「人物デザイン」という役割で、大友啓史、三池崇史、長塚圭史など映画監督や演出家から高い評価を受ける、柘植伊佐夫。新たな舞台に全身全霊で向き合う彼の姿を追う。
「人物デザイン」の専門家として映像作品や舞台を支える柘植伊佐夫(つげいさお)の活躍を追う。「人物デザイン」とは、衣装やヘアメイク、小道具など“扮装”のすべてを設計する役割。今まで、大友啓史、三池崇史、山崎貴、樋口真嗣、長塚圭史ら人物描写や美術にこだわる映画監督、演出家と多くの仕事をともにし、高い評価を受けてきた。柘植は、2015年始めに上演された舞台「プルートゥ PLUTO」の「人物デザイン」を担当した。原作は手塚治虫の鉄腕アトム「地上最大のロボット」に、浦沢直樹とストーリー共同制作の長崎尚志が新しい命を吹き込んで生まれた傑作漫画「PLUTO」。登場人物の扮装とロボットの造形を担当する柘植は、関係するスタッフを仕切り、制作していく。「各パーツを合わせて、新しい人間、キャラクターを生むことが最大の喜び」と柘植は語る。
この作品の演出・振付を手掛けたのは、現代舞台芸術を牽引する世界的振付家シディ・ラルビ・シェルカウイ。身体表現と特殊造形の調和で魅せる作品となり、柘植の仕事が作品の成否の鍵を握る。そんな柘植の作品には「欲望」「葛藤」など「心の闇」を表現したものが多い。今回の「心の闇」である「生の欲望と死の恐怖」をどこまで表現できるのか、柘植は俳優の身体表現やロボットの動きを確認し、修正を重ねていく。(2015年)