“百年にひとりの女形”と称される俳優・早乙女太一。新たな一歩を踏み出すため、原点である大衆演劇「劇団朱雀」の解散を決めた。家族ともいえる劇団の解散までの物語。
旅役者として全国を回り時代劇や舞踊ショーを披露する大衆演劇。早乙女太一もまた、そんな世界で生きてきたひとりだ。映画やドラマで活躍する傍ら、父親が立ち上げた「劇団朱雀」の看板役者として舞台に立ち続けてきた。そんな太一が2015年2月末での「劇団朱雀」の解散を決めた。外の世界での仕事が増えるにつれ、新たな舞台での挑戦を望むようになったためだ。そしてその先に見据える、大きな夢。しかしそれは家族ともいえる劇団員たちとの別れをも意味する。
2月、岐阜で始まった解散公演。大衆演劇では毎日のように演目が目まぐるしく変わる。客席の様子を見て、何十ものレパートリーから当日の舞踊を決め、芝居も前日に決めた演目を台本なしで確認して挑む。
連日の舞台と深夜まで及ぶ稽古の日々。解散の実感もわかないまま走り続けたが、いよいよ千秋楽が迫る。長年苦楽をともにしてきた劇団員と、複雑な父との関係。最後の瞬間、旅立つ太一は何を想うのか?