日本庭園の庭師、北山安夫の仕事ぶりに密着する。建築の西洋化が進み、目にすることの少なくなった日本庭園。北村は“古典”に留まらない庭作りを模索する。
湧水と川の流れを軸とした美しい京都の庭園。平安京建都以来1200年以上にわたり数多くの職人が手がけてきた文化を、現在に受け継ぐ庭師が北山安夫だ。鑑賞する人々の心情に寄り添い、“心で見る”ことで作り上げるという北山の作品は、伝統的な庭園の魅力に満ち、国内外で高く評価されてきた。日本人が本来持つ心の豊かさを反映しているといわれる究極の芸術、“庭”の世界。北山の仕事を通して、その神髄に迫る。京都庭園の伝統を受け継ぐ庭師・北山安夫。京都最古の禅寺・建仁寺の潮音庭や愛知万博の日本庭園、さらには南アフリカの富豪が依頼する4000坪の庭園など、国内・海外の庭を手がけ、評価を確立してきた。北山曰く「庭とは、そこから解き放たれる自然の“気”を人間が頂く場」だという。その卓越した技術を習得しようと、現在北山の下では、フランスやアメリカから来た若者を含む17人が修業中だ。
伝統を継承するため、北山は挨拶から道具の管理まで厳しく叩き込み、“心”を伝えている。そんな彼の下に、2012年、新たな依頼が入った。北山が10年以上前に手がけたイタリア・フィレンツェのバラ園に、滝を流した本格的な日本庭園をつくるというのだ。日本から石を持ち込み、木と水を配して、ダイナミックかつ繊細な空間を生み出していく北山。彼が描き出す究極の“日本の美”が、海を越えて人々の心に染み渡っていく…。