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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!…
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綾野剛が『カラオケ行こ!』の“歌がうまくなりたいヤクザ”役で魅せた「スマートな違和感」を紐解く

文=SYO @SyoCinema  2024年も、綾野剛の快進撃が止まらない。 『花腐し』(’23)での激賞、Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」(’23)の衝撃が冷めやらぬまま、今年1月に映画『カラオケ行こ!』が劇場公開し、スマッシュヒットを記録。Netflixシリーズ「地面師たち」(’24)では豊川悦司とW主演を務め、『ラストマイル』(8月23日(金)公開)、『まる』(10月公開)、『本心』(11月8日(金)公開)と新作映画が多数待機中。いずれも話題作であり、彼の演技

日本とフランスをつなぐ「フランス映画」。その魅力をフランス映画愛にあふれる2人が語り尽くす

映画が導いた、素敵な出会い中山結衣(以下、中山)「ボンジュール! 本日はよろしくお願いします。まず自己紹介をお願いできますでしょうか?」 エマニュエル・ピザーラ(以下、ピザーラ)「もちろん! エマニュエル・ピザーラと申します。ユニフランスの東京オフィスの代表を務めています。パリの映画業界で約10年間働き、その間にフランスとアジア、特に日本とをつなぐ機会が多くあり、今の仕事につながっています」 中山「お仕事に就かれる前は、どういった勉強をされていたのですか?」 ピザーラ

【7月の激レア映画!】カトリーヌ・ドヌーヴ主演で4Kレストア版でよみがえった『インドシナ』や、アラン・ドロン主演の代表作2本をはじめ、廃盤・未ソフト化・HDレストア版など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 ①[廃盤]『シャロウ・グレイブ』 レア度…★★★★☆  まずはソフトが[廃盤]になっている作品からご紹介します。  『スラムドッグ$ミリオネア』('08)でオスカーを受賞したダニー・ボイル監督が、出世作『トレインスポッティング』('96)の直前に作ったデビュー作で、現在[廃盤]となっている『シャロウ・グレイブ』です。シェアハウスに暮らす3人が、4人目の入居者を迎えるが、彼は突然死亡。残された大量の麻薬と大金により、さまざまな思惑が駆け巡るサスペンスです。丁

神木隆之介の本質的な特異性―不朽ともいえる“青さ”―を『ゴジラ-1.0』を中心に紐解く

文=SYO @SyoCinema  2歳で芸能界に入り、芸歴はもうすぐ30年に到達する大ベテラン。俳優・神木隆之介の演技力、つまり《技術》について、今さら語ること自体がやぼとも言える。なぜなら、このキャリア自体が唯一無二の存在証明に他ならないからだ。彼のすごさは説明するまでもなく、皆が知っている。  むしろ、彼の本質的な“特異性”があるとするならば――それはまさにエバーグリーン(=不朽)と言っていい“青さ”であろう。熟練の技術者でありながら、神木からわれわれ観客が感じるの

【6月の激レア映画!】濱口竜介監督の実験的短編『天国はまだ遠い』や、石井裕也監督の長編第1作『剥き出しにっぽん』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 【6月の激レア映画9作品】①[廃盤]『川の底からこんにちは』/②[廃盤][HDテレシネ]『剥き出しにっぽん』 レア度…★★★★☆  最初に紹介するのはDVDが[廃盤]になっている石井裕也監督の商業デビュー作『川の底からこんにちは』です。監督デビュー作といえば、その後の方向性を決めてしまうほど、本人にとっても周囲にとっても重要な作品です。この映画、一応ジャンルはコメディとなっていますが、とにかく主人公のどん底ぶりが徹底していて、笑っていいのか迷ってしまうほど

ボクサーのプロライセンスを取得した横浜流星。「演技」の領域を超えた規格外の進化を1本の映画から紐解く

文=SYO @SyoCinema  僕は独立して4年弱になるが、この仕事の一番の財産はやはり人との出会いだと感じる。恩人であり、この人と巡り合えなければ自分の人生はまったく違ったものになったであろう確信――僕にとって、そのひとりが俳優・横浜流星だ。  初めて彼について書く機会を得たのは、まだ独立前の2019年。この連載の前身となる「WOWOWシネピック」だったかと思う。盟友・藤井道人監督との初タッグ作『青の帰り道』(’18)を中心に、横浜が見せるリアルな“痛み”に着目して

【5月の激レア映画!】浅田次郎の小説を宮沢りえ主演で映画化した『オリヲン座からの招待状』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 【5月の激レア映画8作品】①[廃盤]『アクシデンタル・スパイ』 レア度…★★★★☆  先日、70歳を迎えたアクションスターの大御所、ジャッキー・チェン。[廃盤]扱いとなっている『アクシデンタル・スパイ』が公開された頃は、ジャッキー主演の『ラッシュアワー』('98)のヒットで、世界に通用する俳優としてハリウッドにようやく地位が認められ、彼は香港とハリウッドを行き来していました。  最近はあまり威勢のある作品が少ない香港映画界ですが、この頃はまだやりたいことが

