか、たくさんの変わった音を入れてみて…。タイトなスケジュールの中、再アレンジをするというので周りの方を困らせてしまいましたが、最終的には、わがままを言ってよかったと自負できるものになりました。視聴者の皆さんにはドラマ本編とともに音楽もじっくり楽しんでもらいたいですね」
菅野祐悟作曲家。77年生まれ。「ダブルフェイス」(12年)のほか、「SP 警視庁警備部警護課第四係」 (07年フジテレビ)、「ガリレオ」(フジテレビ)シリーズ、「NHK大河ドラマ 軍師官兵衛」(2014年)など、ドラマ・映画の音楽を多数手がけている。
出演情報
ノンフィクションW 映像と共にある音楽
〜劇伴作曲家・菅野祐悟 「MOZU」にかけた魔法〜
5/16(金)よる10:00
――古屋さんは“制作担当”と呼ばれる立場ですが、具体的にはどんな仕事をしているのですか?
古屋「制作部という仕事は、毎日の撮影スケジュールを組み、現場までの地図を作って、食事を用意する。さらに、現場で役者さんたちが座るイスや毛布、寒いときはストーブ、暑い場所では扇風機やクーラーなどもそろえて、みんなが快適に滞りなく撮影を進められるようにサポートしています。僕の"制作担当"というポジションは、その制作部スタッフ全体を取りまとめるのが仕事です。『MOZU』の場合、制作スタッフは通常の倍の10人ほど。ロケ場所を探す"ロケハン"も重要な仕事のひとつですから、撮影が休みの日でも制作部だけはロケハンに動いているなんてことも多いですね。仕事としてはハードなんですが、羽住英一郎監督は『この場所はどうですか』というアイデアはちゃんと聞いてくれるので、やりがいはあります。まぁ、採用されないアイデアの方が多いのですが(笑)」
――天野さんは古屋さんの下で“制作主任”をしていて、今回はお弁当担当も兼任しているそうですが、チームMOZUは大人数だから、食事の手配も大変じゃないですか?
天野「多いときは70人近くいますからね。撮影が始まると、あちこちにいるスタッフから無線を通して『今日のメシはなんだ』と聞かれるんです(笑)。全員の好みに合う食事を用意するのは難しいけれど、いつも心がけているのは『ガッツリ温かいもの』を出すこと。『MOZU』では真冬も撮影が続いたので、お弁当だけではなく、できるだけ給食形式のケータリングで温かい食べ物を用意しました。北九州ロケのときは、“小倉焼うどん研究所”という町おこしグループが、ご好意で、焼うどんを振る舞ってくださったんです。ロケ現場に鉄板を持ち込んで、夜食として作ってくれて、それはもうキャスト、スタッフとも大喜びでみんな笑顔になりました」
古屋「あのときは、うどんをジュージューと焼く良いにおいがしていました(笑)。日々、現場で作業に追われるスタッフにとっては、食べるときが貴重な休息時間なので、予算を気にしながらも、なるべくおいしいものを出そうと心がけています」
古屋厚制作担当。ロボット映画部に所属し、『BRAVE HEARTS 海猿』(12年)、「ダブルフェイス」など羽住監督作品でライン・プロデューサーを務める。
天野佑亮制作主任。4年前から羽住組に参加。「ワイルド7」(2011年)、「ダブルフェイス」などに参加。
――北九州フィルム・コミッション(FC)は、国内で最も歴史あるFCとして知られていますね。日々谷さんはどんな仕事をしているのか教えてください。
「北九州フィルム・コミッションは平成元年からドラマや映画などの撮影を積極的に誘致してきました。私たちFCのスタッフは、撮影場所を探し許可を取ったりエキストラを集めたりして、撮影チームを全面的にサポートしています。例えば、『MOZU』のデパート前での爆破シーンは、我々が小倉井筒屋周辺でやりたいと考え、覚悟を決めて井筒屋さんと交渉した結果、協力をいただけるようになり実現しました。また、井筒屋周辺は商店が密集しているところなので、その全店に合意していただいて、公道もあるので道路使用許可を取るなど、警察との協議も必要でしたね。この作業に1ヶ月ぐらいかかりましたが、北九州にはこれまでさんざん派手な撮影をやってきた積み重ねがあるので、スムーズに進められました」
――羽住英一郎監督はこれまで「海猿」シリーズなど、たびたび北九州で撮影していますね。
「羽住監督とはこの『MOZU』で7回目の仕事になるので、私も、もうすっかり羽住組の一員のつもりでいますよ(笑)。同じように北九州市民にも『羽住監督のためなら』という心意気があって、今回も2400人という最多規模のエキストラが参加してくれました。北九州ロケは約1ヶ月間でしたが、撮影した場所は30箇所以上。毎日がお祭り騒ぎの1ヶ月でしたね」
――第5話で格闘アクションが展開したアーケード街は、どこですか?
