映画

過去のない男

フィンランドのＡ・カウリスマキ監督が、思わぬことから過去の記憶を失った中年男性の運命を独特のタッチで描写。第５５回カンヌ国際映画祭でグランプリなどに輝いた秀作。

暴漢に襲われたせいで過去の記憶を失ってしまった中年男性。彼が社会の底辺をさまよいながら、自身の人生を一から築き直していく様子を、フィンランドの愛すべき映画作家カウリスマキ監督が脚本なども兼任しながら、独特のひょうひょうとしたユーモアとペーソスを駆使して、軽妙にスケッチ。観客が“人生まだまだ捨てたもんじゃない”と明日への希望と勇気を感じる秀作だ。主人公役のM・ペルトラに加え、本作でカンヌ国際映画祭の女優賞に輝いた、カウリスマキ作品の常連俳優K・オウティネンの渋い好演も見ものだ。