愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!
杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】
第29回 外国語能力の向上を目指す文部科学省のプロジェクト
英語は世界とつながるためのツールです

写真:Action Images/AFLO
アカデミックな見地だけでなく、実際に英語を使って世界で活動してきた立場からの意見を取り入れたいということで、私も委員に加わりました。名前はいかめしい感じですが、委員会の会合は堅苦しい感じではありません。私自身、すごくいい経験をさせてもらっていると感じます。
今、日本では若い人たちの外国語離れが問題になっています。内向きというのか、国内だけで十分、海外に行かなくてもいいと考える人が増え、語学や海外留学へのモチベーションが下がっているのだそうです。
私自身は、小さい頃から英語に対する憧れがあって、2〜3歳の頃から英語のイントネーションを真似して−−もちろん、でたらめな英語なのですが−−ペラペラペラペラと、英語をしゃべるふりをしていました。それが根底にあって、7歳の頃には海外で活躍するテニスのプロになりたいという夢が出てきましたから、将来、必然的に英語は使うものと思っていました。また、ニック・ボラテリー・テニスアカデミーの日本校に行っていたので、周りには英語をしゃべるアメリカ人のコーチがいました。それで、母に「これ、英語でなんて言うの?」と聞いてはコーチに英語で話す、というのを私は小学校の頃からやっていました。
そして、これは前にも書きましたが、6年生の頃、両親に初めて海外に行かせてもらった時に、もっと英語で会話できると思っていたのに全然わからなくて、その悔しさもあって「英語が話せるようになりたい。もっと海外の友だちと交流したい」と思うようになりました。ですから、英語習得の環境という意味では、刺激もたくさんあって、恵まれていたのは間違いありません。
今は、学校の授業自体は「話す」「聞く」の要素が増え、私たちの頃より内容はよくなっているようです。あとは、学びたいという気持ち次第です。しかし、今の若い人たちは、なんのために英語を勉強するの? とか、自分には必要ない、と考える人が多くなったようです。そもそも、英語に限らず、自分がやりたいこと、興味の対象を見つけること自体、すごく難しくなっているのかもしれません。
でも、実は今、小さな町工場でも海外とのやりとりがあるとか、ローカルで働いていると思いきや実は仕事の形はグローバルになっている例も少なくありません。それを若い人たちが知らないだけなのです。世界とつながるためのツールが、英語です。英語を話せるということは、世界と会話できるということですよね。特に今はインターネットの時代でもあるし、英語を使えば誰でもすぐに世界とつながることができるのです。
日本は豊かになって、恵まれているけれど、国内だけでは伸びしろはそんなにありませんよね。それならば、次は世界に目を向けること、グローバル化が必要です。そこでは英語が絶対必要になります。そのことを教育を通じてもっと発信していく必要があるのだと思います。そうすることで、もっとみんなが英語を勉強したいという気持ちになるのではないかな、と私は思っています。
「グローバルな人材」という言葉も聞きますが、若い世代へのメッセージはまだ足りないんじゃないかという気がしています。こういう可能性があるんだよ、こういう楽しい将来が待っているんだよ、とメッセージを発信し、それを受け取った子供たちが「あ、楽しそうだな」と思うことが大切なのだと思います。そこからどんどん興味が広がるからです。興味さえ持てば、子供の吸収力って大人の想像を超えているので、スポンジのようにいろんなものを吸収していけるでしょう。ですから、大人がどれだけメッセージを送り、機会を与えてあげられるか、です。
私は今でも完璧な英語を話しているとは思っていません。結構、間違いだらけですよ。でも、言葉ってツールだから、コミュニケーションがとれればいいと思っています。日本語でも時々「てにおは」を間違ったりしますよね。それでも、コミュニケーションは十分にできています。私はネイティブでもないし、相手の思っていることが分かって、自分の伝えたいことがしっかり伝えられる、そういうコミュニケーションがとれればそれでいいと、とらえています。
まずは、トライすることだと思います。英語は世界の公用語なので、しゃべれると世界が広がるし、楽しいですよ。
- 杉山 愛
- 生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。