『ウエスト・サイド物語』など、数々の大ヒットミュージカル映画でゴーストシンガーを務めた、マーニ・ニクソン。ハリウッドを救った陰の立役者とその舞台裏に迫る。
映画『ウエスト・サイド物語』で伸びやかに力強く歌い上げる名女優ナタリー・ウッド。『マイ・フェア・レディ』で軽やかに弾むソプラノを披露するオードリー・ヘプバーン。『王様と私』で愛らしさをみごとな歌声で表現するデボラ・カー。彼女らの歌声は映画やミュージカルファンでなくとも、一度は耳にしたことがあるかもしれない。世界中で親しまれている名曲の数々だが、実はたったひとりの女性が歌い、みごとに吹き替えられているのだ。今から約50年前のタイム誌に「史上最強のゴーストシンガー」という記事が掲載され、“ゴーストシンガー”マーニ・ニクソンの存在が初めて世に知られることとなった。それまで“ゴーストシンガー”の存在はトップシークレットだったのだ。
幼いころから類まれな歌唱力を持ち、10代からソプラノ歌手として活動していたマーニ。“ハリウッド黄金期”と呼ばれた1940年代後半、映画『The Secret Garden(原題)』のヒロイン、マーガレット・オブライエンの歌声を吹き替える仕事が舞い込む。そこから、彼女の“ゴーストシンガー”としての人生が始まった。しかし、映画のクレジットに彼女の名前が出ることはなかった。
今だから語られる“ゴーストシンガー”の“本当の声”に耳を傾けたい。(2016年)