「倉木たちと中神が戦ったところは、小倉の魚町銀天街・京町銀天街です。このアーケードの上でのアクションなんて全く考えつかなかったのですが、ロケハンの最中、アーケードを見た羽住監督が突然『あの上、面白そうだね』と言われたので、急きょ屋上に登ってみたら、この仕事13年目の私も見たことのない、香港映画のような風景が広がっていました。ここでの場面は予想以上にかっこいい映像に仕上がって、監督にも『北九州もまだまだ撮れる場所があるねぇ』と喜んでもらえました」
――北九州では、大規模なアクションを撮影できるのが魅力ですが、日々谷さんたちのご苦労も多いのでは?
「私はこれまで、羽住監督からどんなリクエストをされても『それはできません』と言ったことがないんですよ。どんなに不可能に思える撮影でも、いろんなところに根回しをして、条件をひとつずつクリアしていけば、実現できる。私たちがそんな根気のいる作業をやるからこそ、撮影場所に北九州を選んでもらえるんだと思っています。最近ではもう、羽住監督も『北九州ならできないことはない』と思っているんじゃないかな(笑)」
日々谷健司67年生まれ。89年に北九州市役所に入庁し、総務局勤務などを経て00年、北九州フィルム・コミッションに配属。羽住監督の『おっぱいバレー』(2009年)、『ワイルド7』(2011年)、「海猿」シリーズ、など多くの作品に協力
――映像へのこだわりが強いチームMOZUですが、実際にはどうやって撮影方法を決めているんでしょうか。
江崎「羽住英一郎監督にはどんな映像を撮りたいかというビジョンは明確にあって、コンテ(カット割り)も配られるので、それを基に撮影プランを考えます。でも、僕たち、撮影と照明は、実際に現場に行き、役者さんがそこで動くのを見てからじゃないと撮り方を決められない。天気などの影響もあって、プラン通りというよりはむしろ現場でプランを変更することの方が多いですね」
三善「そうですね。現場でどうするかというチョイスは、江崎さんとも羽住監督とも通じあっていて、これまで何作品も一緒に撮ってきた羽住組ならではの“ノリ”としか言いようのない感覚があります」
――具体的にはどんな機材をどんな手法で使っていますか?
江崎「今回、使ったカメラはアレクサというデジタルカメラで、『ダブルフェイス』でも採用したものです。映画のフィルムのような質感の映像が撮れますね。そのカメラをクレーンに載せて立体的に撮ったり、ステディカムというブレを防止する機材に着けて歩きながら回したりしました」
三善「特殊な機材はありませんが、僕はミラーボールフリークなので、屋外でミラーボールを光らせて照明にすることも(笑)。また、第1話の爆破シーンでは10階以上あるビルの屋上から地上を照らしてみました。どんなライトも当てられるように、現場にはいつも照明機材を3トントラックひとつ分持ち運んでいます」
――羽住組にとって初めての連続ドラマ。そして当然、撮影と照明は休む場面がないわけですが、かなりハードな撮影になりましたか?
