寺山修司の作品を中心に30年もアングラ演劇を続ける「月蝕歌劇団」。“暗黒の宝塚”と呼ばれる地下アイドル的女優集団の表と裏に完全密着し、その真髄に迫る。
月蝕歌劇団(げっしょくかげきだん)は2015年に結成30周年を迎えたアングラ小劇団。美術制作兼任の女優・若松真夢はアルバイトをしながら、自宅にこもり小道具作りに励む。“宙づり”を得意とするトップ女優の倉敷あみは月蝕を「すべて自分たちだけで作っていく劇団」だと語る。団員は現役復帰を決めた母親や、アイドルのオーディションで寺山作品を演じ絶句された女性など個性派ぞろい。出入り自由の劇団内では、さまざまな想いや境遇が交差する。このカオスに満ちた集団を率いる高取英は、稽古中は演出らしい演出をしない。だが、アート志向で難解といわれた寺山と違い、娯楽性を重視する。女優の写真が当たるおみくじの販売などファンサービスも欠かさない。そんな高取の下に公演ごとに集まり散っていく女優たち。終演間際恒例の自己紹介シーン。それぞれの顔を照らすマッチの火が消えそうになるのを互いに助け合いともし合う…その姿からは、月蝕歌劇団が30年続いてきた意味が見えてくる。