世界の映画祭を制覇、進化し続けるキム・ギドク監督が愛してやまない歌アリラン。韓国第二の国歌とも言われる“究極のブルース”の魅力に迫り、彼の揺るぎない精神を追う。
アリランは、明るいメロディーでキキョウを掘る娘を歌うトラジとともに、最も有名な朝鮮民謡の一つだ。哀愁を帯びたメロディーと併せ、特に1番の歌詞は民族感情の一つである“ハン(恨)”を表わしているという。世界の三大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)を制したキム・ギドク監督の人生に大きく影響を与えた歌でもあり、彼の作品で頻繁に使われている。自ら出演した『春夏秋冬そして春』(’03)では、監督扮する僧侶が冬山で荒行をするシーンで流れ、『アリラン』(’11)では、江原道と慶尚北道、京畿道に伝わるものを集大成したオリジナルのアリランを、監督自身が慟哭しながら歌う。大統領から幼児までが歌うアリランの魅力とは何なのか? この歌がかつて日本と深い関わりがあった経緯をひも解くとともに、人々の心を捉えて離さない、“歌の力”に迫っていく。