観る者を“清廉な領域”に引き込む、黒木華。『せかいのおきく』で魅せたその特質を紐解く

文=SYO @SyoCinema  私たちは、物語や役のフィルターを通して俳優を見る。自分は仕事上、比較的彼ら、彼女らに近い場所にいるかもしれないが――。たとえ撮影に立ち会ったり、インタビューで対話しようとも、やはりその本質は分からないものだと思う。僕自身も家族の前以外では濃度の違いこそあれど“人前モード”だし、他者を分かった気になるのは傲慢で怖いことだと思う。だから、なるべく勝手なバイアスをかけないように心掛けている。  ただ――そう意識していても、俳優本人の性格が透け

【4月の激レア映画!】松田優作主演『蘇える金狼』『野獣死すべし』『探偵物語』の4Kリマスター版ほか、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 【4月の激レア映画10作品】①[廃盤]『教祖誕生』 ★レア度…★★★☆☆  まず[廃盤]作品で紹介したいのが、ビートたけしの小説を映画化した1993年の風刺コメディ『教祖誕生』。新興宗教の布教活動に興味本位で加わることになった青年が主人公です。リアルタイムで観ていない人には、少し分かりづらいかもしれませんが、当時はかなりこうした出来事が社会問題化していました。そこにビートたけしが目を付けたという訳です。映画では新興宗教に対する皮肉やその組織的な裏の顔も描い

綾瀬はるかに宿る、観る者を惹き付ける“エンタメ性”を1本のアクション作品から紐解く

文=SYO @SyoCinema  国民的女優、綾瀬はるか。  彼女には、どの作品で出会うかで、こちらのイメージが変わるところがある。映画『ハッピーフライト』(’08)、『おっぱいバレー』(’09)、ドラマ「ホタルノヒカリ」(’07)、「義母と娘のブルース」(’18)などだったらコメディエンヌだろうし、「八重の桜」(’13)、「JIN-仁-」(’09)、『レジェンド&バタフライ』(’23)ほか時代劇でのイメージもあるだろう。また、「世界の中心で、愛をさけぶ」(’04)、「白

【3月の激レア映画!】廃盤・未ソフト化・4K修復版…なかなか出会えない貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 【3月の激レア映画10作品】 まずは惜しくも[廃盤]となっている作品からいきましょう。 ①『アポカリプト』 レア度…★★★☆☆  まずは現在、ソフトが廃盤になっている『アポカリプト』からご紹介します。「マッドマックス」や「リーサル・ウェポン」シリーズで有名なメル・ギブソンが監督した第4作です。第3作の『パッション』(’04)はイエス・キリストが磔にされる様子をリアルに描き、全米で空前の大ヒットを記録。興行収入は世界中で6億1200万ドル以上を売り上げまし

俳優・長澤まさみの、理想と現実のギャップに苦悩する“淀み”を抱える役を引き寄せる特質を紐解く

文=SYO @SyoCinema  2024年も坂口健太郎、横浜流星らと共演した『パレード』(2月29日(月)Netflix配信)、佐藤健、森七菜と共演した『四月になれば彼女は』(3月22日(金)公開)、三谷幸喜監督作『スオミの話をしよう』(9月13日(月)公開)と、ビッグな出演作が控えている俳優・長澤まさみ。彼女が松山ケンイチとW主演を務めた社会派サスペンス『ロストケア』が、3月2日(日)にWOWOW初放送を迎える。  第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真

【2月の激レア映画!】廃盤・未ソフト化・4K修復版…なかなか出会えない貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

 文=飯塚克味 【2月の激レア映画10作品】①『四月怪談』 レア度…★★★★☆  最初は大島弓子原作の『四月怪談』。  本作を監督した小中和哉監督は、新作『Single8』(’23)に描かれるような自主映画で脚光を浴びた監督です。ですが、何をおいても本作の魅力は主演の中嶋朋子に尽きるでしょう。ドラマ「北の国から」の螢役で有名な彼女ですが、思いがけず死んでしまい幽霊になった女子高生をキュートに演じています。ちょうどこの頃、子役から脱皮を図っていた時期で、『あさってDANC

鈴木亮平と宮沢氷魚の疑いようのない“運命”を『エゴイスト』の中に見る

文=SYO @SyoCinema  「ニコイチ」という言葉がある。  二つで一つ、ワンセットという意味だが、心に残る映画には多くの場合「この2人しか考えられなかった」というキャスティングと芝居の妙が掛け合わさった「ニコイチ」が存在する。  それがラブストーリーならなおさらだろう。クサい言葉を使ってしまい少々恥ずかしいが……恋愛ごとには少なからず“運命”というものが作用していて、運命の意味は「目に見えない力で決定づけられている」であり、そう信じる自己暗示も相まって心酔・夢見

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