インド映画界で活躍する撮影監督・中原圭子。ボリウッド唯一の外国人女性カメラマンとして奮闘する彼女のしなやかにしてたくましいクリエイティビティーの真髄に迫る。
年間映画製作本数が1000本以上というインド。映画産業の拠点都市ムンバイはハリウッドをもじって“ボリウッド”と呼ばれる。この地で唯一の外国人女性撮影監督・中原圭子に密着する。鹿児島県種子島出身の中原は、22歳で映画監督を夢見て渡米した。ハリウッドでカメラアシスタントとしての経験を積んだ後、知人の紹介でインド映画を撮影。1度きりのつもりだったが、インド人監督の情熱にほだされインドに定住。そんな彼女が頭角を現わした作品は、女性ボクサーの伝記映画『Mary Kom(原題)』。日本では、インド映画といえばダンスシーンの印象が強いが、今、当地では本作のようなシリアスなヒューマンドラマが人気を博している。中原の真骨頂は自然光を活用した繊細な映像と、20kgを超えるカメラを担ぎ俳優の間を動き回る撮影手法。インド映画のトレンドに応える彼女の技術が噂を呼び、瞬く間に人気撮影監督となった。
だが、彼女はインド映画界では外国人女性というマイノリティー。撤廃されたはずのカーストの影はいまだに残り、演者やスタッフは職位によって食事のメニューも食べる場所も異なる。男女格差も歴然。そんな中、ボリウッドでは、激しく移ろう時代の変化にさらされながら、多様な映画が休む間もなく製作される。そこには日本人らしいしなやかさと女性独特の感性で今日もカメラを回し、ボリウッドを支える“ミューズ”の姿があった。
出演
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ナレーター中谷美紀