日本映画のガンエフェクトの分野で30年以上トップランナーとして走り続ける納富貴久男。そして今、新たな技術を確立しようとしている彼の一発の銃弾に懸ける想いに迫る。
日本映画の銃撃シーンに革命を起こした男・納富貴久男(のうとみきくお 60歳)。映画に登場する銃器の取り扱いを一手に引き受け、あたかも実弾が飛んでいるかのように演出する特殊効果「ガンエフェクト」を確立した納富は、30年のキャリアを持ちながら、現在もトップランナーとして走り続けている。2015年7月、1980年代の名作『セーラー服と機関銃』の続編映画がクランクインした。見せ場はもちろんクライマックスのガンアクション。このシーンを支えるのが、ガンエフェクトに携わる納富貴久男だ。リアルな銃器を制作し、人体から噴き出す血のりなど着弾表現を施す。海外とは違い、撮影現場で実弾は使えず、予算的にもさまざまな制約のある日本映画において、納富は欠かせない存在だ。
納富の名を世に知らしめたのが、北野武が監督を務めた『その男、凶暴につき』。重要なのは「その銃撃で何を訴えたいのか」。悲しみか、憎しみか、それによって火炎、血のりの噴き出し方を微妙に変え、納富流の死生観を表現した。今回、『セーラー服と機関銃 ‐卒業‐』では、新たな効果を模索し、事務所や河川敷で実験を続けた。日本のガンエフェクトがまた一歩前進できると考える納富の、開発から撮影までの緊張の日々を伝える。(2016年)