20世紀最高の指揮者と称されるフルトヴェングラー。第二次世界大戦後、ナチス政権への関与を疑われ、立場が一転してしまう。日本初公開の資料から、その心情を描く。
“20世紀最高”と称される天才指揮者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーはかつて、独裁者・ヒトラーによってナチスの政治的宣伝の一翼を担わされていた。政治に巻き込まれる反面、所属していたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は兵役免除や経済的支援などの恩恵を受けていたからだ。ナチスの重要行事に参加しながらも、ひそかにユダヤ人の演奏家を助けていたというフルトヴェングラーの真意とは?近年発見された議事録により、連合国によるナチス政権への関与を追求する軍事裁判よりも前に、同胞であるドイツ人によって、フルトヴェングラーの公平性と指揮者復帰を問うための調査委員会が開かれていたことが判明した。この日本初公開となる貴重な議事録や、戦時中にスイスへと避難させた妻と交わした手紙、元楽団員へのインタビューなどを通して、政治と芸術との狭間で揺れたフルトヴェングラーの想いに迫っていく。