銀座に自らの名前を冠した店をオープンさせ早くもミシュラン2つ星を獲得したフレンチの巨匠ドミニク・ブシェ。日本で挑む究極のスペシャリテ創作の瞬間を追う。
あまたの星を取ってきたフランス料理界の巨匠ドミニク・ブシェが、世界中のオファーの中から日本での出店を選んだ。その背景には30年に及ぶ親交と東日本大震災があった。日本に根を張る覚悟で、日本人スタッフと理想のレストラン作りに挑戦。伝統的フレンチに新解釈を加えた料理、“友人を家に招くような”サービス、そして、フランスのエスプリの効いた雰囲気を目指す。パリ8区に店を構えるドミニクは、シェフ自ら客をもてなすことが大切と、パリと東京を行き来する日々。多忙を極める中、新しい“スペシャリテ”を生み出すことを決意し、その素材に選んだのは日本産の魚介だ。29歳の厨房チーフらと試行錯誤を重ねる。
ドミニクが「星を目指さない」と明言するようになった背景には、フランス料理界のある悲しい事件があった。ミシュランガイドが参入して7年の日本。星は客を惹きつける要素だが、ドミニクは星を基準にしない“本物のフレンチレストラン”を目指す。