映画音楽の巨星・早坂文雄。41歳で早逝した天才は黒澤明の唯一無二の“親友”だった。『七人の侍』の音楽には、映画音楽の黎明期を駆け抜けた2人の戦いが隠されていた。
2014年に生誕100年を迎えた音楽家・早坂文雄。結核のため41歳で早逝する短い生涯に、膨大な映画音楽やコンサートで演奏される「純音楽」を残した。なかでも、『七人の侍』をはじめ黒澤明監督作品に早坂が作曲した音楽は、映画音楽の歴史に決定的な変革をもたらした。早坂文雄の遺品の中に彼が黒澤明作品に携わったときの日記帳や作曲ノート、音楽コンテ、黒澤との間で交わした手紙がある。それらには、作品の生みの苦しみや誕生の瞬間が克明に綴られている。それまで、映画の添え物とされていた音楽だが、その考え方を根底から覆したのが黒澤と早坂だ。音楽は映画の重要な要素と考える黒澤が、肺結核を患い闘病中の早坂の病室に編集機を持ち込み音楽を書かせることもあり、制作は過酷を極めた。
『七人の侍』のテーマ曲は、黒澤の執ような要求に苦しんだ早坂が、一度はボツにした案を黒澤に披露。黒澤が「それだ!」と叫び決まったという。この曲のダビングを記録した6ミリテープが奇跡的に残っており、これは、日本初のオリジナルサウンドトラックである。その後、黒澤との8本目の仕事となる『生きものの記録』制作途中、早坂は急逝。彼の葬儀は、“親友”の死を悼んだ黒澤が生涯でただ一度“演出”した葬儀となった。(2014年)
出演
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出演久石譲
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ナレーション宮沢りえ
スタッフ
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ドキュメンタリー音楽清水靖晃