江崎「そうですねクランクインから8ヶ月経ち、これまで3ヶ月で映画1本を撮ってきたペースの倍以上、撮影を続けているわけです。さすがに体力的には限界を超えました(笑)」
三善「僕も同じです。でも、とにかく役者さんたちの演技がすごい!彼らが頑張っていると、僕たちスタッフも負けていられない。第6話、廃病院で新谷(池松壮亮)と中神(吉田剛太郎)が対決する場面は、池松くんの熱演を見て、こちらもかなり燃えました」
江崎「あの場面は必見ですね。僕はカメラを回しながらキャストの演技を一番近くで見ているので、良い演技を目の当たりにすれば、よりかっこよく映したいと思います。主演の西島秀俊さんも本番はもちろん、カメラや照明の準備中もずっと現場に立っていてくれて、こちらが恐縮しちゃうぐらい。西島さんも含め、今の羽住組には大変な撮影を面白がれる人だけが集まっているのかもしれないですね(笑)」
江崎朋生カメラマン。『ワイルド7』 (11年)、『BRAVE HEARTS 海猿』(12年)で羽住監督と組む。
三善章誉照明。『ワイルド7』 (11年)、『BRAVE HEARTS 海猿』(12年)のほか、『サンブンノイチ』(14年)などの照明も担当
――装飾という仕事は撮影チームの中でどんな役割を担っているのでしょうか?
「僕たち装飾は美術セットの飾り付けを担当しています。具体的には家具や電子機器、書類、写真、電飾といったアイテムを用意して飾る仕事ですね。作品の物語設定に沿って、大げさに言えば目に入る全てのものをそろえます。『MOZU』は特に用意するアイテムの数が半端じゃない。羽住英一郎監督はロケ場所にも必ず何かを付け加えようとするので、そのための加工に追われました。現場で急にアイテムが増えたり、数が足りなかったりということもしょっちゅう。でも、撮影はいわゆる“ナマモノ”ですから仕方ないですね(笑)。作業はたいへんですが、こんな飾りまくる作品もあまりないので、装飾冥利に尽きます」
――特に、鳴宮(伊藤淳史)の部屋には、たくさんの飾り付けがしてありますね。
「下町の交番の奥に実は鳴宮の部屋があって、そこに全ての機密情報が集まっているというギャップの面白さを出したかったんです。この場所だけは怖い出来事が起こらず、視聴者の皆さんも落ち着いて見られるのではないかと思って、ロボットの人形を置いてみたり、蛍光ネオンを光らせたり、缶ジュースのパッケージを自作したりと、このセットではかなり楽しく遊ばせてもらいました」
※鳴宮(伊藤淳史さん)の部屋のセットは、
映像版「ドキュメント・チームMOZU」(W流)で詳しくご覧頂けます。
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――第5話から第7話まで登場した廃病院は北九州市の古い八幡西区役所で撮影していますが、どんなものを用意したのでしょうか?
「ここでの撮影は最も過酷でした。廃病院に見立てた撮影現場に、実際に廃業した病院からベッドなどの中身を運んだんです。4トントラックで15台分を運んで、まるで引っ越し大会でした(笑)。しかも、現場の旧役所はエレベーターが動かず、大量の荷物を階段で運ばなきゃならないという…。北九州のボランティアの人たちが手伝ってくれなければ、とてもセッティングできませんでしたね。そんな苦労はあったけれど、やっぱりどんなに凝ったセットも実在の建物で撮ったリアリティには敵わない。撮影した区役所は取り壊しが決まっていたので、壁などを思う存分ボロボロにできたのはラッキーでした。そこで新谷(池松壮亮)が拷問を受け吊るされる鎖も用意したのですが、危険な雰囲気が出せて、このドラマを象徴する場面になったと思います」
小山大次郎1979年生まれ。京映アーツ所属。『BRAVE HEARTS 海猿』(12年)、「ダブルフェイス」で羽住英一郎監督と組む。近作に『魔女の宅急便』がある
――『MOZU』には森井さんを含め3人のプロデューサーが名を連ねていますが、どのような仕事をしているのでしょうか。
「TBSの渡辺信也プロデューサー、WOWOWの井上衛プロデューサー、そして制作会社ROBOTの僕という3人で製作をしています。羽住英一郎監督も含め、2年前の『ダブルフェイス』と同じメンバーですね。僕は現場に一番近い立場で、企画の立案やキャスティングから、撮影スケジュール、予算まで全体を見ています。僕たち、羽住組はこれまで映画を作ってきましたが、映像の仕事に就いたのは『人を夢中にさせたい』というシンプルな思いから。今回は連続ドラマで、第1話から伏線を張り巡らせ、見る人の予想を裏切りながらクライマックスまで連れていくようなものを作ろうと、みんなで話をしました」
――伏線といえば、第8話では、倉木(西島秀俊)の上司である室井(生瀬勝久)について、意外な真相が明かされましたね。
「主人公の上司が実は……というどんでん返しはわりとあるパターンなんですね。でも、生瀬さんご本人の持っているイメージと演技力で、視聴者に室井は怪しまれないで済むと思っていました。そうしておいて、後半で予想を裏切り、『こんなことを考えていたなんて!』と驚かせたかったんです」
――第8話の西島さんの演技で印象に残っている場面はどこですか?
