変わりゆく映画館やその環境。激減するフィルム映画。この映画界の過渡期をめぐる物語を芸術選奨文部科学大臣賞受賞の映写技師・鈴木文夫の目を通して映し出す。
“日本一の映写技師”として世界の映画人から賞賛される鈴木文夫。映写技師という彼の職業は、フィルムを映写機にかけるだけでなく、温度や湿度、上映環境に合わせ、スクリーンに投影する角度や光量、フィルムの架け替えタイミングの調整などが求められる映画には欠かせないものだ。山田洋次監督が自身の作品の上映時に必ず映写指名するなど、鈴木の技術は高く評価され、2003年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。映写技師という職業では最初で最後と言われるこの受賞で、名実ともに日本一の存在となった鈴木だが、現在は業界全体に進むデジタル化の波に直面している。そんな中、鈴木は京都四條南座で2012年8月から10月にかけて山田監督の作品、全80本を上映するフィルム上映会で映写を担当。76歳の鈴木は「フィルムは生き物」と語り、デジタルでは出し切れない人間の目で感じられるフィルム独特の温かみを残すべく活動を続ける。