大航海時代の栄華と偉業を称える、多くの史跡が残るリスボン。中でも中心地から西へ6kmにあるベレン地区は、ポルトガルが最も華やかだった時代に世界へ拠点を広げた主要港です。ジェロニモス修道院やサンタ・マリア教会など、海外からもたらされた莫大な富を反映した豪勢な建造物がたくさん残されています。
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発見のモニュメント |
1960年にエンリケ航海王子の500回忌を記念して造られました。帆船をモチーフにしたモニュメントは高さ52mもあり、テージョ河口から大西洋に向かって今にも船出して行きそうな躍動感があります。船首にはエンリケ航海王子が。その後ろにはヴァスコ・ダ・ガマやフランシスコ・ザビエルを始め、天文学者、宣教師、地質学者、詩人など世界史に名の残る27人のポルトガルの英雄が続きます。前の広場には大理石のモザイクで世界地図が描かれ、日本の発見は1541年と記されています。
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ベレンの塔 |
大西洋とテージョ川からの侵入者を監視するため、マヌエル1世が河口の要塞として1515年から1521年にかけて建設。マヌエル様式を代表する優雅な外観は「テージョ川の貴婦人」とも呼ばれ、1983年に世界文化遺産に登録されました。1階は潮の干満を利用した水牢、2階は砲台、3階は兵器庫、最上階は王族の居室として使われ、居室は現在博物館となっています。
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リスボン・ロシオ駅から国鉄シントラ線に乗車。市街地がだんだんと田園風景に変わり、古都シントラへ到着します。ここはイギリスの詩人バイロンが「エデンの園」と形容した景勝地。王侯貴族の館と深い緑が織りなす風景は、文化的景観として1995年に世界遺産に登録されました。
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王宮 |
かつて王家の夏の離宮だった建物は、14世紀にエンリケ航海王子の父ジョアンが建てたもの。見事なアズレージョで覆われた「アラブの間」、中国の家具や調度品で飾られた「中国の間」、織田信長が派遣した天正遣欧少年使節団が招かれたといわれる「白鳥の間」など、どの部屋も豪華な装飾が施されています。しかし中の豪華さとは裏腹に、外観は無粋な巨大排気筒が2本。実は台所の煙突で、日夜たくさんの要人を招いて豪華な宴が繰り広げられたことを伺わせます。
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シントラから西へ約10km、大西洋に突き出した断崖絶壁はユーラシア大陸最西端。険しく切り立った崖の先に灯台があり、ポルトガルの詩人カモンエスが詠んだ詩の一節「ここに地果て海始まる」が石碑に刻まれています。140mも下の海は岩肌に白波が砕け散り、思わず足がすくむ光景。ツーリストインフォメーションでは、数百円でシリアルナンバー入りの「最西端到達証明書」を発行してくれます。
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再びリスボンからIC(インターシティ)に乗車、アレンテージョ地方へ向かいます。途中駅で乗り換え、緩やかな丘陵地帯のコルク林を抜け、ローマ時代の城塞都市、世界文化遺産の町エヴォラに到着。エヴォラでは2世紀に造られたディアナ神殿、ローマ時代の城壁や水道橋、ゴシック建築のサンフランシスコ教会などさまざまな様式の建築を見ることができます。1584年に天正遣欧少年使節団の伊東マンショと千々石ミゲルがパイプオルガンを弾いたという大寺院もあります。
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旧ロイオス修道院 |
15世紀に建てられたロイオス修道院は、現在は改装してポザーダ(国営ホテル)として使われています。プールのある中庭に面した回廊はレストランになっていて雰囲気も抜群。徒歩圏内にディアナ神殿、美術館、サンフランシスコ教会、城壁など歴史遺産が多数あり、エヴォラでは一番人気のポザーダです。
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サンフランシスコ教会 |
15〜16世紀に造られた、ゴシック様式とマヌエル様式が混在する教会。祭壇の右側には、修道士たちが瞑想するために使ったという人骨堂があります。入口には「我ら骨どもは皆さまのお越しをお待ちしています」というメッセージが。16世紀に3人の修道士が墓地から5000体もの人骨を持って来て造ったのだそうです。奥にぶら下がっているのは、なんと大人と子ども2体のミイラ。生前に親子ともども悪人だったため土に受け入れてもらえず、骨になれなかったと伝えられています。
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モンサラーシュ |
エヴォラから52km。スペイン国境近くにある、ポルトガルで最も美しいと称えられる城壁の村です。332mの高台にあり、13世紀に建てられた城から見下ろす眺望は素晴らしいの一言。見渡す限り広がる緑の平原、悠々と流れるグアディアーナ川、そして16〜17世紀に建てられた白壁の家並み。朝夕には「沈黙の音」がするといわれ、数十分で村を一周できてしまう小さな旅情あふれる村です。
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エヴォラからさらに南下して、アーモンド畑を眺めながら南海岸の港町ファーロに到着。アルガルベ地方の中心都市で、ポルトガルを代表するビーチリゾートが点在しています。おいしいシーフード、中でも魚料理は日本人の口に合う塩焼きにオリーブオイルを垂らしたものがポピュラーで、バラカウという干鱈も名物。輝く陽光を浴びてモザイクに彩られた街並みを歩けば、南欧のリゾート気分に浸れます。
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ヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオ |
ファーロからアルガルヴェ線で西へ向かい、終着駅のヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオはスペイン国境の町。駅のすぐそばにグアディアーナ川が流れ、対岸はスペインのアヤモンテです。川を渡るフェリーを見送りながら、ポルトガルの旅も終幕です。
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