「倉木が室井を取り調べるシーンは、思わず息を止めてモニターに見入ってしまうほどの迫力でした。西島さんは第2話の撮影で指を脱臼してしまって、まだそれが痛い頃だったはずなのに、躊躇なく机を強く叩く芝居をしていました。さすが西島秀俊とでも言うべき演技で、“役者の本気”を久々に目の当たりにしました。現場に行くといつも思うんですが、この『MOZU』という作品は、これだけの長期間、ハードな要求に全力で応えつづけてくれる西島さんでしか成り立たちませんでした。やっぱりオンリーワンの役者さんですね」
――大杉役、香川照之さんのとっておきエピソードはありますか?
「香川さんは現場のムードメーカーで、現場の雰囲気でスタッフやエキストラさんにも声をかけてくれます。第1話の放送前日、ウチはみんな映画のスタッフなので翌日のオンエアに緊張気味でした。そんな中、夜中まで仕事をしていたんですが、香川さんが僕のところにきて、『皆に演説したい!』と言ってきてくれました(笑)。そして撮影終了後、スタッフを集めてこう言ってくれました。『身を削って作ったこのドラマの結果が、期待していた結果と違ったとしても、落ち込まないで欲しい。この撮影のやり方、今のこだわり方で、創れたドラマはかつて無い。皆でこんなすごいドラマを作った。これだけの作品は他のどのチームにも作れない。それだけでもう勝っている。結果はどうあれ、作り方は変えずに最後の最後まで通そう。』と熱く語ってくれたんです。気持ちの入った言葉に感動して泣いているスタッフもいましたし、僕としても忘れられない瞬間になりましたね」
――あと2話(第10話)でSeason1はいよいよ最終回となりますが、今後の展開はどうなりますか?
「Season1の最終話では映画のクライマックスに相当する大掛かりなアクションを用意していますし、倉木や“百舌(モズ)”も命を賭けて激しいバトルを繰り広げます。そして、WOWOWで放送するSeason2では、Season1で語れなかった物語が新たに始まります。季節も変わって、真っ白い雪景色の中を倉木たちおなじみのキャラクターたちが動いていく映像は、またひと味違う見応えがあると思いますよ」
森井 輝ROBOT所属。映画『海猿』シリーズ(12年)、『ワイルド7』(11年)などで羽住英一郎監督と組む。
――野呂さんは日本屈指の技術をもつカースタントマンですが、いつ頃この仕事を始めたのですか?
「僕はもともとバイクのモトクロスをやっていて、16歳のときにスタントの仕事を始めたんです。今55歳なので、かれこれスタント歴40年ぐらいになるのかなぁ。80年代には『西部警察』や『あぶない刑事』などに参加して、東京の都心で車をジャンプさせるようなカーアクションをガンガンやっていました(笑)。今なら考えられないことですね。現在は撮影する場所がどうしても限られてしまうんですが、そんな中でも羽住英一郎監督の作品はいっさい妥協をしないので、やっていて楽しいです」
――羽住監督とは何回目の仕事になりますか? また今回、監督から何かリクエストされましたか?
