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みどころ・試合内容 /
2017年4月30日 放送

みどころ・試合結果

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  • みどころ

年齢差14の世代間の戦い
オッズは約2対1でジョシュア有利だが…

 12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストのアンソニー・ジョシュア(27=イギリス)はプロ18戦全KO勝ちで、昨年4月に獲得したIBF王座は2度防衛中だ。対するウラディミール・クリチコ(41=ウクライナ)は96年アトランタ五輪スーパーヘビー級覇者で、プロでは68戦64勝(53KO)4敗のレコードを残している。14歳の年齢差がある究極の新旧チャンピオン対決といえる。
 ジョシュアはボクシングを始めたのは18歳と欧米の選手にしては遅めだったが、高校時代に100メートル走で11秒を切るタイムを出すほどの運動神経の持ち主だけあって進歩は早かった。21歳のときには世界選手権で準優勝を飾り、翌年のロンドン五輪では接戦を勝ち抜いて最も高い表彰台に上った。アマチュア戦績は43戦40勝3敗で、勝率は93パーセントを超える。
 イギリスの大手プロモート会社、マッチルーム・スポーツと契約を交わしてプロデビューしたのは、3年半前の13年10月のことだ。1回TKO勝ちで初陣を飾ったジョシュアは、7戦目には世界挑戦の経験もある古豪、マット・スケルトン(イギリス)に2回TKO勝ちを収めるなど快進撃を続け、9戦目にWBCインターナショナル王座、14戦目には英連邦王座も獲得した。15戦目にはアマチュア時代にダウンを喫して敗れているディリアン・ホワイト(イギリス)と対戦。2回に右を浴びて窮地に陥るなど危ない場面もあったが、これを乗り越えて7回TKOで宿敵に雪辱した。余勢を駆って挑んだ昨年4月のチャールズ・マーティン(アメリカ)戦ではサウスポーのIBF王者に何もさせず、右ストレートで2度のダウンを奪って2回TKO勝ち、プロ転向からわずか2年半、16戦目で戴冠を果たした。最重量級では異例のスピード出世といえる。初防衛戦では同じロンドン五輪組のドミニク・ブリージール(アメリカ)を7回でストップし、V2戦では曲者のエリック・モリナ(アメリカ)を3回TKOで一蹴した。飛ぶ鳥を落とす勢いとは、いまのジョシュアを指しているように思える。
 若さ、勢いを前面に出すジョシュアに対し、挑戦者の立場にまわったWBA、IBF、WBO3団体の元統一王者は経験や円熟という形容が似合う41歳だ。両者の間には五輪で4大会(16年)のズレがあり、プロの世界に飛び込んだのもクリチコが17年早い。当然のことだが、実績でも元王者が大きく上回っている。なにしろクリチコが24歳で初めてWBO王座を獲得した2000年、ジョシュアはやっと11歳になるところだったのだ。そんなふたりが17年後に拳を交えるのだから人生は分からないものである。
 クリチコは21年のプロキャリアを誇り、世界戦だけで28戦25勝(19KO)3敗という戦績を残している。WBC世界バンタム級王座を12度防衛中の山中慎介(帝拳)の全試合数が29(27勝19KO2分)なのだから、クリチコが世界の舞台で残してきた数字がいかにすごいかが分かるだろう。しかも2000年10月〜03年3月の第一次政権で5連続KO防衛、06年4月〜15年11月の第二次政権では18度の防衛を記録しているのだ。ちなみにジョシュアがプロで戦った総ラウンド数が44なのに対し、クリチコのそれは358で、ここでも8倍以上の差がある。ただ、「対戦する時期が(ジョシュアにとって)早過ぎたのか、(クリチコにとって)遅すぎたのか、それは4月29日に分かる」とクリチコ本人が言うように、微妙なバランスのカードであることも否定はできない。
 試合決定後、オッズはおおよそ2対1、ジョシュア有利で推移している。27歳の王者がスピードのある左ジャブで切り込み、得意の右ストレートを打ち込んでベテランを沈めてしまうという見方が多い。その一方、経験で大きく勝るクリチコがじわじわと圧力をかけ、破壊力のある左ジャブでダメージを与えたすえ「スティール・ハンマー」と称される右ストレートで俊英を打ち砕いてしまうという意見も少なくはない。
 ともに左ジャブで組み立てながら戦うタイプだけに、まずは序盤のリードパンチの交換に注目したい。ジョシュアがスピードを利して差し勝つのか、それともクリチコの重量感ある左が圧するのか。このあたりが大きなキー・ポイントになりそうだ。また、不確定な要素としては、ジョシュアが最長でも7ラウンドまでしか戦ったことがない点や、クリチコが15年11月以来1年5ヵ月のリングである点などが挙げられる。これらが勝負を分けるカギになる可能性もある。

