2010年メキシコ湾原油流出事故
2010年4月20日、ルイジアナ州ベニス沖の石油掘削施設ディープウォーター・ホライズン(英国BP社)で掘削中の海底油田から逆流してきた天然ガスの引火が原因で大規模爆発が起こり、行方不明者・負傷者が続出。海底に伸びるパイプが折れ、数か月の間に78万キロリットルもの原油がメキシコ湾へ流出し、海水や沿岸を汚染した。ディープウォーター・ホライズンは2日後に水没。一帯を封じ込めて流出を止める作業に約5カ月を要するという史上最悪の原油流出事故となった。被害総額は数百億ドルにものぼり、BP社社は約45億ドル(約3600億円)の罰金を支払うことで合意。米当局による罰金としては史上最高額となった。
アリゾナ州反移民法“SB1070”
メキシコとの国境があるアリゾナ州で2010年に成立した新移民法が“SB1070”。移民による犯罪の抑制が目的だが、警察官は市民を外見などから不法移民かどうかを判断して職務質問ができる他、不法移民の疑いがあるとみなした者を拘留することができ、移住者が滞在許可証を携行しない場合は犯罪とみなされるなどの内容。全米で最も厳しい不法移民法と言われ、激しい抗議デモや、スポーツ選手によるボイコット運動が起こった。オバマ大統領はこの法律を「我々がアメリカ人として抱いている公正さの基本的な概念と、我々の安全を維持するために不可欠の警察官と市民社会の間の信頼関係を脅かす」と非難し、政権をも巻き込む論議に発展した。
ティーパーティー運動
2009年から全米の保守派市民が始めた草の根運動。民主党オバマ政権の自動車産業や金融機関への救済の反対、さらには景気刺激策や医療保険法改正における「大きな政府」路線に反対、抗議。合衆国は課税などをやめて「小さな政府」に回帰しろという超保守主義を標榜した。ティーパーティーという名前は植民地時代に英国の茶法(重税政策)に抵抗し独立戦争の契機となった1773年のボストン茶会事件(Boston Tea Party)に由来する。同時にティーは「もう税金はたくさんだ(Taxed Enough Already)」の頭字語でもある。賛否両論あるが影響力は大きく、2010年11月の中間選挙で共和党が大躍進する原動力となった。
2011年ツーソン銃撃事件
2011年1月8日、アリゾナ州ツーソンのショッピングモールで、民主党のガブリエル・ギフォーズ連邦下院議員が政治集会を開いている時に起きた悲劇。22歳の男性が自動拳銃を乱射して19人が被弾し、6人が死亡。その中には2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の日に生まれた9歳の少女も含まれており、象徴的な日に産まれた少女が無差別殺人の犠牲となった悲劇として、米メディアが大きく取り上げた。犯人はその場で逮捕され、下院議員暗殺未遂の他5つの罪状で起訴されたが、黙秘をしているため、銃撃の動機は明らかになっていない。この事件で頭部に被弾したギフォーズ議員は一時重体に。一命こそ取り留めたがリハビリのために議員を辞職した。
エジプト革命
2010年からチュニジアで起きた“ジャスミン革命”に影響を受け、2011年1月にエジプトで始まった、同国のムバラク政権退陣を目的にした革命運動。29年もの間、独裁政権を維持したムバラク大統領であったが、高い失業率、物価高、不公正な社会など、民衆の怒りは一気に爆発した。その際、FacebookやTwitterが人々をつなぐソーシャルコミュニケーションとなり、反政府デモの呼びかけが広がった。無名の若者たちが力を結集したこの「民衆革命」により、同年2月11日、盤石とみられていた同政権はあっけなく崩壊。エジプト軍の最高評議会がその権限を引き継ぎ、民主国家への道を歩み始めた。
福島第一原子力発電所事故
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、運転中だった東京電力の福島第一原子力発電所では原子炉が自動停止。また、送電線の倒壊等により、冷却用の外部電源を失った。非常用の発電機が起動したものの、約50分後に到達した大津波によって発電機が故障。原子炉が炉心溶融を起こす非常事態に陥り、世界各国でも史上例をみない甚大な原発事故として大きく報道された。原子力安全・保安院は当初、国際原子力事故評価尺度でレベル5と判断(後にレベル7に引き上げた)。これにより広範囲に高い線量の大気土壌及び海洋の放射能汚染が発生。福島第一原発から半径20km圏内は、現在に至るまで一般市民の立入りが原則禁止されている。
ウサマ・ビンラディン殺害
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件で首謀者とされた、アルカイーダのウサマ・ビンラディン容疑者。合衆国政府は9年半もその潜伏先を捜し続け、2011年5月1日(米国東部標準時)、米軍特殊部隊はパキスタンにいたビンラディン容疑者を殺害した。オバマ大統領は深夜のホワイトハウスで異例の記者会見を行い、ビンラディン殺害を正式に発表。全国テレビ中継を通じて “Justice has been done”(正義はなされた)と宣言。ホワイトハウス周辺やニューヨークのワールドトレードセンター跡地には群衆が押しかけて歓喜の声をあげた。2012年に製作された映画「ゼロ・ダーク・サーティ」の題材にもなった。
米国債務上限問題
合衆国政府は公債法のもと、債務に上限が定められている。新たな借り入れが出来なくなると合衆国は国債の利払いなどの資金が不足し、史上初のデフォルト(債務不履行)に陥る恐れがあった。それを回避するため、合衆国政府は債務の上限を引き上げようとしたが、それは国債の格下げという大きなリスクを伴うことだと、議論を呼んだ。オバマ大統領は「(米国は)借金を踏み倒すような国ではない」と述べ、議会は無条件で速やかに同意すべきとの考えを示したが、野党共和党は。「借金を返済しないのは無責任」と強調し、上限引き上げの前提として大幅な歳出削減を迫っている。現在、米財務省は州政府への財政支援の削減などで当座をしのいでいる。
民主党下院議員アンソニー・ウェイナー
2011年6月。次期ニューヨーク市長選の最有力候補だったアンソニー・ウェイナー下院議員(民主党)が、自分の局部を撮影した画像をtwitterの女性フォロワーたちに送り付けたことが発覚。妊娠中の妻がヒラリー・クリントン国務長官の補佐官だったこともあり、全米を騒がせるスキャンダルに発展した。当初彼はハッカーによる陰謀だなどと言って責任を認めようとしなかったが、その後一転、インターネット上で女性6人と不適切な関係を持ったと記者会見で認め、涙ながらに謝罪した。会見内では「恥ずべき行為だったが辞任はしない」と言っていたが、オバマ大統領や民主党幹部から要求され、議員を辞職した。
投票時ID提示法
4年毎に行なわれる合衆国大統領選だが、選挙の度に少数民族の票が重要さを増していることを脅威に感じた共和党が、アメリカ人のIDを持つ者だけが投票を許されるべきだという新たな主張を展開した。大統領選の結果を左右しかねないこの法案に、予想通り賛否両論が巻き起こったが、共和党の支持者たちからは支持する声が多数あがった。そして主として共和党が州議会で主導権を握る州において、2000年の大統領選挙(フロリダ州が採用したパンチカード式の投票用紙をめぐり大混乱が起き、1か月も大統領が決まらない事態に陥った)の後、その採用が推進された。現在、投票時になんらかの形で身分証明を必要とする州は半分以上にのぼる。