「羽住監督と組んだのは『MOZU』で3回目ですね。スタントの仕事は安全第一なので、自分のテクニックで絶対大丈夫というラインを守って車を走らせます。それを100%だとすると、通常の作品は60%ぐらいの力でやるところを、羽住監督と初めて組んだ『ワイルド7』では70%、次の『ダブルフェイス』では80%というように、どんどん監督の求めるハードルが上がっていって、『MOZU』ではついに90%まで出すことになりました。例えば、第3話では倉木が乗ったタクシーにぶつかる中神の車を運転したんですが、監督から『全開でやって』と言ってもらえたので、かなりスピード感のあるアクションができました」
――いよいよ来週、第10話で最終回ですが、カーアクションの見どころを教えて下さい。
「最終話はなんと言っても、倉木の乗った車がトンネルを通る場面。ここはSeason1でも最も派手なカーアクションを組んだところです。代役が効かないので、僕自身が倉木と同乗する公安警察官の役になって運転し、ちょっと顔を出しています(笑)。トンネル内の歩道に乗り上げていたところからジャンプして車道に戻るんですが、監督が『ぶっ飛んでもいいよ』と言うので、思い切って車をジャンプ台から跳ね上げました。あんまり高く飛んだので、見ていたスタッフたちがトンネルの天井に当たるんじゃないかと心配したぐらい。もちろん安全な範囲内でのアクションではあるんですが、着地の衝撃でリアシャフトが壊れて、車は使い物にならなくなってしまいました。今どきそんな限界ギリギリのカーアクションは見られませんから、ぜひ皆さんに注目して見てほしいですね」
野呂真治スーパードライバーズ所属。『SP THE MOTION PICTURE野望篇/革命篇』(10・11年)、『ワイルド7』(11年)などでカースタントを担当。『藁の楯』(13年)でジャパン・アクション・アワード2014を受賞。
――ついにSeason1が最終回を迎えました。倉木たちが空港での爆弾テロを阻止しようとするクライマックスの場面は、どうやって撮影したのでしょうか?
「あの場面では、北九州の小倉競馬場を丸ごと借していただいて、空港に見立てて撮りました。空港が爆破されそうになって、多くの人が逃げ惑う中、倉木だけが逆走してくるという画が撮りたかったんです。いわゆるモブ(群衆)シーンはエキストラがいかに本気を出してくれるかにかかっているんですが、さすがに北九州のボランティアエキストラの皆さんは分かっていて、がんがん倉木役の西島秀俊さんにぶつかってくれました。その熱演のおかげで思い描いたとおりの迫力ある映像が撮れましたね」
――空港のシーンは原作小説にはないオリジナルの展開でしたね。
「原作のラストは、病院に倉木をはじめ警察の面々が集まって、そこに“百舌(モズ)”も来て謎が明かされるという場面だったんですが、そのまま映像にすると動きがなく、連続ドラマのクライマックスとしては理屈っぽくなってしまうと思ったんですね。だから、第8話の段階で謎を解き明かしておいて、最終話はセリフがなくてもいいぐらい、アクション中心にしようと思いました。これから何が起きるかはもう分かっていて、後は倉木たちがどう動くかということだけ。見ている人が右脳しか使わないような回にしたいと思ったんですが、いかがだったでしょうか?」
――そもそもラストシーンから逆算してシナリオを作っていたということですか?
「そうです。クランクイン前、全体の構成を考えているときからこのクライマックスが目に浮かんで、それをやりたいがために、最終回から逆算して第1話からの流れを考えていきました。それぞれ第1話、第2話…と伏線を張り巡らして。例えば、第1話で新谷和彦が崖から突き落とされるとき、車のトランクから何かが飛び出しますよね。あれが実は弟の宏美だったんですが、それは第6話になるまで分かりません。そういうよく見ていないと気づかない謎かけというのが、テレビドラマとしてありなのかチャレンジしてみたんですが、視聴者の皆さんは意外に細かいところまでチェックしてくださって、それが今回うれしい発見となりました」
――Season1で解決された謎と残された謎がありますが、WOWOWで放送されるSeason2で未解決の謎が明かされますか?
