亡き妻との思い出が深い作品「授業」を、自身の劇場で公演することを決めた仲代達矢。60年の俳優キャリアの集大成を作り上げる姿から、演劇人魂を浮き彫りにする。
2012年、80歳を迎え、俳優生活60年の集大成を作り上げようとする仲代達矢に完全密着した。1950年代から映画・テレビ・舞台で数々の名作に出演、日本を代表する名優となった仲代は、1975年に「無名塾」を主宰し、後進の育成にも尽力してきた。そんな仲代が新たに挑む舞台「授業」は、老教授と女生徒の奇妙な個人授業を描いた不条理劇。20代のころに、亡き恭子夫人とパリで観た思い出深い舞台だ。2013年2月の公演初日に向け、稽古は前年11月に開始した。それに先駆け、仲代は9月から準備を始める。毎回すべてのセリフを書き出し、寝室に貼り出す。この行為を通じて“役が身に染みてくる”という。稽古が始まると、仲代はもがき、叫び、沈黙する。試練の時間は、思い描く「授業」の芝居を築いては壊すことの繰り返しだ。2月、無名塾のホームグラウンド、東京 世田谷の仲代劇堂で「授業」の幕が上がった。