 


Written by ボクシングライター原功

TALE OF THE TAPE

  ジョシュア クリチコ
生年月日/年齢 1989年10月15日/27歳 1976年3月25日/41歳
出身地/国籍 イギリス/イギリス カザフスタン/ウクライナ
アマチュア戦績 43戦40勝3敗 140戦134勝(65KO)6敗
アマチュア実績 12年ロンドン五輪SH級金 96年アトランタ五輪SH級金
プロデビュー 13年10月 96年11月
戦績 18戦全KO勝ち 68戦64勝(53KO)4敗
KO率 100% 78%
世界戦の戦績 3戦全KO勝ち 28戦25勝(19KO)3敗
タイプ 右ボクサーファイター型 右ボクサーファイター型
身長/リーチ 198センチ/208センチ 198センチ/206センチ
体重 112.9キロ(前戦) 111.4キロ(前戦)
トレーナー トニー・シムズ&ロバート・マクラッケン
(元世界ミドル級ランカー)
ジョナサン・バンクス
(元クルーザー級&ヘビー級世界ランカー)
ニックネーム A.J スティール・ハンマー


ヘビー級トップ戦線の現状

WBA:空位
WBC:デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)
IBF:アンソニー・ジョシュア(イギリス)
WBO:ジョセフ・パーカー(ニュージーランド)

 一時期の大混戦状態を脱し、王者が3人に絞られてシンプルなかたちになった。いまはWBC王座を5連続KO防衛中のデオンテイ・ワイルダー(31=アメリカ)と、IBF王座を2連続KO防衛しているアンソニー・ジョシュア(27=イギリス)が並走している状態といえる。攻撃性を前面に出して戦う38戦全勝(37KO)のワイルダー、五輪金を手土産にプロ転向してから正統的なボクシングで18戦全KO勝ちを収めているジョシュア、現時点での評価は五分といっていいだろう。将来性、スター性という点にまで枠を広げて考えれば、ややジョシュアに分があるかもしれない。いずれにしても両者の直接対決は近未来最大の注目カードである。ここにウラディミール・クリチコ(41=ウクライナ)が割って入ることができるか。
 昨年12月、アンディ・ルイス(27=メキシコ)に競り勝ってニュージーランドに初の世界ヘビー級王座をもたらしたWBO王者、ジョセフ・パーカー(25=ニュージーランド)は、初防衛戦で指名挑戦者のヒューイ・フューリー(22=イギリス)を迎え撃つ。パーカーが22戦全勝(18KO)、フューリーが20戦全勝(10KO)、近年のヘビー級では珍しい20代同士の全勝対決となる。戴冠試合は厳しい内容だったパーカーだが、ニュージーランドでの開催ということもありわずかに有利か。
 ジョシュア対クリチコはWBAのスーパー王座決定戦も兼ねているが、レギュラー王座は元WBO王者のシャノン・ブリッグス(45=アメリカ)と、大ベテランのフレス・オケンド(44=プエルトリコ)で争われる。3年前に戦線復帰してから9連勝(8KO)のブリッグスと、14年7月を最後にリングに上がっていないオケンド。イベントのキャッチコピーどおり「裏庭の対決」という印象が強い。
 無冠組では前WBA暫定王者のルイス・オルティス(38=キューバ)の力が群を抜いている。ジョシュア対クリチコの勝者への挑戦を狙っており、どちらと戦うにしても興味深いカードになりそうだ。IBF2位のクブラト・プーレフ(35=ブルガリア)、WBC1位の元王者、バーメイン・スティバーン(38=アメリカ)も挑戦の機会をうかがっている。昨年6月、ジョシュアに挑んで7回TKO負けを喫したドミニク・ブリージール(31=アメリカ)は2月、同じ世界ランカーのイズアグベ・ウゴノー(30=ポーランド)に打ち勝って存在感を示した。身長201センチ、体重約120キロという大柄な選手だけに、まだまだ暴れてほしいところだ。このほか3月にWBO1位だった元王者、デビッド・ヘイ(36=イギリス)を11回TKOで破ったWBC世界クルーザー級王者、トニー・ベリュー(34=イギリス)の存在も無視できなくなってきた。

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