「Season1で倉木の妻、千尋(石田ゆり子)が爆弾事件にどう関わっていたかは分かりましたが、公安の極秘潜入任務であった“グラークα作戦”の遂行中、千尋だけが生きて帰って来るまでの“空白の72時間”に何があったのか。Season2の倉木はそれを知るために、また突っ走っていきます。“グラークα作戦”は原作にはないオリジナルの設定ですが、もうひとつ“だるま”の謎も残されていますね。その真相も明かされるのかというところを楽しみにしてもらえればと思います」
――Season2ではどんな新しい映像が見られますか?
「Season2のビジュアルを考えたとき、ぱっとひらめいたイメージが雪景色だったんです。Season1が終わると、急に舞台が切り替わって雪景色が広がっている。物語を決める前にまず、第2幕は雪だということを決めていました。そこから雪国で倉木たちに何をさせようかと考えながら、原作小説の『幻の翼』をアレンジしていきました。Season1を見てくれた人の目には、単純に倉木たちがコートを着ているというだけでも、新鮮に写るんじゃないかと思います。でも、例えSeason1を見ていなくても楽しめる物語になっていますし、Season2を見てからまたSeason1を見直すと、いろいろ発見があると思いますよ」
――Season1、2を通し、キャストの中でキーパーソンとなるのは誰ですか?
「百舌こと新谷兄弟を演じた池松壮亮くんですね。彼は本当に素晴らしい役者で、森井輝プロデューサーも『僕が出会ったキャストの中で最高の宝だ』と絶賛しています。今となっては、百舌役は彼以外に考えられないですね。倉木役の西島さんは常に全力投球してくれる俳優さんですが、百舌はそれに対抗する存在だから、並外れた熱量を持って演じなければならない。その役割をきっちり果たしているのがすごいと思います。池松くんはもともと運動神経が良いからアクションの勘もあるし、佇まいが絵になるので撮っていてすごく楽しい。あの女装姿も暗いところで見たら、けっこうかわいかったでしょう?(笑) 今回、顔合わせしたときから、彼が内に秘めたものを感じていましたが、撮影を始めてみると、その演技は期待以上でしたSeason2でも池松くんはかなりハードなアクションをやり遂げてくれたので、ぜひ注目して見てほしいですね」
――いよいよSeason2へ。長期間のドラマ制作が続いていますが、監督が倒れたりしないか心配です。
「僕は大丈夫ですよ(笑)。さすがに、Season2は撮影しながら脚本を作り、新たに考えなきゃいけない要素も多いので大変ではあります。朝から夜まで撮影し、その後、脚本家の仁志光佑さんとやりとりするという毎日で……。最終話(第5話)まで仕上がったら、自分がどうなっちゃうんだろうとは思いますね。脚本やロケハンの段階から考えると、もう1年以上ずっとこの作品のことを考えてきて、自宅のちょっとした片付けもできないぐらい撮影に集中してきました。全てが終わったらひどい“MOZUロス”に陥ってしまいそうだなぁ(笑)」
羽住英一郎67年生まれ。映画「海猿 ウミザル」(04年)からシリーズ4作を監督し、記録的ヒットを呼ぶ。「ダブルフェイス」では東京ドラマアウォード2013 単発ドラマ部門でグランプリを獲得。
――いよいよ6/22からWOWOWでSeason2が始まりますが、西島さん演じる倉木、香川さん演じる大杉、真木さん演じる美希はどう動いていきますか?
