ドキュメンタリー
ノンフィクションW 被災地に歌う「上を向いて歩こう」 〜大島花子・父と紡ぐ心のメロディー〜

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ノンフィクションW 被災地に歌う「上を向いて歩こう」

震災から5年。今も東北地方に通い続ける歌手・大島花子。11歳で父・坂本九を失った彼女の歌声は哀しみを抱え続ける被災者の支えとなっている。大島と被災地の物語を追う

2016年。東日本大震災から5年。人々の記憶が少しずつ風化してゆく中、今もなお東北に通い続け、手作りのライブを届けている歌手がいる。大島花子、42歳。昭和を代表する歌手、坂本九の長女だ。震災直後の被災地で、坂本の代表曲「上を向いて歩こう」が復興ソングとして歌われていた中、自分でも何かできないかと考え、福島で炊き出しライブを行なった。以来、東北各地へ地道に足を運ぶその活動が人づてに伝わり、「大島の歌が聴きたい」と今も被災地からの依頼が後を絶たない。
大島は11歳のとき、群馬・御巣鷹の尾根の飛行機事故で最愛の父を失った。あれから30年。今もその哀しみは癒えていないという。「無理に克服する必要はない」と語り掛ける大島の歌声は、同じく心に傷を抱える被災者たちの心に、そっと寄り添うように響いている。大島と被災者たちとの変わらぬ心の交流を通じ、被災地の今を伝える。

ノンフィクションW 被災地に歌う「上を向いて歩こう」

震災から5年。今も東北地方に通い続ける歌手・大島花子。11歳で父・坂本九を失った彼女の歌声は哀しみを抱え続ける被災者の支えとなっている。大島と被災地の物語を追う

2015年秋、福島県新地町。この町の保育園で、歌手・大島花子によるささやかなライブが開かれていた。檀上には、大島とギタリストの2人だけ。披露するのは大島のオリジナル曲に加え、父・坂本九が歌った名曲。優しく心に寄り添うような大島の歌声に包まれ、観客たちは自然と涙を流す。
大島が被災者へ語り掛けるのが「哀しみは癒えないし、無理に克服する必要はない」というメッセージ。父の名曲「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」も、励ましの曲というよりは、哀しみを抱える者に寄り添うための曲だと語る。幼くして父を失った大島の歌声は、同じく家族や故郷を失った喪失感を拭えない被災者たちの共感を呼んでいる。
大島が地道に続けてきた東北各地でのライブは、5年間で20回を超える。被災地での出会いと絆は大島にとっても大きな喜びだ。2015年冬、大島はこの出会いを通じ、新たな楽曲の作詞に取り掛かっていた。
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