28年にわたり、原爆で亡くなった子どもたちの手記を語る朗読劇を続ける渡辺美佐子。戦争を知る世代として、そして表現者たる女優として、彼女が背負う決意に迫る。
100本以上の映画に出演し、60年にわたって活躍している女優・渡辺美佐子。太平洋戦争時に戦火を逃げ惑った経験を持ち、映画デビュー作『ひめゆりの塔』(’53)では、地上戦となった沖縄で自害した女学生を演じた。渡辺がライフワークとして28年にわたり続けているのが、広島・長崎の原爆で亡くなった子どもたちの手記を語る朗読劇「夏の雲は忘れない」である。実は朗読劇を始めたきっかけのひとつには、初恋の少年の存在があった。彼は小学生時代にすぐに転校して行った元同級生。再会を望みながらも月日は経つ。後に女優となった渡辺は、あるとき偶然、その同級生が1945年8月6日の朝、疎開先の広島で勤労動員に出かけたまま帰らなかったことを知る。その後、朗読劇の準備をしていた渡辺は、思いもかけずその少年の名を目にする…。「原爆、戦争を語り継ぐのが女優としての使命」と語る渡辺が、心血を注ぎ、語り継いできた朗読劇に密着する。
出演
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渡辺美佐子