西島「Season2の倉木はよりいっそう強く、亡き妻を追い求めていきます。Season1では、『爆弾事件で妻が死んだのは偶然なのか、それとも何かの陰謀に巻き込まれたのか』という謎を解いていきましたが、Season2ではさらに過去に遡って『“グラークα作戦”に参加したとき、妻に何が起きたのか』という謎を掘り起こしていく」
香川「それが国家的な陰謀につながっていくんですよね。事件の真相が深すぎて、大杉は倉木についていくのに必死という感じです。警察がすべてを隠蔽していく中で、倉木はその闇を切り裂く“星”となれるのか?だが、大杉にとって倉木という星はどんどん遠くに離れていってしまう…。そして、大杉が倉木に銃を向ける場面もあります」
真木「Season1の半年後の物語なんですが、美希は倉木に久しぶりに会えて、実は内心キュンキュンしているんです(笑)。そういう場面がSeason1より多くて、恋心と呼べるほど確定的なものではないけど、美希は倉木によりひかれていきますね。それからSeason1では明かされなかった、美希の父親の過去も分かってきます」
西島「美希が父親と思われる人物に対面するシーンは、せつないよね。見ていて、胸が痛くなるぐらいだった」
真木「美希はずっと父を捜していたんですもんね」
香川「物語がそこまで進むと、Season1でどうして美希はああゆう行動を取ったのか、納得がいくんじゃないかな。倉木と美希は自分たちの家族の過去を背負いながら、公安の暗部ともつながっているわけだから、辛いですよね」
――福島県・裏磐梯でロケ撮影した雪景色の映像も見どころですね。ロケで苦労したのはどんなことですか?
西島「もちろん寒かったことです。既に雪が降っているというのに、スタッフたちは扇風機を回してさらに雪を舞わせて、雪の粒が顔に当って痛いぐらいでした(笑)」
真木「吹雪の中、持っている地図も風でバタバタあおられちゃうし、雪が目にも入っちゃうし、セリフも言えなくなるし(笑)」
西島「僕たち、あの場面は、ほとんど雪に埋もれながら演じていたもんね」
真木「でも、待ち時間にはスノーモービルを運転させてもらったんです。そんな楽しいこともありました」
香川「僕はそのロケに参加していないんですが、撮影した映像を見て、極寒の凍てつく感じが第2章としてピッタリだなと。倉木たちの心が荒んだ状態で物語が進んでいくのが、Season2なんだと思いました」
――Season2ではアクションもさらにハードなものになりますね。
香川「この羽住組は『一番きついことが一番美しいことだ』という方程式を地でいっているから。僕なんか、現場入って初めて「足、燃えますから」と知らされて、『誰かが吹き替えてくれるんじゃないのか?』って戸惑いながら、足に火を点けられましたから(笑)」(Season1最終回)
西島・真木「あははは(爆笑)」
香川「それにしたって僕と西島さんは男だからいいけど、真木さんは大変だろうと思ったら、この細い身体のどこにそれだけのパワーがあるのかというぐらいタフ。フィジカルもメンタルも強くて、その強さが美希という役に通じているから、まさにベスト・キャスティング。」
西島「たしかに真木さんは強い。現場でも生傷が絶えないから、『血が出ているけど、大丈夫ですか?』って聞くんですが、いつも冷静で…」
真木「西島さん、優しいから聞いてくれますよね」
西島「もちろん現場スタッフは危険がないようにケアしてくれるけど、アクションひとつとってもこの組の要求は高いじゃないですか」
真木「そうですね。私はやっぱりアクションが好きなので、ちょっと血がにじんだりする程度なら、全然平気なんです。それは西島さんも同じじゃないですか?」
西島「僕も痛いの、好きだから(笑)。骨にヒビが入るぐらいは最初から覚悟していますね。むしろ、今回は指1本の脱臼だけで済んでよかった」
香川「ふたりとも普通ならストップって言うところを止めないからだよ。でも、だからこそ、この羽住組に合っているんだと思います」
――長い期間いっしょに撮影をしてきて、今はお互いのことをどう見ていますか?
