昨夜見た、自信溢れる湯田官房長官の顔が、なぜか忘れられない。私がジュビリアに行く前は、彼にあんなカリスマ性は見られなかったからだろう。そこで、彼について調べてみることにした。湯田和路は、元経団連会長・湯田作之助氏の長男。父親と離婚した母親は既に他界。親の七光りで政界入りした「ボンボン」として有名。
彼は初婚だが、妻は子持ち再婚。それも……彼女の元夫は、鈴木精二教授。その上、鈴木教授と湯田官房長官は、港東大学在学中、ワンゲル部の同期。二人は現湯田夫人の恵理子さんをはさんで、密接な関係にあったのだ。
同じ女性として、恵理子さんの生き方に興味がわく。
鈴木教授の研究を知るため、アメリカの友人から関係医学誌のコピーを取り寄せる。彼は自殺念慮を消す治療を生みだしていたが、日本ではまだ無認可だと言う。日本国内の自殺者は毎年、3万人を下らない。
この治療法が日本でも認可されたら、どれほど多くの命が救われるだろう。だが一方では利権を巡り、企業間で激しい争奪戦が繰り広げられるに違いない。
鈴木教授は認可を得ようと帰国したのか? それとも、誰か特定な人を助けるために?
帰り道、病院の周りが慌しいので、立ち寄ってみた。するとそこは、あたかも野戦病院の様相。次々来る救急車に、まるで対応しきれていない。近くにいた医師に尋ねると、23区の救急搬送システムに問題が起こったと言う。
昨日までに起こった、潜水艦行方不明事件、サイバーテロらしき騒動、そして今日は救急搬送システム混乱……。
平和な日常がどんどん壊されていく。
私たちの見えないところで、一体何が起こっているんだろう?