When :いつ? 立ち上がり~大型企画の誕生の経緯~
男は言う。「日本は地ならしが必要だ」。2003年に立ち上がった、WOWOW独自のドラマ製作プロジェクト『ドラマW』。第1弾として川上弘美原作の『センセイの鞄』を小泉今日子主演・久世光彦演出で製作したのを皮切りに、地上波とも映画とも一線を画す意欲的なドラマが送り出して来た。2008年には、日曜22時に『連続ドラマW』がスタート。土曜22時でも連続ドラマを開始させるなど、挑戦を続けている。
そんな『連続ドラマW』に、また新たな野心作が登場する。冒頭のセリフはまさにその主人公・設楽拳一のもので、彼の仕事ともドラマの題名ともなるのは、『フィクサー』。題材としても体制としても、新たな試みに満ちたものとして本作は動き出した。「あえて難しいことに挑戦したいというのはありました」と語るのは、企画・プロデュースの青木泰憲。
「これまで『連続ドラマW』ではいち早く池井戸潤さんの作品を映像化したり、山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』を全20話で製作したりと視聴者の支持を得てはいますが、やっぱりそれは強い原作があってこそ。脚本の井上由美子さんとオリジナルで『パンドラ』を作って、『連続ドラマW』を立ち上げたのが2008年で、15年経って自分たちの真価や成長を確かめるうえでもオリジナルで勝負したいと考えて、一緒にまた新しいことに挑戦したいと井上さんにお会いしたというのが最初です」
ガンの特効薬の発見をめぐる社会派の人間ドラマとして、三上博史主演・河毛俊作演出で放送された『パンドラ』は、第1回東京ドラマアウォードで連続ドラマ部門のグランプリを受賞。井上や河毛をはじめとした同チームのスタッフが集結して、テーマも新たに『パンドラII 飢餓列島』(佐藤浩市主演/10年)、『パンドラIII 革命前夜』(江口洋介主演/11年)、『パンドラ〜永遠の命〜』(堺雅人主演/14年)、『パンドラIV AI戦争』(向井理主演/18年)と続編も作られてもいる。
「井上さんは『パンドラ』の実績があって、WOWOWとしても長尺の大作を求めていたので、今回は最初から3シーズンを一気に作っていく企画として考えました」と青木。これはドラマ界全体を通じても珍しい形式となる。男は言う。「俺は……壊したいんだ」。こちらも設楽拳一のセリフで、この言葉が「地ならしが必要だ」に続くが、それこそ日本のドラマの作り方、見え方、在り方も変えていく一作。エンタメの地ならしが、今、始まる。
(インタビュー&テキスト/渡辺水央)