真木「香川さんも相当タフな人なんです。一時期は『MOZU』の撮影と歌舞伎の公演が重なっちゃって、本当に大変そうで…。北九州でロケをして翌日も引き続き撮影があるときにもいったん帰京していましたよね」
香川「去年の秋ごろね。あれは我ながらよく乗り切ったと思う(笑)。でもね、劇中の大杉たちもかなり大変な状況なわけじゃない? だから、自分自身も大変だとその日常そのものが役作りになる」
西島「香川さんはもう超えちゃっていますけどね、大杉を(笑)」
香川「西島さんこそ、過酷な撮影でも楽しむようになってきている。昔は現場でもうちょっとアンニュイな感じだったけれど、今は楽しくてしょうがないという感じ」
真木「私も西島さんを見ていてそう感じました。『俺、ストレス全然ないもん』って言っていましたよね」
西島「役者として仕事ができていれば、基本的にストレスはないんですけどね。やっぱりこの羽住組はひときわ楽しい。スタッフひとりひとりが本当にすばらしいから、この組の一員でいることが誇らしいです」
――他のキャストとの共演で印象に残っていることを教えてください
西島「やっぱり、新谷役の池松壮亮くんはすごい。彼にとってはずっと過酷な撮影が続いていると思うんですが、パワーがまったく落ちない」
香川「彼もまた百舌(モズ)という役にピッタリだったね。ちょっと守ってあげたくなるような佇まいでありつつ、実はとても強いという二面性も出せていて」
西島「池松くんは確実に香川さんから影響を受けていますよ。アクションやっていると止められない。押さえつけるときも本気でやらないと無理ですもん」
香川「そして、こっちが押さえ込んでいるときに、勝手に頭をガンガン床に打ち付けるから」
西島「僕たちはそんなひどいことしてないのに。まるでこちらが必要以上に痛めつけているみたい(笑)」
真木「私は今のところ共演シーンがないんですが、ジャーナリストの汐里役の蒼井優さん(Season2から登場)もすごい演技をされているみたいですね」
西島「いやぁ正直、蒼井さんには飲まれてしまいます。僕自身は本当に不器用なタイプなので、彼女の演技に飲まれないように、倉木としてはふんばらなきゃいけない。改めてすごく力のある女優さんだなと感じました。大杉が汐里を取り調べるシーンもすごかったですね」
香川「あれは大杉としても精一杯というシーン。蒼井さんは汐里の秘められた過去を匂わせるすばらしい演技をしていますよね。Season2では彼女の持っている女優としての資質が縦横無尽に発揮されていると思う」
――それでは最後に、Season2ならではの見どころを教えて下さい。
西島「2年前の『ダブルフェイス』のときも、WOWOWで放送した『偽装警察編』はトーンが違っていましたよね。同じように『MOZU』のSeason2にもWOWOWだからこそ突っ込んで表現できるものがあるので、そこを楽しみに観ていただきたい」
香川「Season2には、倉木と奥さんの関係、グラークα作戦の全容、モズの終息の仕方など、すべての謎がかかってくる。Season1から羽住監督たちが散りばめた伏線が巧みにコントロールされながら解決していって、美希の父親のことまで絡めて、ラストは面白い着地の仕方をしていると思います」
真木「私は…車にひかれます (笑)。ドン!って音がして、その場面は本当の交通事故みたいな迫力なんですよ。演じた私自身もびっくりしたぐらいなので、お見逃しなく」
香川「普通のひかれ方じゃないからね(笑)。その場面も含め、作品のテンションがまるで韓国映画のよう。WOWOWでの放送だからもっと激しくやってしまおうというスタッフの勢いも感じるし、さらにインパクトあるものにしたいという情熱が画面にあふれていると思います」
西島「いよいよあと3日で放送なんですね。第1話は無料放送ですし、とにかく多くの皆さんに観てもらいたいです!」
西島秀俊71年生まれ。94年『居酒屋ゆうれい』で映画デビュー。映画やドラマに多数出演し、13年はNHK大河ドラマ「八重の桜」で山本覚馬を演じた。また『ストロベリーナイト』にも出演
香川照之65年生まれ。89年、NHK大河ドラマ「春日局」で俳優デビュー。『劒岳 点の記』(09年)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。「半沢直樹」(13年)での演技も話題に
真木よう子82年生まれ。06年『ベロニカは死ぬことにした』で映画初主演。13年は『さよなら渓谷』と『そして父になる』で日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞と最優秀助演女優賞をダブル受賞
伊藤淳史さん演じる鳴宮啓介が贈る
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