野生のケワタガモと生産農家の「共益」関係により生まれる世界最高級のダウン。アイスランドの大自然を舞台に、生産農家の家族とカモたちによるひと夏の優しい物語を描く。
ケワタガモの羽毛を採集するアイスランドの農家の2012年の夏に密着した。“羽毛1グラムが銀1グラム”と例えられるほど高級な、ケワタガモの羽毛。アイスランド北西部のフィヨルドの町ホルトに、2008年に赴任してきた牧師のフィヨリさんは、ケワタガモ農場を兼業している。毎年5月から、ケワタガモの営巣地を見て回り準備を開始。産卵期になるとケワタガモが上陸し、卵を産むと、自らの羽毛で包んで温める。フィヨリさんは、卵に羽毛が必要なくなる時期に羽毛を採取し、またケワタガモの天敵のキツネやカモメなどを駆除してまわる。この時期、毎晩10km以上も歩き回る重労働だが、その“信頼関係”があってこそケワタガモはまたこの地を訪れるのだ。夏休みには、フィヨリさんの12歳と10歳の子どもが仕事を手伝う。生命の意味、肉体的労働の価値…。フィヨリさんは、この作業から子どもたちに多くを学んでほしいと願っている。