世界の巨匠・黒澤明。全30作品のなかで唯一、日本映画ではない作品、それがソ連映画『デルス・ウザーラ』である。映画再生を懸けて挑んだ知られざる苦闘を解き明かす!
“世界のクロサワ”が撮った唯一の外国映画、それが『デルス・ウザーラ』だ。助監督時代から企画を温めていた黒澤明は、1973年に63歳にしてたった5人の日本人スタッフとともにエコノミーチケットでソ連へと渡り、現地のスタッフらと製作。厳寒のシベリアで、言葉や文化の壁を越えての困難な撮影は、約2年の歳月を要した。当時のソ連映画の完全分業制の中、黒澤自ら現場を駆けずり回る姿は、現場の結束力を高めたという。作品は、ソ連映画としてアカデミー賞外国語映画賞を受賞したが、授賞式に黒澤の姿はなかった。黒澤はどのような現場で指揮を執り、何を思ったのか―。現在、日本には『デルス・ウザーラ』の資料はほとんど残されていない。 番組は、ロシアに残る本邦初公開を含むメイキング映像(リハーサル、オーディション、編集作業中の黒澤など)に加え、関係者の証言、撮影日誌などの貴重な資料をもとに、黒澤明の映画愛と不屈の精神に迫る。